【プロ野球】野球殿堂プレーヤーズ表彰は別格 アレックス・ラミレスとランディ・バースの表彰に思う違和感 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【プロ野球】野球殿堂プレーヤーズ表彰は別格 アレックス・ラミレスとランディ・バースの表彰に思う違和感

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【プロ野球】野球殿堂プレーヤーズ表彰は別格 アレックス・ラミレスとランディ・バースの表彰に思う違和感
  • 【プロ野球】野球殿堂プレーヤーズ表彰は別格 アレックス・ラミレスとランディ・バースの表彰に思う違和感

私は10年あまり前から野球殿堂博物館の維持会員を務めている。

コロナ禍になってからというもの通知式には参加することができなくなったが、それでも会員の特典として、オンラインで通知式の様子はライブで見ることができる。メディアによる発表解禁のほんの少し前に「今年は誰が殿堂入りするのか」を知ることができる。

数年前には東大OBが殿堂入りする機会が続き(2017年鈴木美嶺、2019年脇村春夫)、OB会役員でもあった私は同時に殿堂入りする野球界の大功労者やその祝賀スピーカーとも挨拶できる光栄に浴する機会も得た。

野球殿堂博物館は、その選考の資格や投票結果をプレーヤーズ表彰エキスパート表彰特別表彰と3部門ごとに明確に開示している。

13日の発表結果は、プレーヤーズはアレックス・ラミレス(元ヤクルト、巨人、DeNA)ひとり、エキスパートはランディ・バース(元阪神)ひとり、特別表彰が古関裕而ひとりだった。

◆「野球殿堂入り」2023年はラミレス氏、バース氏、古関裕而氏の3名が選出

■来日外国人として唯一2000本安打達成のラミレス

東大のふたりの野球部もいずれも特別表彰だったため、テレビのスポーツニュースや新聞での写真は、高名な元プロ野球選手だけが映り、私の先輩は「トリミング」されてしまうことがあった。3人並んでフォトセッションがあったのは現地で見ていたときも、である。

先輩には申し訳ないが、それはしかたないことで、特別表彰のようにスーツを着ての野球界への貢献したことと、バットとボールで立派な数字を残してファンを沸かせてきたことは、同列に並べられなくてもしかたがない、と私は考える。

今年の特別表彰者はテレビドラマに数年前取り上げられたこともあって高名な作曲家が選ばれ、私も彼の作品は心の底からいい曲だと尊敬しているけれども、例年の特別表彰者はよほどの野球ファンでも知らないことが多いものである。

特別表彰者とほかのふたりほどの大きな違いはないものの、プレーヤーズ表彰とエキスパート表彰も本来は大きな格差があり、プロ野球という実力の世界で生き抜いた選手たちなのだから、その扱いもそれなりの格差があってしかるべきだと私は思う。

ところが、バースの2年連続三冠王と今も破られぬシーズン最高打率.387という実績、そして彼が阪神唯一の日本一に大きく貢献したこともあって、殿堂入り報道の見出しもバースのみだったり、バースが先に来たりする例もあった。

これではラミレスが気の毒である。来日外国人として唯一2000本安打を放ち、死球に激高することもなく12シーズンにわたってほぼフル出場を続けたことは驚嘆と尊敬に値する。

■ベテランズ委員会により選出されたセペダ

投票なので、MVPと同様投票者の主観が入るのはやむを得ないが、冒頭に記したとおり、殿堂入りする側の資格にも明確な基準があり、プレーヤーズ部門は「引退後5年から15年までで75%の得票した者」と明記されている。

つまり、15年経って得票が75%に届かないと、プレーヤーズ部門で殿堂入りする資格は永遠に失われるのである。現役時代の数字も印象ももう変えることはできない。今のような報道のされかたでは、それが理解されないと思う。野球殿堂博物館側も、発表時はきちんと区別するものの、実際の殿堂ホールには、レリーフが特別表彰も含めて並べられる。ただし新世紀特別表彰(フランク・オドール、正岡子規、ホーレス・ウィルソン、鈴鹿栄の4人)だけはレリーフが一カ所に集められている。

このような考えに至ったのは、私が米国勤務をしていた1994年にオーランド・セペダ(元サンフランシスコ・ジャイアンツなど、オールスター9度出場の内野手)というプエルトリコ出身の名選手が殿堂入り資格保持の最終年の報道に接したからだ。

実績は申し分のない選手だが薬物保持で逮捕されるなどのマイナス要素が残りなかなか殿堂入りが果たせず、いよいよ資格を失う(日本同様引退後5年から15年)のが近づいて彼は地域奉仕活動などに精を出していたのだった。少しでも悪い印象を払拭して殿堂入りの得票を上げようという意図が明らかだったけれども結局数票足りず、殿堂入りを果たすことができなかった。

落胆したセペダの様子がわかる報道に触れた記憶があるのだが、全米野球記者協会による殿堂入りを逃したものの、1999年にベテランズ委員会によって彼は殿堂入りを果たした。

現地でのレリーフがどのように並んでいるかは把握していないが、ホール・オブ・フェイムのホームページでは、セペダの名前に「ベテランズ委員会による選出」などというクレジットは入っていない。

日本の殿堂も、ホームページでは特別表彰と新世紀特別表彰は記載されているが、プレーヤーズとエキスパートの区別は載っていない。

プレーヤーズ部門で選出された人たちはみな人格も素晴らしいので、「一緒にしないでほしい」とは誰も言わないし思いもしないかもしれないが、第三者が声を挙げるべきだと思う。15年以内に基準の得票を得られた人は、得られなかった人にくらべて別格であることを何らかの形で示さないと、今回のような報道ではプレーヤーズ部門選出者は気の毒だと私は考える。

なぜプレーヤーズ表彰とエキスパート表彰があるのか、その意味に今一度、思いを巡らせたい。

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著者プロフィール

篠原一郎●順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授

1959年生まれ、愛媛県出身。松山東高校(旧制・松山中)および東京大学野球部OB。新卒にて電通入社。東京六大学野球連盟公式記録員、東京大学野球部OB会前幹事長。現在順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授。

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