【ボクシング】中谷正義、元3階級王者・ロマチェンコと至高のマッチアップ 強敵相手に“番狂わせ”の可能性は | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【ボクシング】中谷正義、元3階級王者・ロマチェンコと至高のマッチアップ 強敵相手に“番狂わせ”の可能性は

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【ボクシング】中谷正義、元3階級王者・ロマチェンコと至高のマッチアップ 強敵相手に“番狂わせ”の可能性は
  • 【ボクシング】中谷正義、元3階級王者・ロマチェンコと至高のマッチアップ 強敵相手に“番狂わせ”の可能性は

元3階級制覇王者であるワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)とWBO世界ライト級5位・中谷正義によるライト級12回戦が26日(日本時間27日)、米ネバダ州のヴァージン・ホテルズ・ラスベガスで行われる。世界タイトルがかからない試合にも関わらず、これほどの注目を集めるのは異例。「最高傑作」と形容されるロマチェンコに中谷がどこまで通用するのか、じっくりと検証してみたい。


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■“最高傑作”ロマチェンコのアマ戦績は永久不滅


ロマチェンコの武器は、なんといってもテクニック。396勝1敗という驚異的なアマチュア戦績は、永久不滅と言って間違いない。北京オリンピック、ロンドンオリンピックと2大会連続で金メダルを獲得。その実績を引っ提げて、2013年、鳴り物入りでプロデビューした。


プロ2戦目で「世界最速」を目指してオルランド・サリド(メキシコ)の持つWBO世界フェザー級タイトルマッチに挑戦したが、1-2の判定で敗れプロの洗礼を受けた。しかし、この試合で評価が下がったわけではなかった。何しろ、サリドは前日計量で体重が作れずに王座剥奪。リングに上がった際には、ロマチェンコより5キロも体重が重かったといわれている。


サリド戦の敗戦から“プロ仕様”にモデルチェンジしたロマチェンコは連戦連勝。3戦目でWBO世界フェザー級タイトルを獲得すると、スーパーフェザー級、ライト級を制し、12戦目で世界最速での3階級制覇を達成した。これは今も破られていない記録だ。


ロマチェンコの戦いぶりは独特だ。前後はもちろん、左右にも素早く動いてパンチを急所に当て続ける。特に相手の横に回り込む動きは、誰にも真似ができない特技だ。強打は相手が弱り切るまで温存し、軽いパンチに徹する。しかも、距離は近いのに相手にパンチを一切当てさせない「究極のアンタッチャブル」。ロマチェンコの最大の武器に、ディフェンス能力を挙げる識者も多い。


対戦相手にしてみれば拷問のような試合運びとなるが、この類稀なテクニックが評価され、長らくパウンド・フォー・パウンド(PFP)のトップに君臨。「ロマチェンコに勝てる選手は現れないのでは?」と、多くの評論家が発言していた。


■カムバック戦に指名されたのは日本の中谷


ところが、2020年10月、テオフィモ・ロペス(米国)との王座統一戦は0-3の判定負け。WOWOWで解説をしていたジョー小泉氏の採点は明確にロマチェンコを支持。本人が公に抗議することはなかったが、物議を醸す判定だった。


そのロマチェンコがカムバックする。人一倍プライドが高い元王者だけに、ベルトをまとめて持っていかれたロペスへの雪辱に闘志を燃やしているはずだ。ダイレクト・リマッチも予想されたが、なんと指名されたのは日本の中谷正義だった。


中谷の戦績は19勝(13KO)1敗。WBO世界ランキング5位にランクされている。昨年12月にフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)と対戦し、1Rに強烈なダウンを奪われながら9Rに逆転KO勝ち。その試合が評価されての“抜擢”となった。


当然ながら、戦前の予想は圧倒的にロマチェンコ優位。世界が待ち望むロペスとの再戦に向けたチューンアップという見方が大勢だ。万が一、中谷に敗れるようなことがあれば、戦績は14勝3敗となり、“並”の選手に降格してしまう。しっかりと実力差を見せつけるに違いない。誰もがそう思っている……。しかし、中谷はそれほど簡単な相手だろうか?


■ジャブ、クリンチ、右ストレート…アップセットの可能性は


中谷は身長182センチ、ライト級では抜きん出た長身だ。ロマチェンコとは身長で12センチ、リーチで14センチのアドバンテージがある。ロマチェンコが過去に対戦した相手では、ホセ・ペドラザ(プエルトリコ)が体型的に近い。ロマチェンコはペドラザの長い腕をさばくのに苦労し、ダウンは奪ったものの判定に持ち込まれている。


ロマチェンコはライト級では体が見劣る。ロペス戦も体の大きさ、強さで押しまくられ、前半でポイントを失ったのが敗因だった。中谷としては、まずは体格差を生かすことが第一だ。作戦面ではジャブを突いて距離を保ちたい。インサイドに入られてしまうと、好き放題にやられてしまう。


もし、距離が詰まったときには長い腕でクリンチするのが得策。世界最強を相手にきれいごとを言っている場合ではない。クリンチ、ホールドで相手をイライラさせることも場面によっては選択肢に入るかもしれない。そして、機を見てホルへ・リナレスがダウンを奪った右カウンターを徹底して狙いたい。作戦がハマれば、ひょっとしてひょっとする……かもしれない。


中谷はOPBFタイトルを11度防衛した実力者。彼が喫した唯一の1敗も、実はテオフィモ・ロペス戦のものであり、0-3の明確な判定でありながら善戦が光った。その力関係からすると下馬評ほどの差はないのかもしれない。


中谷は「一度負けたら引退する」と公言し、実際にロペスに敗れた後、一度引退してしまった。復帰2戦目に決まったロマチェンコ戦についても、「世界戦じゃないのでうれしさはない」「外から見るとすごいと思うだけで大差ない」など、いっぷう変わった発言を繰り返している。掴みどころのない不思議なキャラクターだが、大一番を前にアップセットの雰囲気も漂ってきている。


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著者プロフィール


牧野森太郎●フリーライター


ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

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