【X Games】自分に勝ち続けるスケーター小野寺吟雲が史上最年少優勝 トニー・ホークも絶賛の別次元トリック | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【X Games】自分に勝ち続けるスケーター小野寺吟雲が史上最年少優勝 トニー・ホークも絶賛の別次元トリック

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【X Games】自分に勝ち続けるスケーター小野寺吟雲が史上最年少優勝 トニー・ホークも絶賛の別次元トリック
  • 【X Games】自分に勝ち続けるスケーター小野寺吟雲が史上最年少優勝 トニー・ホークも絶賛の別次元トリック

表彰台の頂上に立った13歳の小野寺  撮影:小嶋勝美

5月12日から3日間にわたり開催されたX Games Chiba2023が幕を閉じた。

昨年行われたX Games Chibaのスケートボードストリート男子決勝は雨で競技が途中終了したが、今年の大会もそんな予感をさせる天気模様だった。

大会2日目は雨で中止、そして決勝前日の天気予報は雨予報。

しかし、蓋を開けて見れば後半のバート種目前に雨が降ってきて一部スケジュールの変更があったものの、男子スケートボード・ストリートは雨に降られることなく競技を終えた。

昨年優勝者の堀米雄斗の出場はなかったが、X Games金メダル通算13個の記録を誇るアメリカのナイジャ・ヒューストンの参戦が急遽決まり盛り上がりを見せた中、一番の話題をさらったのはX Games初出場の13歳、小野寺吟雲だった。

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なお、銀メダルはブラジルのケルビン・ホフラー、銅メダルはアメリカのジェイミー・フォイが獲得した。

■別次元の滑りを見せた13歳「自分に勝つことを考えていた」

キックフリップ フロントサイドブラントスライド ビッグスピン/小野寺吟雲 撮影:小嶋勝美

決勝前日に行われたインタビューでスケートボード界のスーパーレジェンド、トニー・ホークは小野寺のことをこう表現している。「まるでビデオゲームのキャラクターのよう。魔法使いみたいだ」と。

例えば今大会、14段のハンドレールで見せた大技「キックフリップ フロントサイドブラントスライド ビッグスピンアウト」。この技を具体的に説明すると、空中でデッキを縦に1回転させ、空中でキャッチした後にボードの後ろ側をレールにかけて滑り降り、さらにデッキを横に270度回転させながら着地するという技。

言葉で説明しても伝わらないだろうが、これだけ複雑な動きを14段のハンドレールで寸分の狂いもなく決める。まさにこれまではゲームでしか見たことがない動きであり、これこそがトニー・ホークの言っていた言葉の所以なのである。

「自分に勝つことを考えた」と語った小野寺 写真:小嶋勝美

優勝後のインタビューで、小野寺が話した印象的な言葉がある。

「点数ではなくて、自分に勝つことを考えていた」。

この言葉を聞いた時に、昔からスケーターの間でよく使われる言葉「自分越え」を思い出した。小野寺は彼にしか出来ない動きで自分に勝ち、ランでは唯一の90点台を獲得し、2位以下を6点以上離し、圧倒的な優勝劇を見せた。

以下、小野寺選手が1本目のランで見せたトリック「バンク トゥ バンクのレール」キックフリップ バックサイドテールスライド フェイキー「クォーター」キックフリップブラント フロントサイド180キックフリップアウト「バンク トゥ レール」スイッチヒールフリップ フロントサイドボードスライド「バンク トゥ バンク」バリアル ダブルキックフリップ「14段ハンドレール」キックフリップブラントスライド ビッグスピンアウト「バンク トゥ バンク」キックフリップ「クォーター」ノーズグラブ540「バンク」バックサイドビッグスピン※「」内はセクション名、フリップとは空中で板を縦に回転させる技。

1本目のランで見事フルメイク(ノーミスで滑りきること)のランを見せた小野寺 撮影:小嶋勝美

スケートボードを知らない人から見たらトリック名だけ見ても何が何だかわからないが、要するにレールでは必ず複合トリックという、板を回転させながらからレールを滑っていくといった2つ以上のトリックを取り入れていることがわかる。まさに別次元。

小野寺について言及したスケートボードのレジェンド、トニー・ホーク 撮影:小嶋勝美

トニー・ホークはインタビューで小野寺世代のスケートについて、以下のように話している。

「プロ・スケートというビデオゲームを作っていた時は、実際には出来ないようなスケートボードのコンボトリックをゲームの中で作り上げていったけど、それをプレーしていた子たちが実際にスケートをやるようになって、彼らは自分たちにはゲームの中だけで出来ないと思っていたトリックをやりだした。それが今の世代のスケーターのすごいところ」と彼ら世代のスケートを称賛していた。

■X Games通算13個の金メダル/ナイジャ・ヒューストン

“絶対王者”ナイジャ・ヒューストンが小野寺のランをたたえる  撮影:小嶋勝美

昨年8月に膝前十字靭帯損傷の怪我を負ったナイジャ・ヒューストンは、今年3月に復帰後初の国際大会となるタンパプロに出場、4月末には世界最高峰の大会ストリートリーグで3位に入賞するなど、徐々に調子を戻していた。そして今大会は満を持して、金メダルを狙っていたのではないかと思った。

前日練習でハンドレールを確認するナイジャ・ヒューストン 撮影:小嶋勝美

なぜなら彼はX Games通算13個の金メダルを獲得しているが、過去にインタビューでショーン・ホワイトの持つX Games金メダルの最多記録15個を超えたいと話していたからだ。※ショーン・ホワイトは冬季スノーボードで13個、夏季スケートボードで2個、合計15個の金メダルを獲得している。

惜しくもメイク出来なかったラン2本目のラストトリック。キャバレリアルノーズブラントスライド(通常とは逆方向に進みながら飛び、空中で270度回転しながらレールの上にデッキの先端で乗って滑り降りる技) 撮影:小嶋勝美

今大会は残念ながらフルメイクのラン(ノーミスで45秒間滑りきること)を見せることが出来ず、ナイジャは12位に終わった。

現在28歳のナイジャ・ヒューストンだが、日本からも新星が続々と登場してくるスケートボード界で今後のX Games金メダルの獲得数にも注目したい。

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■著者プロフィール

小嶋勝美●スケートボードライター

放送作家で元芸人のスケーター。スケートボード歴は一応25年弱。

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