8月7日、神宮球場のマウンドにはJリーガーの姿があった。2019シーズンからFC東京の背番号「10」をつける東慶悟(ひがし けいご)選手が、東京ヤクルトスワローズ対阪神タイガース戦の始球式に登場したのだ。
当日の投球はキャッチャーミットを大きくそれてしまったが、「人生で初めて。いい経験をさせてもらった」と東選手は頰をゆるめる。
FC東京と東京ヤクルトスワローズは、ともにXFLAG(株式会社ミクシィ)とパートナー契約を結んでいる。その縁があって今回、8月7日に開催された東京ヤクルトスワローズの「XFLAG DAY」で始球式が実現した。
東選手は今シーズンからFC東京のキャプテンも担い、これまでのプロサッカー人生とはまた違った新しい経験を重ねている。
FC東京が首位をキープし、クラブ初となるリーグ優勝への期待もふくらむ8月下旬に、都内の練習場で汗を流している東選手を訪ねた。
※取材日は2019年8月下旬
キャプテンになってからの変化
――キャプテンになって、ファン・サポーターの方からも「キャプテン!」と呼ばれることが多いと思いますが、もう慣れましたか?
東慶悟選手(以下、敬称略):「最初の方は違和感がめちゃくちゃありました。今はもうだいぶ慣れてきたというか、自分がキャプテンをやっている実感は湧いてきました」
――意識の変化などは?
東:「役割は重要だと改めて感じるようになりました。キャプテンをやっているというだけで責任だったり行動、発言が変わってくるし、そこにかかるプレッシャーもある。それが逆に刺激になって良かったこともあるし、押しつぶされそうになることもあるんですけれど、すごくいい経験をさせてもらっていると思っています。J1のチームでキャプテンをすることは、みんながみんなできるわけではないし」
これまでも副キャプテンは任されていたが、「キャプテンマークを巻くか巻かないかだけでまったく違う」そうだ。自分のプレーだけに集中するのではなく、チーム全体のことを常に考えなくてはいけない。
2019シーズンの副キャプテンの橋本拳人選手は東選手より3歳若く、20代前半の若手選手との架け橋としてキャプテンを支えてくれている。
東:「若い選手とはジェネレーションギャップじゃないですけれど、しゃべることや内容が違ったりもする。その辺のバランスは拳人が取ってくれているのかなと思います」
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大事な場面では自信を持ってやるしかない
――始球式で野球のマウンドに立ちましたが、サッカーのピッチと比べて雰囲気はどうでしたか?
東:「全然違いましたね。想像していたよりも緊張しました」
――投げたボールは大きく右にそれてしまいましたが……。
東:「(事前にキャッチボール程度だが練習をしており)いいボールを投げたかったんですが、やっぱりあそこに立って、バッターがいて、ホームベースがあって……というのは全然違う。テレビで観たり、観戦にいくこともあるのですが、観てるのとやるのでは改めて違うなと。ピッチャーの方はすごい。(自分の投球も)意外とイケるだろうと思っていたのに(笑)」
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――もちろん、あのような大事な場面はサッカーでもあると思いますが、東選手はどのようにメンタルをコントロールしていますか?
東:「始球式をやった時に感じたのは、サッカーで言うとPKに似ているなと。みんながそこに注目して、投げる瞬間を見る、というのはPKのそれと一緒ですね。サッカーでは一番緊張すると言うか、簡単そうで難しい。自信を持ってやるしかないのかなと思います」
FC東京ではディエゴ・オリヴェイラ選手がPKのキッカーを務めるが、「やっぱり普段から練習をしてますよね。そこは裏切らない。もちろん外してしまうこともあるけど、蹴ることによって自信につながる。そこが重要なのかなと思いますね」と東選手。経験することは、何事においても“力”になる。
首都をホームにするFC東京としての自負
8月終了時点でリーグ首位を走るFC東京。かつてチームに所属した長友佑都選手(ガラタサライ)も注目している。
東京強いな。
— Yuto Nagatomo | 長友佑都 (@YutoNagatomo5) August 10, 2019
このまま優勝まで突っ走れ!
首都東京が強くなればJリーグは更に盛り上がる。 https://t.co/F0T80IkNaZ
――「首都東京が強くなればJリーグは更に盛り上がる」と長友選手がツイートしていました。首都をホームとすることに対する特別な気持ちなどありますか?
東:「強くなっていかないといけない、という自負はあります。どの国のリーグを見ても、首都のチームはズバ抜けて強かったりします。歴史が違うと言われたらそれまでなんですが、やっぱりここから東京のチームが強くなっていかないといけないと思います」
「それは優勝したり、リーグ戦などで積み上げていった先に出来上がっていくもの。お金があるからそうなるわけではないですし、いい選手が来るからそうなるわけでもない。コツコツと結果を残していって、その一歩にしたいと感じますね」
――このまま2019シーズンを駆け抜けたいですね。
東:「歴史を残せるチャンスがあることは選手としてもそうそうないので、目の前の試合を大切に戦って、最後にトップでいたいという想いは強いです。特に今年はスタジアムにお客さんがすごく入ってくれて、ホームでの勝率もいい。アウェーでも数多くのファン・サポーターの方が来てくれて今の結果があると思います」
「皆さんが本当に期待してくれていると思うので、優勝は全員でつかみたい。選手もファン・サポーターも一体感がすごくあるので、この雰囲気をずっと続けられるようにしていきたいです」
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東選手は小学生の頃からボールを追い続けてきた。プロサッカー選手となり、それが仕事になったことで「今は楽しさはすごく少ない」と苦笑いする。プロとしての責任やプレッシャーがのしかかるからだ。
東:「勝ったりした時は、楽しいというよりはホッとする方が今は多いかもしれないですね。サッカー自体は楽しいんですが、それ以外のことも考えたりすると、今はただ楽しいというより、夢中になって真剣に向き合ってる感じがします」
真面目な人なのだろう。だからこそチームのまとめ役であるキャプテンに選ばれ、試合を作り、そして勝利へと導く。
インタビュー後編では、東選手のプライベートについて教えてもらった。
≪インタビュー後編≫
東慶悟はピッチ外ではどう過ごす?「オフの日は家族と」「後輩たちとゲーム」「クルマの運転でリラックス」
東慶悟(ひがしけいご)
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1990年7月20日生まれ、福岡県出身。FC東京のMFでキャプテン。2009年に大分トリニータからプロデビュー。大宮アルディージャ(2011-2012)を経て、2013年から現チーム。
《text & photo Hideyuki Gomibuchi》