【カタールW杯】スペイン撃破の森保ジャパン “ジョーカー”三笘薫を活かす「川崎組」と勝因となった攻守のメリハリ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【カタールW杯】スペイン撃破の森保ジャパン “ジョーカー”三笘薫を活かす「川崎組」と勝因となった攻守のメリハリ

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【カタールW杯】スペイン撃破の森保ジャパン “ジョーカー”三笘薫を活かす「川崎組」と勝因となった攻守のメリハリ
  • 【カタールW杯】スペイン撃破の森保ジャパン “ジョーカー”三笘薫を活かす「川崎組」と勝因となった攻守のメリハリ

FIFAワールドカップカタール2022、FIFAランク24位の日本代表はグループEの第3節で2010年の南アフリカ大会覇者スペイン代表(7位)に2-1と逆転勝利。日本は初戦のドイツ代表(11位)戦に続いてW杯優勝経験国を破り、グループステージ(GS)を首位で通過した。

◆特集:日本代表グループ1位で決勝トーナメント進出決定 対戦カード・日程・放送予定・結果一覧

■日本は3バック採用、スペインは20歳以下4人先発

グループEの初戦で優勝4度のドイツに2-1と劇的な逆転勝利を飾った日本は、第2節ではコスタリカ代表(31位)の堅守を崩せずに0-1と惜敗。最終節をE組2位で迎えた森保一監督は先発メンバーを5人入れ替えた。前線のユニットをドイツ戦の先発組に戻し、システムもこの2試合で途中から採用していた3バックの[3-4-2-1]を選択。川崎フロンターレ所属で31歳のDF谷口彰悟がW杯デビューを迎えた。

一方、日本戦を首位で迎えたスペインは、引き分けではGS突破が危うい日本とは事情が異なる。スペインは同時刻開催のコスタリカ対ドイツでコスタリカが勝つことがなければ、敗れても2位通過が決まる。加えて、決勝トーナメント1回戦の対戦カードとなるF組の最終結果がキックオフ時点で判明。首位は36年ぶりのベスト16進出となった伏兵モロッコ代表、2位が前回のロシア大会準優勝の強豪クロアチア代表と決まった。

それを踏まえてなのか、スペインのルイス・エンリケ監督は5人の先発メンバーを変更。W司令塔を組む20歳のペドリと18歳のガビがいるとはいえ、20歳以下の選手が4人並び、“モロッコ狙い”も窺える布陣を組んで来た。

■スペインのパスサッカーを封じ、耐える前半

試合は開始からスペインが主導権を握った。ボール支配率で常時8割をキープされるほど圧倒された日本は11分、右サイドのクロスからFWアルバロ・モラタに3試合連続となるゴールを叩き込まれ早々と先制点を許した。ただ、その後の日本は得意の後半勝負に持ち込むため、巧みに時間を消化。1トップの前田大然はハーフウェイラインより前にはボールを奪いに行かないものの、最終ラインを高めに設定してコンパクトな[5-4-1]の守備陣形を維持した。

スペインは両サイドにウイングとサイドバックによる外枠を作り、攻撃するための”幅“をもって枠の内外でパスを出し入れし、確実に前進していくパスサッカーだ。しかし、日本の守備陣形は崩れず、中盤でスペースを見出せなくなった18歳のMFガビは、しばしばサイドに開いた。このようにスペインは「中の人」を効果的に使えておらず、前半のシュートは5本のみだった。

■初出場で安定した守備を披露した谷口

前半は僅かシュート2本に終わった日本は、後半スタートからドイツ戦で同点弾を挙げたMF堂安律、「日本のジョーカー」三笘薫を同時投入。スペインが日本の交代策と出方を窺っている隙に一気呵成に攻め立てた。

後半3分、前半は封印していたハイプレスを解禁。スペインがGKを使ってビルドアップする段階から前田、左シャドーの鎌田大地、左ウイングバック(WB)の三笘が連動して前へボールを奪いに出る。スペインが追い込まれながら逆サイドへ展開したボールを右WB伊東純也がリスクを負って前で奪い、セカンドボールを拾った堂安がペナルティエリア外から魂のこもった左足を一閃。堂安の今大会2点目となる豪快なミドルシュートが突き刺さり、日本が1-1の同点に追いつく。

続く後半6分、ロングボールを右サイドで収めた伊東が中央に攻め上がったMF田中碧を使い、ボックス内右の堂安へ。ドリブルを仕掛けながら送ったクロスは逆サイドへ流れるも、ライン際いっぱいで三笘が折り返し、ゴール前にフリーで駆け上がった田中がゴールへ押し込む。三笘の折り返しがゴールラインを割っていたかどうか際どく、VAR判定に。判定まで約3分間要したが、無事にボールがライン上であると確認され、日本が2-1と逆転。

リードした日本はハイプレスと自陣に引いてブロックを組む守備を使い分けた。スペインは主力を戻したが、日本のメリハリの利いた守備を前に30分ほどシュートを撃つこともできなかった。逆に三笘の超絶ドリブルから途中出場のFW浅野拓磨が絶好機を迎える場面もあったほどだった。

特に初出場のDF谷口は安定した守備を披露しただけでなく、攻撃面でも冷静なビルドアップで左WBに入る三笘を活かした。谷口は2017年から5年で4度Jリーグを制した川崎フロンターレの現主将で、三笘は昨夏まで川崎でプレー。この日、中盤でコンビを組んだMF守田英正と田中、DF板倉滉もこの常勝軍団出身で、後半はピッチ上に5人の「川崎組」がそろっていた。今大会の日本の攻撃で大きな課題として、圧倒的な個の能力をもつ三笘の活かし方が挙げられるが、この布陣はひとつの解答を出した。

■ボール支配率17.7%で2得点

その後、他会場に大きな動きがあった。後半25分にコスタリカが逆転したのだ。この瞬間、スペインは3位に落ちてGS敗退の危機に陥った。スペインの選手たちが狂気じみた迫力を醸し始めたが、スペインは唯一の本職ストライカーだったモラタをベンチに下げ、「仕上げ役」が不在だった。

逆に日本は後半23分にDF冨安健洋を投入して本職センターバックを4人並べる守備固めが功を奏した。局面でのパワーやフィジカルで日本が上回り、最後まで粘り強く戦って今大会2度目のジャイアントキリングを達成。

尚、シュート6本で2得点した日本のボール支配率は17.7%。データ分析会社『Opta』の調べでは、1966年イングランド大会以降のW杯で勝利したチームとしては最低を記録した。スペイン戦前日、主将DF吉田麻也は、メリハリをつけた守備を勝敗の鍵に挙げていたが、森保ジャパンには攻撃面でもメリハリが効いていた。

E組を首位通過した日本は、F組2位でFIFAランク12位のクロアチアと決勝トーナメント1回戦を戦う。史上初のベスト8を狙う一戦は、日本時間12月6日0時キックオフとなる。

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文●新垣博之(しんがき・ひろゆき)

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