まずは、スタートダッシュにつまずきながらも、怒涛の11連勝で「クリスマス首位」を確定させたチェルシー。
チェルシーのセントラル・ミッドフィールドの中心になっているのは、昨シーズンプレミアリーグに移籍し奇跡の優勝を遂げたレスター・シティの元メンバーである、エンゴロ・カンテだ。
カンテの獲得により、盤石のセントラル・ミッドフィールドのユニットが形成されるだろうと思われた。しかし、シーズン当初の評価は5段階評価で「3」といまひとつ。主な理由は、縦横無尽に動き、ボール奪取に長けるカンテのベストパートナーを決めかね、チームバランスを失いリバプール、アーセナルに連敗したことが大きいだろう。
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しかし、その直後からシステムを変更。ネマニャ・マティッチをメインパートナーに、オスカル、セスク・ファブレガスが交互にプレーし、フレッシュな選手のターンオーバーでクラブレコードとなる11連勝を達成した。それでもまだ、コンテ監督によるカンテの相棒探しは続くだろう。ひょっとしたら、1月に新たに選手獲得に動くかもしれない。
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次に、5段階評価で「5」の評価を獲得した2チームに注目しよう。
まずは、アーセナル。昨シーズン、プレミアリーグ最多アシストのタイ記録を打ち立てたメスト・エジルを筆頭に、セントラル・ミッドフィールドをコントロールするサンティ・カソルラ、アーロン・ラムジーに、ボール奪取に長けるフランシス・コクランとモハメド・エルネニー。
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そして、今シーズン加入した、ロングパス・シュートの精度の高いグラニド・ジャカと、多彩な中盤の組み合わせを可能としたアーセナルのセントラル・ミッドフィールドの陣容は非常に魅力的だ。

多くのゲームを彼らがコントロールし結果を手にしているが、アーセナルのキーマンであるサンティ・カソルラの長期離脱が、早くも影響を及ぼし始めているのかもしれない。現に、首位チェルシー追走の大一番となったマンチェスター・シティ戦では、中盤がほとんど機能しなかった。これで2連敗喫し、首位争いからやや後退したアーセナル。ベンゲル監督も1月の移籍市場で新な動きを見せるかもしれない。
そして、もう1つの最高チームは、グアルディオラ監督率いる新生マンチェスター・シティ。
まずは、セントラル・ミッドフィールドのキーパーソンのフェルナンジーニョ。そして、新加入のイルカイ・ギュンドアン。長短自在のパスで攻撃のリズムを作り出すギュンドアンは、ドルトムントで香川真司とチームメートだったことでもお馴染みの選手だ。
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そこに、攻撃力のあるケビン・デ・ブルイネ、ダビド・シルバを加えた攻撃陣は文句のつけようがない。また、監督との確執問題が解決したヤヤ・トゥーレ、イングランド代表のファビアン・デルフに、守備的なフェルナンドと続く選手層を見れば、トップ評価もうなずける。
荒れたチェルシーとの首位決戦で、代えのきかないフェルナンジーニョが、3試合の出場停止を受けたのは今後に大きな問題を生みそうだ。それでも、不在を感じさせない試合運びが可能な陣容は揃っていると言えるだろう。
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次は、近年マンチェスターの覇権をシティに譲ってしまっている、マンチェスター・ユナイテッド。この夏、サッカー界1番の話題となったポール・ボクバの帰還は、事実、多くのサッカーファンが期待していたことだろう。
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ポグバを中心として縦横無尽に動くアンドレ・ヘレナ、中盤を落ち着かせるマイケル・キャリック、悪質なプレーがやや目立つがモウリーニョ監督が好む長身のマルアン・フェライニ、守備的なモルガン。
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そして、モウリーニョに戦力外とされているとは言え、 バスティアン・シュヴァインシュタイガーまで控えている。さらに、攻撃的なフアン・マタとウェイン・ルーニーを加えることも可能だ。
やや年齢層は高めだが、プレミアリーグを勝ち抜く戦力は十分と判断され、5段階評価で「4」の評価を得ている。11月までは選手の組み合わせが決まらず、安定に欠き、ファーガソン監督退任以来最低の勝ち点数だった。12月に入り、ポクバ、ヘレナ、キャリックの3人に固定してからは3連勝。新しいユニットが機能し始めたマンチェスター・ユナイテッドの、今後の巻き返し劇に期待したい。
マンチェスター・ユナイテッドと同評価を得たのが、リバプール。名門復活へ向け、昨シーズン途中にクロップ監督を招聘し、変貌を遂げつつある。
ドイツ代表のエレム・ジャンは、ユーティリティーの高さから中盤ならどこでもプレーできることで、便利屋的な扱いが移籍当初は多かったが、クロップ監督の就任とともに、リバプールにとって欠かせない中盤底の選手として存在感を増している。
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そして、キャプテンのイングランド代表ジョーダン・ヘンダーソン。シーズン当初ジャンの不在時に中盤の底でプレーしたことで、自身のプレーの幅を広げたことはチームにとっても好材料である。何よりも、ヘンダーソンから繰り出されるロングパスは、今のリバプールの大きな武器とも言える。
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また、今シーズン加入してきた即戦力のジョルジニオ・ワイナルドゥムと、成長著しいイングランド代表のアダム・ララーナが加わることにより、プレミア・リーグ1、2位を争うセントラル・ミッドフィールドの選手層になり得るだろう。
昨シーズン、レスター・シティ奇跡の優勝の陰に隠れてしまったトッテナム。レスター・シティの優勝がなければ、トッテナムが最もサプライズを起こしたチームとして評価されていただろう。
チャンピオンズ・リーグへの参加を決めたトッテナムは、ポチェッティーノ監督が前監督をしていたサウサンプトンから、パワーと守備力に定評があるビクター・ワニアマを補強し、中盤に安定を求めた。
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そして、昨シーズンの躍進を支えた守備のムサ・デンベレとセンターバックもこなすエリック・ダイアー。攻撃のタクトを振るうクリスティアン・エリクセンと、ポール・ガスコインの再来と呼び声も高い弱冠20歳のイングランド代表デレ・アリ。
また、夏のユーロでフランスの躍進を支えた攻撃的なムサ・シソコを補強したが、5段階評価で「3」と評価は今ひとつ。補強の少なさ、選手層の薄さが評価に表れたのかもしれない。
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結果、チャンピオンズ・リーグでは、プレミア勢で唯一16強進出を逃した。プレミアリーグでは昨シーズンから続く好調を維持しているが、果たして今シーズンもベスト4で終わることができるかは未知数だ。
多くのトップクラスの才能が凌ぎを削る、プレミアリーグ。毎年のように現れる若手の台頭。リーグの一番の魅力は、やはり戦力の均衡から生み出される、毎回予想がつきにくい試合の数々だろう。
そして、その試合のタクトを握るのがセントラル・ミッドフィールドの選手たちかもしれない。華やかなゴールシーンやゴール前のセーブといった攻防に目が行きがちだが、その前にある中盤のクリエーションにも目を向けることで、より試合を楽しめるようになるだろう。