【超RIZIN/RIZIN.38】朝倉未来のメイウェザー戦、「2ラウンドKO劇」は起こるべくして起きたのか 試合展開の“舞台裏”を分析して振り返る | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【超RIZIN/RIZIN.38】朝倉未来のメイウェザー戦、「2ラウンドKO劇」は起こるべくして起きたのか 試合展開の“舞台裏”を分析して振り返る

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【超RIZIN/RIZIN.38】朝倉未来のメイウェザー戦、「2ラウンドKO劇」は起こるべくして起きたのか 試合展開の“舞台裏”を分析して振り返る
  • 【超RIZIN/RIZIN.38】朝倉未来のメイウェザー戦、「2ラウンドKO劇」は起こるべくして起きたのか 試合展開の“舞台裏”を分析して振り返る

2部制大会「The Battle Cats presents 超RIZIN(スーパーライジン)」と「湘南美容クリニック presents RIZIN.38」が25日、さいたまスーパーアリーナにて開催された。

「超RIZIN」は、海外への配信時間も考慮され正午スタート。大会終了後、那須川天心やラッパーAK-69のハーフタイムショーを挟み、夕刻より通常のナンバーシリーズ「RIZIN.38」が行われた。ファンにとっては、全11試合を観戦できる、大満足の1日となったことだろう。

ここでは両大会のメインイベント、「フロイド・メイウェザー vs. 朝倉未来」と「堀口恭司 vs. 金太郎」を中心に振り返る。

◆朝倉未来「ボクシングもMMAもどちらも素晴らしい競技」 メイウェザー戦から一夜、心境つづる

■試合前から「勝ち確信」のメイウェザー劇場

今大会で最も世間を沸かせたのは、紛れもなくフロイド・メイウェザー朝倉未来の一戦だった。結果は大方の予想通り、メイウェザーの勝利(※エキシビションのため、公式記録にはならない)で終わったわけだが、朝倉が予想以上の健闘を見せ、世界的一戦で爪痕を残した。試合展開と高度な技術を、彼らのインタビューなどの証言を元に紐解いていく。

事前インタビューや公開練習のときから、メイウェザーは余裕の構えだった。朝倉の印象を問われても「知っているのはサウスポーということだけ」。眼中にないと言わんばかりの発言をし「俺自身が世界最高でベスト」「すぐに終わらせたいと思えば終わらせる。第3ラウンドで終わらせたいならそこで終わらせる」など余裕のコメントを残していた。

朝倉が会場入りしたのは午前10時30分頃。対してメイウェザーは興行開始1時間前になっても、ホテルから姿を現さず。結局、会場に到着したのはゴングまでわずか1時間ほどのタイミングだった。通常の試合では考えられないことだ。そして、試合開始直前ギリギリにバンテージを巻いた。

ウォーミングアップは軽めのミット打ちのみ。試合前のファイターとは到底思えないアップだった。朝倉の言葉を借りれば、公開練習同様“太鼓の達人”のようなミット打ちだ。試合後、メイウェザーは「昨日は3時間しか寝ていない。試合の3時間前に起きた」と驚愕の発言を残している。「誰でもウォームアップは必要だけど、ジムで練習する時も熱いシャワーを浴びるだけですぐに動くことを長くやっているので問題なかった」と驚愕の発言を残している。

分析力の高さで知られるメイウェザーが、本当に朝倉の分析や対策を一切行わず、試合に挑んだかは定かではない。だが、いずれにしてもかなりの自信を持ってエキシビションに挑んだことは確かだ。

■朝倉未来、宣言通りの「KO狙い」を貫徹

一方の朝倉は試合前の様子を見る限り、いつになく冷静に見えた。50戦無敗のプロボクサーとの対決にも、恐れは一切感じさせなかった。事前インタビューでは「ボクシングルールは初めてなので、楽しみですね」と語り、発言通り、静かに決戦の時を待っていた。

両者が入場し、試合開始のゴングが打ち鳴らされた。

第1ラウンド、初のボクシングルールにも臆せず朝倉はボディ打ちやストレートで前に出る。そして、左のオーバーハンド、プレッシャーをかけて左フックをガードの上から強打。メイウェザーは焦る様子は一切ないが、朝倉の果敢な攻めに会場が沸いた。

メイウェザーは純粋なボクサーとの対戦経験が豊富。もし朝倉が太刀打ちできるとするならば、一気に仕掛けて圧力で詰めていくこと、もしくはMMAファイターならではの独特なリズムで対抗することだった。その点で、朝倉はファンや関係者の想像を超える爪痕を残したといえる。宣言通り、前に出てKOを狙った。それだけでなく確かにパンチを当てていたのだ。

第2ラウンド、詰めるメイウェザーに朝倉は左アッパーを放つ。これもメイウェザー対策の一つだろう。メイウェザーの飛び込みにはクリンチボクシングで対抗する。近距離でしつこく連打を見舞い、一切の油断を見せない。

だが、ノーガードで圧をかけるメイウェザーはコーナーを背にした朝倉に右をヒット、さらにコーナーから脱出した朝倉に、容赦ない右のカウンターを見舞った。それを受け、朝倉がダウンを喫したタイミングで、第2ラウンド終了のゴングが鳴った。しかし朝倉は足元がおぼつかず、そのままレフェリーストップでTKO負けとなった。

■2ラウンドKO劇は“必然”だったのか

これまでのキャリアでKO負けのなかった朝倉が、初めてパンチで立ち上がることができなかった。一撃で朝倉をなぎ倒したようにも見えたが「最後のパンチはそんなに強く打っていない。そこまでの積み重ねで倒れた」とメイウェザーは言う。

映像を振り返ると、確かに第2ラウンドにメイウェザーのボディ打ちで朝倉が若干“くの字”になっている。深刻なダメージがあったかは定かでないが、このボディが布石となり、フィニッシュに繋がったのかもしれない。それだけではなく、KOパンチの直前にメイウェザーの右が朝倉のアゴ下辺りにヒットしている。第2ラウンドに入ってのダメージの蓄積がフィニッシュに繋がった可能性もある。

メイウェザーは「試合前に日本の親しい友人から『第1ラウンドは伸ばして、第2ラウンドに倒してほしい』と言われ、そのリクエストに応えた」と2ラウンド決着となった理由を語る。この言葉がジョークなのか、真意なのかは定かではない。

「彼(朝倉)の打撃を受けて、こっちもボディに強めの打撃を入れて『そのつもりならこっちも』とメッセージを送った。彼は笑って舌を出したりしたので遊ぶつもりか、じゃあ、こっちもやってみるか」と試合中の心境を明かしている。メイウェザーのエキシビションは「相手がその気なら、これくらいは攻撃を返すぞ」といった心境から、展開が生まれていくようだ。

第1ラウンド終了時、朝倉は笑顔だった。試合中にはメイウェザーのパンチがかすめるたび笑い、舌を出すシーンもあった。そんな朝倉を見てメイウェザーも少しずつ本気度を増していったのだ。相手が朝倉だったからこそ名勝負が生まれた。なぜなら、朝倉がKOを目指して勝負をかけたからこそ、メイウェザーも大きな見せ場を作ったのだ。相手に合わせつつ、自身のレベルの高さを見せる。それこそがメイウェザーのエキシビションの魅せ方なのかもしれない。

朝倉は試合後インタビューで「よく記憶がなくて、映像を見返したけれどなぜあれで倒れたのか謎。めちゃめちゃ頭が痛いです。多分ですが、気を抜いていたのかも。第1ラウンド終了の時に様子を見て終わったから、次もそんな感じで来ると思っていました」 と話している。

「なぜあれで倒れたのか謎」の言葉が、メイウェザーとの実力差を物語っている。可能性としては、第2ラウンド以降にヒットしたパンチのダメージの蓄積、見えない角度からのパンチを被弾してしまったことなどが考えられる。朝倉は「全部が凄かった。凄い反応速度とすべてのレベルが異次元でした」と語っている。

■朝倉の見据える先、メイウェザーは三度の来日か

朝倉は初のボクシングルール挑戦で、MMAファイターとしてのスキルアップを確信。「普通の人にはできない体験をしたし、MMAの選手として成長した。凄くボクシングテクニックが向上していると思う。オープンフィンガーならもっとパンチが速くなる。メイウェザーとここまで戦えたのは自信になります。MMAの選手には今後負けないよって思います」と語るほど。

朝倉のファイトスタイルは、得意なパンチと蹴りで試合を作るストライカー。今回のボクシング練習で得たアッパーのカウンターや飛び込みのフックなど、MMAの打撃に応用できる部分は多いにある。今回の学びをMMAの練習に落とし込み、リングに戻ってきてほしい。

一方のメイウェザーは、今年11月にはドバイでボクシング経験もあるYouTuberで、プロボクサーのKSIを兄に持つ弟・デジとのエキシビションが控えている。自身は「ボクシングを引退した身」との立場を明確にしつつ「これ以上、エキシビションで自分の身体に余分なダメージを伴うリスクは負わない。この先は自分がやりたいことをやり、それで楽しく世界中のみんなにエンターテインメントを届ける」と話している。

現役を退いた存在でありながら、世界中のエキシビションに参戦するメイウェザー。現役ボクサーではないからこそ、魅せられるエンターテインメントをこれからもファンに届けてくれるはずだ。試合後のマイクでは「また私は戻って来ます」と、三度の来日をほのめかす発言を残している。

■大騒ぎの“花束問題”「ごぼうの党」の奥野卓志代表に非難の声

メイウェザーと朝倉の試合前に、前代未聞の事件が起こっていた。プレゼンターを務めた「ごぼうの党」の奥野卓志代表が、メイウェザーに渡すはずの花束を、足元に投げつけてしまったのだ。リング上の花束贈呈は、今回販売されたNFTチケットの最高落札者の特典だった。 「RIZIN」の榊原信行CEOは「リング上でも謝罪しましたが、花束を投げ捨ててしまったことは予期せぬこと。品性下劣な男を上げてしまい、配慮が足りなかった。二度と起こさないようにお約束します。改めてお詫びをします。すみませんでした」と謝罪。「超RIZIN」が盛り上がりを見せたこと、海外中継もあったことで、より今回の事件に大きな注目が集まり炎上する結果になってしまった。今後の再発防止が求められる。

■総合力で上回った堀口、フライ級への転向視野に

一方の「堀口恭司 vs. 金太郎」戦を振り返ってみよう。

試合序盤はスタンドの展開に。金太郎はいつも通りの金太郎を貫き、蹴りに対しての左のカウンターでフラッシュダウンを奪う。堀口の攻撃に対して、冷静にパンチや蹴りを合わせる戦法で“あわや”の場面を作った。フラッシュダウンを奪取した際は、無理には倒しに行かなかった金太郎。

だが、第2ラウンドに堀口高速タックルで一気にテイクダウンに成功。金太郎にとっては耐えどころだったが、さすがは海外経験の豊富な堀口。すぐにパスガードして、マウントポジションに。そこから肩固めで金太郎を極め切って勝利した。金太郎も一撃で試合を終わらせてくれるという期待感をファンに持たせ、一方の堀口も総合力で上回るという熱戦が生まれた。

試合後には、所属ジムコーチのマイク・ブラウンからは「何やってんだお前、もっと最初からテイクダウンに行け」と怒られてしまったという堀口。今後は減量が4キロほどしかないことから、フライ級への転向を見据えている。ちなみに、UFCとは異なりベラトールには男子フライ級がない状態。フライ級に落とす場合は、階級創設からのスタートとなる。RIZIN参戦の場合は、「RIZIN.37」でベテラン所英男を下したホープ、神龍誠など若手も対戦候補に挙がってくることになりそうだ。

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文●吉田崇雄

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