男子テニス世界ランク26位のニック・キリオス選手が、今夏の東京五輪出場を強く希望している。
オーストラリアの新聞『THE AGE』は、五輪に出場するプロテニス選手の多くが選手村ではなく、ホテル暮らしでの滞在を希望するなか、キリオス選手は「選手村に宿泊したい」と意思表明済みだとも伝えた。
4年前はキリオスが出場辞退 豪州オリンピック委員会と喧嘩別れ
今週、オーストラリアオリンピック委員会(AOC)のジョン・コーツ会長が、キリオス選手の代表入りについて「彼の代表入りを誇りに思うだろう」と発言して豪州メディアを驚かせた。キリオス選手とAOCには、前回のリオ五輪から続く確執があったためだ。
当時の世界ランクでオーストラリア勢トップの19位だったキリオス選手は、代表入りが確実と見られていた。だが歯に衣着せぬ発言が問題視されることもあったキリオス選手は、AOCが定める派遣選手の行動規範に抵触していたようだ。
AOCはキリオス選手に対し、過去の問題行動について説明するよう求める質問書を送付した。それは16ページにも及ぶもので、これを不服としたキリオス選手が「AOCは誰ひとりとして話し合う機会を求めて接触してこなかった」とメディアに不満を打ち明けた。
キリオス選手は「AOCの自分に対する仕打ちは、このスポーツを取り巻く激しい競争環境を理解する能力が欠けており不当なものだ」と候補を辞退した。
それに対して、オーストラリア選手団のキティ・チラー団長が、質問状はキリオス選手だけでなく過去に問題行動があった選手全員に送っていると反論。
「ニックに送った16ページの質問書が他選手のものよりも長かったことは認めます。だけど連絡がなかったと言うのは間違っている。話し合う機会が欲しいというなら、そちらの言い分を聞かせて欲しいという質問書がその役割を果たすはず。それに返事をせず出場辞退したのは彼の意思です」
両者ともに真っ向から対立して譲らず、その後の4年間でもキリオス選手とAOCは和解に至らなかった。
それが雪解けムードを迎えたきっかけは、オーストラリアで長引いている森林火災だった。復興活動に尽力するキリオス選手の姿にコーツ会長が感銘を受け、代表入りへの態度を軟化させた。
五輪出場なら本気でメダルを狙う
全豪オープン1回戦のあと、コーツ会長の発言について質問されたキリオス選手は、東京五輪出場について「もしその場にいるのなら、本気でメダルを狙っていくことになるだろう。他の選手たちと一緒にオーストラリアを代表したい」と意欲を見せた。
高額の収入があるプロ選手はコンディション面も考慮して、五輪期間中に選手村ではなくホテルを手配して滞在する。4年前のリオではロジャー・フェデラー選手、アンディ・マレー選手、そしてバスケットボール米国代表などがホテルを利用した。
だがキリオス選手は選手村で五輪の雰囲気に浸りたいと希望している。