元ニューヨーク・ヤンキースのアレックス・ロドリゲスと歌手・女優のジェニファー・ロペスのカップルは、ニューヨークのMLBチーム・オーナーになるべく、手続きを取っていると米誌『バラエティ』が報じた。
元ヤンキース選手とブルックリン出身歌手とくれば、もちろん「ヤンキースの」となりそうだが、その投資先はニューヨーク・メッツだ。
≪文:たまさぶろ●スポーツ・プロデューサー、エッセイスト、BAR評論家≫
メッツのオーナーに名乗り
松井秀喜、デレク・ジーターらとともに2009年、ヤンキースのワールドシリーズ制覇に貢献した「A-ROD」は、通算ホームラン696本、ホームラン王5回、打点王2回、首位打者1回を記録。ドラフト指名されたシアトル・マリナーズからテキサス・レンジャーズへFA移籍した際、10年総額2億5200万ドルで契約。
後のステロイド騒動の渦中にいたことなどから選手として過小評価されがちだが、特にホームラン数については、バリー・ボンズ、ハンク・アーロン、ベーブ・ルースに次ぐ4位であり、名選手である点に異論を挟む余地はない。
「J.LO」との交際は以前から報じられていたが、2019年3月に婚約を発表。結婚式を予定していたが、現在の新型コロナ・ウイルス騒動を理由に延期している。
この二人がメッツのオーナーとなるべく前進している。現在、メッツのオーナーはウィルポン家。昨年12月にチーム株式の80%を売却すると伝えられていた。
『バラエティ』によるとメッツの市場価値は26億ドル、二人の純資産は7億ドルと伝えており、資金調達のためJPモルガン・チェースとの交渉が大詰めを迎えているという。
ブルックリン出身のロドリゲスがメッツ・ファンだったとしても、ニューヨーカーとしてはそう不思議ではない。
本人も「マイアミで育ったので大のメッツ・ファンだった」とコメント。中でも「キース・ヘルナンデスがお気に入りだった」と証言している。
キャンプを張る宮崎県の方に巨人ファンが多かったり、愛媛にヤクルト・ファンが少なくないのと同じような理由だ。
ヘルナンデスは、1974年から90年まで活躍した左投げ左打ちの一塁手。83年から89年までメッツでプレーし、86年にはワールドシリーズ制覇に貢献。カージナルス時代には首位打者も獲得しており、特にクラッチ・ヒッターとして知られる。
若いファンにはピンと来ないかもしれないが、MLBにも80年から88年まで「勝利打点」という打撃タイトルがあり、彼の129は最多記録となっている(NPBでもこれに習い81年から88年まで取り入れていた)。
今後の動向に注目
ロドリゲスはマリナーズからFA宣言した2000年シーズン終了時、メッツとも交渉。契約に近かったものの、レンジャーズが総額で勝り、獲得に成功した。
メッツはその2000年、ドジャース時代に野茂英雄の女房役として日本のファンにも名高いマイク・ピアッツァを擁し、ワールドシリーズに進出。ヤンキースとの「サブウェイ・シリーズ」で世界一を逃している。
その翌年、このラインアップにA-RODが並んでいたらと考えると、メッツ・ファンとして想像は膨らむばかりだ。
メッツはかつてボビー・バレンタインが監督を務め、吉井理人、野茂英雄、新庄剛志、松井稼頭央、石井一久、高津臣吾、五十嵐亮太、松坂大輔が在籍していた過去もあり、日本の野球ファンにもおなじみだろう。
チームは2015年にナショナル・リーグを制覇。14年ぶりにワールドシリーズ進出を果たしたものの、元巨人のデイブ・ジョンソン監督時、86年以来「世界一」の称号を手にしていない。
現在、2年連続サイヤング賞獲得のジェイコブ・デグロム、昨年53ホーマーを放ちホームラ王と新人王に輝いたピート・アロンソ、ヒューストン・アストロズからやって来たJ.D.デービス、さらにヤンキース、マリナーズでも活躍したロビンソン・カノらを抱えるなど、戦力も充実。
MLBの開幕もなかなか見えないながら、ロドリゲス、ロペスのカップルがオーナーシップを手にした際、どんなチーム作りとなるのか。
盟友ジーターが、マイアミ・マーリンズのパート・オーナーとして手腕を発揮しているだけに、メッツ・ファンならずとも期待を寄せたいところだ。
≪たまさぶろ コラム≫
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たまさぶろ●スポーツ・プロデューサー、エッセイスト、BAR評論家
週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」をプロデュース。日本で初めて既存メディアとデジタルメディアの融合を成功させる。
MLB日本語公式サイト・プロデューサー、 東京マラソン事務局広報ディレクター、プロ野球公式記録DBプロジェクト・マネジャーなどを歴任。エッセイスト、BAR評論家として著作『My Lost New York~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在(いま)』『麗しきバーテンダーたち』『【東京】ゆとりを愉しむ至福のBAR』などあり。