【山口和幸の茶輪記】富士山登頂に失敗したトラウマ…再び挑もうとするときの不安 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【山口和幸の茶輪記】富士山登頂に失敗したトラウマ…再び挑もうとするときの不安

オピニオン コラム
2009年8月、家族で挑んだ富士山登頂を8合目で断念
  • 2009年8月、家族で挑んだ富士山登頂を8合目で断念
  • 富士山の練習のため、丹沢の塔ノ岳に向かう。渋沢駅からバスで大倉バス停へ
  • 大倉尾根を上ってしばらくすると見晴茶屋という山小屋がある
  • 元F1レーサーで登山家としても知られる片山右京が小さいころに父親に連れられて何度も訪問したという見晴茶屋
  • 見晴茶屋には片山右京の写真も。かつてはF1のつなぎやヘルメットもあったという
  • 見晴茶屋
  • 塔ノ岳に向かう大倉尾根
  • 頂上まで高低差であと200mというところでこの日は断念
日本に生まれたんだから、一生のうちに一度でいいから最高峰の富士山に登りたい。そんな目標を立てて、トレイルランやサイクリングなどのクロストレーニングを積んで夏山シーズンが到来するのを待つ。体力レベルに自信をつけつつも、じつは意外と失敗を経験している。

富士山は天候を見極め、所要時間をかければそれほど難しい山ではないという。ところがボクは過去に登頂に失敗している。

娘2人がまだ小さかったころ、妻を含めて家族4人で標高3776mの頂点を目指した。自宅が富士山からそれほど離れていないこともあって、始発電車で御殿場駅に向かい、タクシーを使って須走口五合目に。高度順化のためにしばらくとどまっていたのだが、気ばかり焦って3時間ほどで出発。案の定、妻が8合目で「私はもうダメ。私を置いて上ってきて」と青息吐息の状態。

娘2人が母親を残して頂上を目指すわけもなく、ボクもかなり足にきていたのでここで断念して下山することにした。最終的な決断は、その日予約していたホテルリゾート「時之栖」の夕食時間に間に合わないというせちがらいものだったけど。

目的を失った下山は心身ともにかなりダメージがあって、下っているのだから高山病もカラダの冷えもないはずなのになぜか頭が痛くなり、身震いまでして、ホテル到着時にはフラフラだった。これが富士山初挑戦の強烈な洗礼だった。

だから、10年後に改めて富士山を目指そうと決心したときは、相当の準備をして臨まないと不安が打ち消されないという気持ちで心が落ち着かない。毎年ハーフマラソンに一緒に出場するプロの山岳ガイドに「山口さんなら楽勝ですよ」とお墨付きをもらうのだが、そんなことで不安が解消されるものではない。

まずは情報を収集する。朝日新聞社から「週刊日本百名山改訂新版」が出たら、専売所に電話して創刊号の「富士山・丹沢山」を注文。富士山しか興味がなかったので2週目からはキャンセルした。春になると各出版社から夏山ガイドが相次いで刊行されたので、山と溪谷社の「別冊山と溪谷・富士山ブック2017」を入手。これはバイブルのような存在になり、毎日カバンの中に入れておくものだから、ボロボロになるほど熟読することになる。

前出の山岳ガイドにアドバイスを求めると、トレーニングのために富士山登頂に近い標高差、所要時間を体験すべきという提案をもらう。具体的には丹沢の塔ノ沢往復ルートだ。このときの模様はGarminのGPSインプレ記事にも記したのでご参考までに。

【GARMIN fenix 5X Sapphireインプレ後編】塔ノ岳登山!5Xの実力やいかに?

このインプレ記事では最終的に登頂したかは主題を外れるので明記していないが、白状するとこのときも最高峰にはたどり着けていないのである。

大自然を相手にする登山は、気象条件やさまざまな要因がたちはだかる。マラソンや自転車ロードレースなら悪天候でもなんとか帳尻を合わせることもできるだろうが、一度山に入ったら自力でしか生還できない山岳は安全策をとるのがいい。まあ、なんだかんだイイワケを言っても富士山のトレーニングだった丹沢登頂も未遂行。ホントに大丈夫なんだろうかと不安はさらに倍増する。

その一方で、一生に一度のチャレンジなんだから最高のロケーションを満喫したいという夢もある。登山客が集中するが、比較的楽な吉田ルートと富士宮ルートは2度目に上るチャンスがあったら挑戦してみようと決めている。

一番現実的なのは須走ルート、そしてできれば登山客が少なく、山小屋も混雑せず、ただし標高約1440mからひたすら上る御殿場ルートでチャレンジしたい、などなど。

6月末になるとツール・ド・フランス取材で渡欧し、トレーニングはできなくなるが、帰国後の8月に再開したい。猛暑の中でどれだけできるか。果たして富士山に登れるのか。
《山口和幸》

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