【インタビュー】FMXライダー東野 “TAKA” 貴行&渡辺 “WANKY” 元樹に直撃! | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【インタビュー】FMXライダー東野 “TAKA” 貴行&渡辺 “WANKY” 元樹に直撃!

オピニオン ボイス
『ナイトロ・サーカス』でトリックを披露する東野貴行
  • 『ナイトロ・サーカス』でトリックを披露する東野貴行
  • FMXライダーの東野貴行選手(2017年2月20日)
  • 『ナイトロ・サーカス』東京公演の渡辺元樹(2017年2月20日)
  • FMXライダーの渡辺元樹選手(2017年2月20日)
  • FMXライダーの渡辺元樹選手(左)と東野貴行選手(2017年2月20日)
フリースタイルモトクロス(FMX)の世界で活躍するふたりの日本人ライダー、東野貴行選手と渡辺元樹選手。ともにモンスターエナジー契約ライダーで大阪出身の彼らですが、現在は日本を飛び出し米国を中心に世界でトリック(技)を披露しています。

父親とライディングスクールに立ち寄ったことがきっかけとなり、7歳のときに親子でモトクロスを始めた東野選手は18歳でプロ転向してFMXの世界へ。エクストリームスポーツの祭典として世界中で人気の『X Games(エックスゲームズ)』に参戦する夢を叶えました。

FMXのビデオを観るのが大好きだった渡辺選手は小学校4年生でモトクロスのレースに参戦し、20歳でFMXに活躍の場を広げています。

東京と大阪で2月に開催された米国発のアクション&スポーツエンターテインメント『ナイトロ・サーカス』に出場した両選手にFMXの魅力などを聞いてみました。(聞き手はCYCLE編集部・五味渕秀行)

■Takayuki “TAKA” Higashino

まずは東野選手。陽気な人柄で、X games参戦はその性格が引き寄せたのではないかと思えました。

東野貴行選手

---:モトクロスからFMXにはどのような経緯でチェンジしたのですか?

東野貴行選手(以下、東野):ある日、大阪のホームコースにしている練習場にジャンプ台が置いてありました。試しに飛んでみたらケガ無く飛べたので、そこからです。

1回目に飛んだときから面白くなって、その日のうちに親父に「フリースタイルに行っていいか?」と聞いてみました。親父は「もともとバイクは遊びやから好きにしろ」って感じで(笑)。それでやりだしました。

---:どんな点にFMXの面白さを感じましたか?

東野:僕がFMXを好きになった理由は「目でわかる」からなんですよね。自分の技が増えたらうまくなるって、単純じゃないですか。レースだと誰かと競わないとわからない。練習していても自分の実力が伸びているのか伸びていないのか、はっきりとはわからない。誰かとレースをして初めてポジションがわかります。

フリースタイルの場合は、この技ができた、あの技ができたと、ちょっとずつ目に見えてわかるので楽しくてしょうがないですね。

---:当時、練習で飛んでる様子やトリックの確認はどのようにしていたのでしょう?

東野:ビデオで撮ってくれる人がいなかったのですが、夕陽で自分の影が地面に見えていました。その影を見ながら飛んでいました。今はどれくらいなのかなって。

---:夕陽ですか!現在ならスマホで簡単に動画が撮れますが、10年以上前では無理ですものね。18歳でプロの道を歩みだしましたが、経緯を教えてください。

東野:佐藤英吾さん(故人・FMXライダーの第一人者として国内外で活躍した)と知り合って、日本のショーに呼ばれるようになりました。最初はバイトをしながらやっていました。


---:そこからX games参戦までの道のりは?

東野:知り合いのお葬式で10年振りくらいに会った方からサポートの話をいただきました。アメリカに渡るために必要な「金額を出せ」と言われて、大体の予算を出したら「これは多い。メシ代が多い」など色々と切り詰められた予算になりました。

でも「そのお金を持って、行けるのなら行け。怖くてビビってるのなら日本にいてもいい」と言われ、もし行くのなら日本のクルマも彼女も切って、保険もケータイも解約して、日本の(契約している)イベントも無くして、そこまでして行くのなら行ってこいって。(日本に未練など残さないで)帰って来れない状態にして、全部捨てて、日本に来ても何もないんやって…。そこがかなり緊張しました。

---:体ひとつでアメリカの地を踏んだのですね。X gamesの夢はいつ叶ったのですか?

東野:その年(2007年)なんです。ヤバいですよね。最初の3カ月、節約しながら練習場所を探して、有名な選手が集まる所へ行きました。そこで適当な英単語とジェスチャーで「乗らせてくれ」と頼んで、テンションが上がって風が強いのに技を出して脳しんとうを起こしたりしていました。

そういうのが始まりで、ちょっとずつコネクションを作っていきました。ある日、渡米の2年前、2005年の大阪の大会に来ていたジェレミー・ステンバーグ選手(通称トゥイッチ)と再会しました。一番好きだった海外の選手で、神様みたいな存在です。「お前の技カッコいいよ」と言われて、電話番号を聞かれて。

そこからアメリカに滞在するにはどうしたらいいか考えるようになり、ビザを取るしかないので弁護士とやりとりしてバイクと両立して、観光ビザが切れる3カ月までに書類を全部作って、日本に10日間だけ帰って、その間にアメリカ大使館でビザを取りました。その後、戻ってからトゥイッチの家に3年間ステイさせてもらいました。最初は寝れなかったです、僕のヒーローの豪邸ですから。

家に泊まりながら練習していたら、トゥイッチが「俺についてるスポンサーを紹介する」と言ってくれて、一緒にDew Tour(デューツアー)という大きなツアーに参加するようにもなりました。その2戦目でいきなり2位になれてビビっていたら、X gamesに招待されて、出たら本番中に鎖骨骨折しました(笑)。

---:え?夢が叶ったのに、それは大変でしたね…。でも、そのあとは順風満帆ですか?

東野:いや、波があって…。これまで9年連続で(X gamesに)招待されて、10年連続を狙っていますが結果は上がったり下がったりです。


---:大会に出るようになって、気をつけていることはありますか?

東野:100%は出さないようにする。80%ぐらいで上位で戦えるようにする。100でやっていたらケガが多いんですよね。だから80でいけるように練習しています。

---:だいぶ高い位置までジャンプしますが、飛ぶ前に恐怖心はありますか?

東野:あります。その技によって、これ絶対ミスったら危ないとか、ちょっとのことで調子が悪くなったりします。ハマった技も恐怖心はあって、ほんの一瞬ミスをしたらケガをする。常に緊張感もありますね。

---:東野選手にとってFMXの魅力は何ですか?

東野:できなかったことができる達成感ですね。がんばったら自分ではありえへんと思っていたことができる。恐怖心に勝てるのが楽しいです。スカッとします。夢を叶えることだけに集中して、夢は叶ったので、だから次の夢は何かなぁって(笑)。叶うと思っていなかったので、今は楽しんで乗っています。

■Genki “WANKY” Watanabe

続いて渡辺選手。2010年にモトクロスからFMXに転向し、2016年にGO BIG(全日本フリースタイルモトクロス選手権)から派生したFMX歴10年以下の国内外ライダーによる『GO BIG CHALLENGE CUP』で日本人最高の2位に入るなど注目を集めています。

渡辺元樹選手

---:渡辺選手はいつ頃からFMXで活動されているのですか?

渡辺元樹選手(以下、渡辺):レースも好きなのですが、フリースタイルがカッコいいと思っていました。東野さんは僕が小学校4年生のころから知っている先輩です。先にフリースタイルを始めてショーにも出て、「お前もやれよ。こっち(米国)に来いよ」と言ってくれていました。そろそろ行こうと思ったのが20歳のときでした。

---:FMXではどんなことに気をつけていますか?

渡辺:技を大きく出すことを考えながら飛んでいます。でも、それがなかなか出ないこともある。僕は周りのテンションに左右されるというか、ショーのときの方が技も大きく出ることがあります。それをいかに練習で出せるかを心がけています。

---:ジャンプする前に恐怖心はあるのでしょうか?

渡辺:あります。(空中で)一回転するときは緊張するんですけど、まずそれを克服します。次は一回転しながら両足や手を外して、恐怖心はあるけど恐怖心に勝てるように練習しています。


---:飛ぶときは何を考えていますか?

渡辺:成功しろ~しか考えてないですね(笑)。やっているときは体が勝手に動くので何も考えてない。飛ぶ前にこの技をしたいと思ってランプ(ジャンプ台)に向かって、飛んだら後は体が勝手に動きます。


---:渡辺選手にとってFMXの面白さは何でしょうか?

渡辺:自由に体を動かして空中を飛べる所ですね。鳥のようにじゃないですけど、好きに何も考えずに、一回転したかったら一回転したらいいし、風のときも雨のときも飛びたかったら飛べばいい。何かやれと誰にも言われないので、自分の好きなように空中ですればいいので、バイクに乗っているときは自由になれるのが好きです。

---:今後の目標や、こういう技やりたいなどあったら教えてください。

渡辺:技はやりたい技ばっかりで、どれからやったらいいかわからないですけど(笑)。とりあえず自分がやりたいと思ったものを克服してから、ショーではなくて、海外のコンテストに招待されるライダーになるのが今の目標ですね。

渡辺元樹選手(左)と東野貴行選手

●東野貴行(ひがしの たかゆき)
1985年3月13日生まれ、大阪府出身。2007年Xゲームズ初参戦。2012年X gamesロサンゼルス大会で日本人初の金メダルを獲得。これまでに金3個、銀1個、銅1個を手に入れ、TAKAの愛称で人気を博す。2013年に地元大阪開催の世界ツアーX-Fightersで日本人初優勝。

●渡辺元樹(わたなべ げんき)
1989年8月3日生まれ、大阪府出身。2015年X gamesオースティン大会で日本人として初めて「スピード&スタイル」競技に参戦する。同年GO BIG年間ランンキング2位。2016年GO BIG CHALLENGE CUPで日本人最高の2位。
《五味渕秀行》

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