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DeNAは15日、育成選手の田中健二朗投手と支配下登録を結ぶことを発表した。14日に中継ぎの国吉佑樹がロッテへトレード移籍。手薄になる中継ぎ陣の貴重な左腕として、経験豊富な31歳が新たなスタートを切る。
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■16,17年は中継ぎエースとして地位を確立
田中は07年、常葉学園菊川高校(現・常葉菊川)3年時に、センバツでチームを優勝に導き、夏もベスト4入りを果たすなど、春夏通じて6勝をマーク。大阪桐蔭高校の中田翔(現・日本ハム)、広陵高校の野村祐輔(現・広島)らとしのぎを削った。その年の高校生ドラフト1巡目で横浜(現DeNA)に入団。プロ3年目の10年9月11日に中継ぎで一軍デビューを果たし、9月15日の阪神戦で初先発初勝利を飾った。
当初は主に先発で起用されるも、なかなか結果を出すことができず、14年までにわずか2勝。しかし、15年にセットアッパーを任されると、ようやく素質が開花し、2勝2敗1セーブ16ホールドで防御率2.20の好成績をマーク。翌16年には、キャリアハイの61試合に登板し、5勝3敗23ホールドの防御率2.45で、チーム史上初のクライマックスシリーズ進出へ貢献。17年にも60試合に登板し、中継ぎエースとしての地位を確保した。
だが、18年には他の左投手が台頭し、11試合の登板にとどまり、さらに、19年8月には、左肘内側側副靱帯(じんたい)の再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受け、シーズン終了後には育成契約に変更。この2年間は実践復帰に至らなかったが、「しっかり治してその後、長く野球ができるように」という球団の計らいによって、長きにわたりじっくりと回復に専念することができた。
■1イニングを任せられる中継ぎとして期待
田中の武器は、曲がりの大きなカーブとキレのある直球。投球スタイルは、全球種の約半分がストレートで、スライダーが約2割、カーブが約2割と、直球と変化球で組み立てていくタイプだ。サウスポーであるが、対左打者へのワンポイントというわけではない。キャリアハイの16年を例に左右打者別成績を見ると、対左打者の.295に対し、対右打者は.240、17年も対左打者の.250に対し、対右打者は.239と、右打者のほうが抑えている傾向にある。
今季は3月の春季教育リーグ戦で、約2年半ぶりに実戦へ復帰。イースタン・リーグでは、チーム最多の21試合に登板し、0勝1敗1S、防御率3.48の成績を残し、20回2/3で20三振を奪うなど、奪三振率は8.71と高い水準をマーク。一軍でもストッパーとして、左右にこだわらず1イニングをしっかり任せられる貴重な左腕として、重宝されることだろう。
■チーム浮上の引き金となるか
DeNAは交流戦で9勝6敗3分と勝ち越しに成功。14日時点で最下位を脱出し、チームは上り調子になりつつある。しかし、防御率4.71は12球団を通じて一番悪く、投手陣の再建は急務。18試合に登板していた国吉を放出し、中継ぎ左腕の砂田毅樹、エスコバーともに登板過多と、台所事情は苦しいが、左右の得手不得手のない田中がピースとして加われば、中継ぎローテーションも組める上、三嶋一輝、山﨑康晃らとともに救援陣も安定してくるだろう。
大谷翔平やダルビッシュ有など、トミー・ジョン手術を受けた後に、球速やパフォーマンスが上がった投手は意外と多い。田中の新たな野球人生が開いたとき、下位に低迷するチームの希望の光となるか、注目したい。
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文・SPREAD編集部