【記者ブログ】少数民族、アイデンティティ。英語とフィリピン。 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【記者ブログ】少数民族、アイデンティティ。英語とフィリピン。

オピニオン コラム

【記者ブログ】少数民族、アイデンティティ。英語とフィリピン。
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フィリピンに来てから1月半。フィリピン人は本当に英語ができます。ここまで多くの人が英語を解する国は、ネイティブ国家を除いて僕の経験上他にはないです。

フィリピンと同様に英語が公用語の国、インドを巡った時ですら思ったよりも普通の人は英語を話せなかったですし。まだ僕はマニラにしか滞在しておらず、各地を巡ったわけではないので主観的ではありますが、データを見てみてもそれは一目瞭然。

少々曖昧なソースではあるものの、フィリピン私立大学最高峰の「デ・ラ・サール大学」で国際関係学を学ぶ友人の話によると、フィリピンの英語を解する人の割合を示したデータを見たところ、フィリピン人の英語話者比率は約92%。ちなみにインドは約12%ですから、その差は圧倒的です。

さらに言えば言語学的にも近く、英語を話せる人の割合が高いイメージのドイツですら約70%なので、フィリピンの数値がいかに驚異的かが容易に理解できると思います。(ちなみにタガログ語は英語に近いわけではないようです)

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ここで疑問に思ったのが「彼らの母国語は?」という問題。

フィリピンの主要言語はフィリピン語(タガログ語)ではありますが、もはや第一言語として英語を習得している人も。何人かの友人は「タガログ語より英語の方が得意」とさえ明かします。

そもそも7000以上の島から成るフィリピンは言語が複数あり(とある本によると172言語、そのうち3言語は絶滅)、タガログ語や英語はそれをとりまとめるための言語に過ぎません。つまりほとんどの国民が2言語以上を解します。

例えば、日本人にも人気のセブ島。彼らの言語はタガログ語ではなくセブアノ語。つまり、彼らはセブアノ、タガログ、英語の3言語を操ります。と言っても多数の言語を操ることはそう簡単ではないというのは当然で、マニラ出身の友人の一人がセブ地域を旅行したときは、タガログ語ではなく英語で彼らと会話したということです。つまり、地域や家庭環境によってはタガログ語の習得よりも英語の習得に力を入れているということが分かります。

ただ、「英語の方がタガログ語よりも得意」となると、言語がアイデンティティや思考を規定するという定説をあてはめるならばそういった人のアイデンティティはどこか曖昧なものになってしまうのではないか...?と感じることも。

と言っても、結局これは第三者からの少し意地悪な見方なのかもしれません。話は逸れますがバックパッカーをして、少数民族(と言っても世の中のほとんどの人が少数民族なわけですが、この場合はイメージしやすいいわゆる少数民族)の村などをモロッコやメキシコなどで訪れた時に聞くのは、お決まりの「この地の文化や言語はもうほとんど廃れてきている、守らなくてはいけない」という台詞。

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しかし、結局のところそういった語り口ができるのは、現地の言葉と同時に英語などの大衆言語を習得することのできた、いわゆるエリートなわけです。その村のほとんどの人はその地の言葉しか話せないわけですから、端的に言うと彼らは「仕事に就くのが非常に難しい」そうです。この例で言うとモロッコならばアラビア語やフランス語、メキシコならばスペイン語などの言語、さらには英語を習得した方が、その村でしか通じない言葉を習得するより経済的、実用的な観点からすれば「いい?」わけです。

つまり、「少数民族の言語や文化の保護はした方がいいよね」という一見受け入れられやすい主張は、ややもすると第三者のエゴに陥る可能性を孕んでいるのかもしれないということです。(とはいってもやっぱり違和感あるんですが...)

話は戻りますが、ある意味それを体現しているのがフィリピンかもしれません。世界言語である英語を多くの人が解することが、経済的成長に一役買っています。

フィリピン政府によると2013年末時点で同国人口の1割の約1023万人(永住者を含む)が海外で暮らしています。渡航先は米国が353万人と最も多いです。GDPの1割が出稼ぎ労働者からの送金だと言いますから、その額は途方もない。

彼らはOFW(Overseas Filippino Workers)と呼ばれています。これはフィリピン人が英語に長けているから可能なことであることは明白で、国内でも給料の高い仕事の一つは海外向けのコールセンターだったりします。

そうすると、結局実用的な観点からしても、生存戦略的な意味でも英語を母国語の一部にする、というのは強いんだなぁ、と思ったり。
《大日方航》

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