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今季からスペインのレアル・ソシエダへ完全移籍した日本代表MF久保建英は14日(日本時間15日)、ラ・リーガ開幕戦のカディス戦に先発出場。[4-3-1-2]システムで2トップの一角としてプレーし、前半24分に先制点となる華麗なワントラップシュートを決めた。
チームは1-0で競り勝ち、久保のゴールが決勝点になっての開幕戦勝利。幸先の良いスタートを切ったレフティは、今後もソシエダで活躍が期待できるだろうか。
◆【実際の映像】値千金! 久保建英、移籍後決勝初ゴールの瞬間
■2年前から久保の獲得を熱望
ソシエダは移籍市場が開かれるたびに獲得オファーを出すなど、2年前から久保の獲得を画策していた。チーム編成を担う強化責任者のロベルト・オラベ氏(スポーツディレクター)、チームを率いるイマノル・アルグシアル監督は共に2018年から現職に就いている。2人とも現役時代にソシエダでプレーしたOB。特にアルグシアル監督は、選手としても指導者としてもソシエダが育てた人材だ。
強化責任者や監督が腰を据えて仕事に取り組むソシエダは、直結3シーズンで6位、5位、6位と安定して好成績を残している。チームとしての戦い方が定まっており、それゆえに獲得対象となる選手にもブレはない。彼らは中長期の展望でしっかりとしたチーム強化のプロジェクトを持っているクラブだ。下部組織出身選手をトップチームにリーグでもっとも多く輩出しているのも頷ける。
だからこそ、久保の獲得にも当初から保有元レアル・マドリーからの期限付きではなく、完全移籍にこだわったのだろう。久保はソシエダの中長期プロジェクトに入って獲得された選手といえる。
■バルサよりバルサらしいサッカー
ソシエダはボールを保持して試合の主導権を握るスタイルを理想としている。
久保が10歳から14歳までを過ごしたFCバルセロナに似たパスサッカーだ。近年のバルサはチームの象徴リオネル・メッシ(アルゼンチン代表/パリ・サンジェルマン)の退団後、選手の出入りが激しく、チームとしての戦い方が定まっていない。そのため、スペイン国内では、「ソシエダは本家バルサよりもバルサらしいサッカーをしている」と、高く評価されている。
チーム戦術の根幹を担うMF陣には、東京五輪にも出場したミケル・メリーノ、スペイン代表として125試合の出場経験があるダビド・シルバらがそろう。昨季のボール保持率54%はリーガで6番目。久保がプレーしたマジョルカの44%とは雲泥の差がある。
久保はリーガ開幕戦でFW起用されたが、ソシエダのMF陣からはどんどん良いパスが供給されていた。久保の決勝点もメリーノの絶妙な浮き球パスからだった。マジョルカでは自陣でプレーする時間が長く、自ら長い距離をドリブルで持ち上がらなければ攻撃が成立しなかった。ここではその心配はない。
久保にとって親和性のあるスタイルは、チームへの適応を後押ししている。アルグシアル監督も「久保は3年前からこのチームでプレーしていたようだ」と称賛している。
■日本人がスペインで活躍するための共通項
日本人選手にとってラ・リーガは「鬼門」だ。
日本代表の10番に君臨したMF中村俊輔(当時エスパニョール/横浜FC)でさえ活躍できなかった。直近5年で4度のJリーグ優勝に大きく貢献し、2018年にはMVPにも輝いたMF家長昭博(当時マジョルカ/川崎フロンターレ)はスペイン2部でも出場機会を掴めなかった。
しかし、MF乾貴士(清水エスパルス)はスペインで6年間プレーし、その多くの時間を主力として過ごした。SDウエスカでプレーしたFW岡崎慎司(シント・トロイデン)も、2019-2020シーズンに2部ながらチーム最多12ゴールを挙げて1部昇格に大きく貢献した。
日本人選手がスペインで活躍するのには共通点がある。スペイン北部のクラブに所属している場合に限られるのだ。乾のキャリアがそれを象徴している。彼はエイバルとデポルティーボ・アラベスのバスク自治州2クラブでは主力として活躍し続けた。しかし、南部・アンダルシア州のレアル・ベティスではほとんどプレー機会を与えられず、半年で退団している。同じアンダルシアではドイツで実績を上げていたMF清武弘嗣(セレッソ大阪)が2016年夏セビージャに加入したが、彼も半年で退団している。
久保はこの「日本選手がバスクで活躍する」ジンクスをキープする可能性がある。
■久保は元相棒との直接対決
開幕戦を久保の公式戦デビューゴールで勝利したソシエダは、第2節で久保の古巣バルサと対戦する。
現在のバルサには下部組織時代に共にプレーしたDFエリック・ガルシアやFWアンス・ファティが在籍。共に若くしてスペイン代表にも選出される逸材だ。特にファティと久保は前線でゴールを量産した最強コンビだった。また、久保がガルシアを相手にドリブルで仕掛ける場面など、彼らの対決にはスペイン中で注目が集まる。
「本家よりバルサらしいサッカー」を披露するソシエダが、その本家をホームのアノエタに迎える一戦は、そのスタイル対決にも注目だ。
ちなみにバルサはアノエタでの試合を苦手としていた時期があり、2012-2013シーズンから4年連続で敗れたり、公式戦8戦未勝利が続いたこともある。ただ、2016年以降のリーガでは5勝1分と完全に払拭している。
ソシエダは大型補強で注目を集めるバルサを相手に、久しぶりに「鬼門」であると思い起こさせるのか。また古巣対戦となる久保の開幕戦に続く活躍にも期待だ。
◆【実際の映像】移籍後決勝初ゴールを挙げ、喝采を受ける久保建英
◆久保建英、移籍後値千金決勝初ゴールを振り返る 「信頼してくれたこと、勝ったことに満足」
◆久保建英がプレーするレアル・ソシエダの本拠地「レアレ・アレーナ」ガイド
文●新垣 博之