リーダー・サブリーダー、私たちメンバー9人と荷物を管理するポーター5人は、6日目をピサングの街で迎えた。すでに標高は3300メートルだ。ネパールに入国した時のトリブバン国際空港が標高1300メートルなので、実際にはわずか2000メートルを登ってきたに過ぎない。
●眠れないそして疲れる日中
それでも数日前からすでに私の身体には変化が起きていた。夜は熟睡ができない。そして日中は疲れやすい、身体がなんとなく浮腫んだ感じがしていた(当時の写真を見るとやはりかなり浮腫んでいた)。
その時は旅の疲れなのだろうと単純に思っていたのだが、これが高山病の始まりだったのである。調べてみると、3000メートル時点では私は普段の2/3~半分くらいの酸素しか身体の中に取り入れていないということだった。人間の身体には酸素が必要だから、酸欠状態では身体のいろいろなところに問題が起こってくる。いつもと同じように呼吸しているつもりでも血液に取り込む酸素の量は極端に減るという。それが高山病だ。
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山をバックに家が立ち並ぶ
この日はなにしろ朝から少し歩いてもだるいので、メンバーの最後尾となってついていく。天気は良いが気温は低く、午前中の休憩に飲んだホットチョコレートの美味しさが今でも忘れられない。
お昼までの2時間ほどはほとんど平たんな道が続くにも関わらず、とにかく前に進めずにかなりきつい。メンバーに迷惑をかけてはと焦る気持ちと身体がついていかないことのジレンマで落ち着かない。
そしてマナン(標高3540メートル)に午後の2時30分にようやく到着。ここで昼食を済ませて自由行動、そして明後日までこの街に滞在する。
●食欲はあまりなくても食べられたのがヌードルスープ
どこでランチを取ってもメニューにお目見えするのがヌードルスープとモモ(ネパール流の餃子)だ。ヌードルスープは、カップラーメンをそのままドンブリにうつした感じ。山の上ではこのように温かくて簡単に食べられる食べ物がとても嬉しい。
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メニューでよく見かけるヌードルスープ
そして昼食後は、とにかく疲れた体を休めたかったので数時間身体を横にした。目を覚ましてダイニングへ行くと、メンバーたちはトランプなどでくつろいでいた。そのうち二人のメンバーはイギリスの救急隊員。ホリデーで参加していたことが私には幸いだった。この日の私の身体の変化をいち早く察知してアドバイスをくれたのである。
●高山病の薬と4リットル以上の水分補給
急性高山病に使われる薬をスタートした方がいいという。それがダイアモックスという薬(15錠/300円)だ。取り込む酸素が少ないことでさぼっている脳の呼吸中枢を刺激してくれるもの。
ネパールでは処方箋がなくても買えるとのことだったので、近くの薬局で購入、彼らのアドバイスで夕食後から半錠ずつ飲むことにしてみた。薬服用中はさらに水分補給が必要とのことでウォーターボトルをいつもそばにおいておくようになった。どのくらいの水分か?登山中は一日2リットル以上の水分補給と言われたが、ダイアモックス服用中は4リットル以上補給と言われ、気が付くといつも飲んでいたという感じだった。
●生まれ育った人間にとっては、住めば都
呼吸は普通にしているはずなのに体内では変化が起きていた私なのだが、ここで生まれて育った人々は普通に呼吸をして普通に生活をしている。
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街では朝早くから子供たちが元気だ
同じ人間なのに、生まれたまたは育った環境というのは人間をその場所に住める身体に変えてしまうということなのだろう。朝から元気に遊んでいる子供たちを見ていると疲れすぎる自分が情けなかったのである。
明日が休息日ということもあり、私だけではなく他のメンバーもこの夜はとてもリラックスした様子だ。高山病で倒れる前に改善に向ける方法を見つけた6日目が終わった。マナン(標高3540メートル)の街で私たちは今日と明日の二晩を過ごす。私はダイアモックスの薬の効果が表れてくれるように祈るような気持ちで深い眠りについた。
(続)