【THE ATHLETE】ウサイン・ボルト伝説の終焉、ファンのために走ったラストランに悔いはなし | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】ウサイン・ボルト伝説の終焉、ファンのために走ったラストランに悔いはなし

オピニオン コラム
ウサイン・ボルト(2017年8月5日)
  • ウサイン・ボルト(2017年8月5日)
  • ウサイン・ボルト(2017年8月12日)
  • ウサイン・ボルト(2017年8月12日)
  • ウサイン・ボルト(2017年8月12日)
歴史に残る名スプリンターはキャリアの最後を栄光で飾ることができなかった。8月12日に行われた世界陸上ロンドン大会、男子400メートルリレーでジャマイカのウサイン・ボルトは途中棄権。左脚を痛めて最後の競技を終えた。

2016年のリオデジャネイロ五輪から現役生活を1年伸ばして臨んだ世界陸上。大観衆が見つめる前で最後の大会に挑んだボルトだったが、男子100メートルでは長年のライバルだったジャスティン・ガトリンに敗れ銅メダル。個人種目では王座を守ることができなかった。

ボルトに最後の金メダルをとジャマイカが一致団結して臨んだリレー。最終走者のボルトはメダル圏内でバトンを受け取るも、直線に向いて左太ももに痙攣が起こる。痛みに顔を歪めながら失速。最後のレースを完走することはできなかった。

最後のレースは完走ならず
(c) Getty Images

最後の1年にも悔いなし「ファンのためなら終わり方は構わない」


ラストランを勝利で締めくくることはできなかったが、レース後にボルトは会場に姿を現し場内を歩いて一周した。観客からは大歓声と拍手が贈られ、電光掲示板にはボルトが持つ100メートルの世界記録9秒58、200メートルの世界記録19秒19が表示された。

ファンの期待に応えて代名詞でもある弓引きポーズを披露すると、ひときわ大きな歓声が上がり、ボルトにも笑顔が見られた。

ここ数年のボルトは『引退』を意識する発言が増えていた。リオ五輪前には「個人的には何年もやりたくない」と話し、現役続行を臨む周囲との温度差を示唆していた。

ウサイン・ボルト、引退時期について語る

リオ五輪で引退するのもひとつのプランだったが現役生活を1年延ばし、ロンドン大会でトラックを後にした。金メダルなしに終わったことで、その決断を後悔しているのではと心配する周囲に対し、ボルトは「ファンが喜んでくれたなら満足だ」と話している。

「僕は元気だよ。ファンはあと1年勝負する僕を見たがっていた。ファンのためにこうしているのだと皆さんには話してきた。ファンがいなかったらこの数年での成果を成し遂げることは不可能だった。ファンは何年も僕にエネルギーを注いでくれた。最高の自分になれるよう後押ししてくれたんだ。ここで試合に出られて、ファンにショーを見せられたなら、それがどのように終わろうと構わない。ここに出られてファンが望むものを出せて満足だから僕は元気だよ」

ファンのために走り続けた
(c) Getty Images

「一度の大会やレースが自分の成し遂げてきたことを変えはしない」


最後の大会は残念な結果に終わったボルト。しかし、これが自分の成し遂げてきたことを台無しにしたりはしないと話す。

「一度の大会が僕の成し遂げてきたことを変えはしないと思う。100メートル走で負けたあと誰かがモハメド・アリは最後の戦いで負けたんだから気にするなと僕に言ったのを思い出す。キャリアを通じて毎年、僕は自分の力を証明してきた。ひとつの大会やレースや、最後のレースを完走しなかったとの事実が僕が成し遂げてきた事実を変えることはないと思っている」

再びトラックに戻る可能性はとの問いは完璧に否定した。

「あまりにも多くの人が復帰して自分自身を恥じる姿を見てきた。僕は彼らとは違う」

引退後に何をするのかと聞かれたボルトは、「まずは楽しみたいかな。お酒も飲みたい。今大会はストレスの多いものだったからね」と話している。

最後の勝負でボルト超えを果たしたガトリンも、リレー後に「彼と酒を酌み交わしたい」と希望を語っていた。

「僕が引退するまで待っていられない。ボルトとビールを一杯酌み交わそう。腰を落ち着けて僕らが繰り広げてきた勝負について語り、とにかく笑いたい」

重圧から解放されたふたりが酒を酌み交わし、談笑する日は訪れるだろうか。

《岩藤健》

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