【Dリーグ】2023年初開催は本質的なスキルとセンスが試されるサイファー・ラウンドで実施  | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【Dリーグ】2023年初開催は本質的なスキルとセンスが試されるサイファー・ラウンドで実施 

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【Dリーグ】2023年初開催は本質的なスキルとセンスが試されるサイファー・ラウンドで実施 
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Dリーグは11日、2023年最初となるラウンド6が開催された。コロナ禍でマスク着用のルールはあったが、会場の有明アリーナの観客席は、目を輝かせたダンスファンによってほぼ埋め尽くされた。このラウンドは22-23シーズンのちょうど真ん中に当たる第6ラウンドだが、今ラウンドはこれまでのショーケースとは大きく違い、通常のラウンドのように1チーム8名のダンサーがナンバーを用意し、踊りこんで試合に臨むスタイルではない「サイファー・ラウンド」が採用された。

◆ラウンド5「すべての人にダンスのある人生を」2022年最後の戦い

■サイファー・ラウンドとは…

サイファーとは、もともと複数人が輪になって即興でパフォーマンスをするスタイルのことで、ストリートダンサー達が長く行ってきたスタイル。そのサイファーに準じたルールが採用されたのだ。

この日は5つのサイファーが行われ、ファーストサイファーから、ソロ(1名)⇒デュオ(2名)⇒ソロ⇒トリオ(3名)⇒ソロ、という少人数での形式。Dリーガー全員がメインステージに揃って座り見守る中、会場に突き出して配置されたサイファーのために用意された正方形の新しいステージ上で、この新たなる戦いが繰り広げられた。

セガサミー・ルクスのCanDoo (C) Dリーグ

冒険的とも実験的とも受け取れるこの試みは、個々のダンサーのスキルがよりはっきりと浮き彫りにされる。即興で踊るという側面もあるため、観る側にとっても各ダンサーの息遣いが通常のチーム戦よりもよりリアルに感じられる、用意されたショーケースの見ごたえとは全く違う、ストリートダンスの文化も感じながらの観戦となった。おそらく、観ることが主体のダンスファンに限らず、リアルダンサーにとっても、今までよりもさらに身を乗り出してしまうような、格別の面白味をこのラウンドで味わうことができたに違いない。

この画期的なサイファーラウンドでの戦いを振り返ってみたい。

1stサイファー(ソロ)

まさに一騎打ち。これまでになかったソロでの戦いのトップバッターはカドカワ・ドリームスヒナタからスタート。メインステージとは違った舞台をどう使うか。曲だけでなく、舞台の使い方という意味でも“即興力”が試されるため、観ている側も非常に興味深く各ダンサーの動きを追いながらの観戦だ。この1stサイファーでは、サイバーエージェント・レジットの地獄の上手さ、コーセー8ロックスのYOUTEEのダイナミックさが光っていたが、セガサミー・ルクスCanDooの登場時のつかみの強さとしなやかな動きが圧巻の貫禄を感じさせ、結果51点の高得点をたたき出し勝利した。

2ndサイファー(デュオ)

セガサミー・ルクスKoodyとKURASHOU (C) Dリーグ

続く2ndサイファーは二人組で戦うDuo。

デュオでの戦いは目に新しく、会場もより盛り上がるなか、エイトロックスのRyo-spinとTETSUによるさすがのブレイキン、毎回楽しさで会場を盛り上げるセプテニラプチャーズのAYUMIとHaruto、そしてフルキャストレイザーズのKID TWIGGZとINFINITY TWIGGSによる炎のクランプがさらに会場の熱を押し上げたが、揃いのボックスヘアで挑んだ迫力いっぱいのセガサミー・ルクスKoodyKURASHOUが最高点50点を獲得、2サイファー連続で1位、総合点でも101点でトップを守った。

アイムーンのデュオ (C) Dリーグ

3rdサイファー(ソロ)

3rdサイファーは再びソロでの戦い。I‘moonのMaariが体調不調により欠場となってしまったが、サイバーエージェントレジットTAKUMIの、すべての音をまさに巧みに取り込んだ滑らかな動き、ベネフィット・ワン・モノリズRiNnA(リナ)の細かな音までをしっかりとひろうヴォーグ。コーセーエイトロックス KAKUの圧巻のヘッドスピン等々、チームカラーをしっかりと感じさせるダンスが披露された。

また、このサイファーでは最終のカドカワ・ドリームスSATSUKIの回で音楽が途中で止まってしまうというハプニングがあり、そのまま4thサイファーに移行。

4thサイファー(トリオ)

一人から二人、二人から三人となり。トリオならではの見せ方が、また違った趣を創り出し、その違いを楽しめることにもなったが、3人のダンサーが踊ることでそれぞれのチームの持ち味がより強調され、それを確認しながら堪能できる見ごたえたっぷりの戦いとなった。そして、このトリオでの戦いは、どれだけ鮮やかな印象を残すことができるかが勝負どころという感を強くした。

ラウンド6を制したサイバーエージェント・レジットのトリオ (C) Dリーグ

5thサイファー

今ラウンド最後の戦いである5thサイファーは再びのソロ。

やはりソロは個々のダンサーの身体能力の高さが如実に見て取れるため、肉体が放つ煌めきが強調され、各ダンサーから湧き出るような熱量が観るものにことさら強く迫ってくる。個々のダンサーの魂が燃えている様を目の当たりにできることが、サイファーの醍醐味ともいえるのだろう。その昔“芸術は爆発だ!”というフレーズがあったが、ダンサー全員が爆発しているかのような踊り。即興で自分を爆発させているのだ。

この爆発の連続によって、ますますDリーグ全体のスキルとレベルが上がってゆくのであれば、その結実として、来年のパリ・オリンピックに実るであろう果実は間違いなく日本の宝となり、日本人のダンスのスキル、そしてセンスを、世界に向けて声高にアピールすることとなるだろう。

■トップはサイバーエージェント・レジット

このサイファーラウンドの4thサイファー以降の最終結果は、3rdサイファーのハプニングの影響で、集計がなされず、追ってSNS等での発表ということになった。集計の結果、トップはサイバーエージェント・レジット。最優秀ダンサー(MVD)は伸びやかなダンスが光ったライフル・アルトリズムCalinに贈られた。

ハプニングはあったものの、サイファーでの戦いを見るという、ストリートダンスのレガシーを彷彿とさせる新鮮な愉しみ方を届けてくれたラウンド6。次のラウンド7からはチーム単位でのショーケースに戻るということだが、このサイファーラウンドで感じた日本人ダンサーの輝きの予感が、来たるパリ・オリンピックで現実のものとなってくれることを強く祈りながら次なるラウンド7を待ち受けたい。

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著者プロフィール

Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター

『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー

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