講師を務めたのは写真家の山口規子さん。「撮影テクニックの幅が広い」ことが選出された理由のひとつ。その引き出しの多さは、さまざまな撮影方法が求められる「旅」の写真によって磨かれたのだという。
浅草フォトツアーでは「日本の伝統的な食と芸」をテーマに、料亭でのテーブルフォトや、芸者舞、大太鼓演奏などの幅広い撮影プログラムが提供された。
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写真家の山口規子さん
参加者は抽選で選ばれた15名の女性。関西など遠方よりはるばる上京した人も多くいた。最初にフォトツアー一行が向かったのは和食店「茶寮一松」。懐石料理のテーブルフォトで参加者たちは料理の並べ替えなどを行いながら、思い思いの角度からシャッターを切り続けた。
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参加者はカメラ初心者から上級者まで人それぞれだが、山口さんはレベルに合わせて丁寧にレクチャーを行っていた。「今のカメラはすごいので、すべてオートモードにしていてもかなり綺麗な写真が撮れてしまいます」と山口さんは苦笑い。
「この日はオートモード禁止です!フォトツアーにならないので(笑)。何かひとつでも身につけて帰ってください」と参加者に声をかけた。
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テーブルフォトの際に山口さんがオススメしたのは、絞りをカメラが優先してくれる「Aモード」だ。
被写体深度(ピントを合わせた部分の前後のピントが合っているように見える範囲のこと)を浅くするべく、F値と呼ばれるレンズの絞り値を5.6程度にするようアドバイス。この設定にすると一部分を強調させることができる。逆に、全体をはっきり撮りたかったらF値を上げる。
光を感じる感度の良さを数値化したISO感度の値は、「400~1600の間で調整しましょう。手ぶれが怖かったら3200で!」と指定した。
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「料理全体を撮るのではなく、ポイントを自分が強調したいところに合わせて、思い切って他の料理は切っちゃってもいいですからね!」
料理本も複数出版している山口さんが、料理撮影で意識すべき点を教えてくれた。
・縦位置で撮るか、横位置で撮るか
・寄りで撮るか、引きで撮るか
・被写体の向き
・カメラアングルは高い位置から撮るのか、低い位置から撮るのか
・被写体深度(ピントの深さ)
・手ぶれ、露出に注意する
色々な角度から少しずつ設定を変えてシャッターを切る。
料理を撮影した後は、芸者さんを撮影。かなりの速さで舞う芸者さんたちを写真に収めるべく、今回は撮影モードを「Sモード」にするよう指示。1/250秒か、1/500秒に設定するようアドバイスした。
この場合に意識するのはISO感度の値。シャッタースピードが速すぎるとカメラに光が集まらず写真が暗くなってしまうため、ISO感度の値を高くする。山口さんは3200~12800の間で設定するよう参加者に教える。
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フォトツアー参加者にはすべてを自分で設定する「マニュアルモード」を使いこなす参加者もいたが、山口さんが想定していたのは一眼レフカメラ中級者だったようだ。
オートモードやプログラムモードでの撮影は慣れているけれど、マニュアルモードは少し敷居が高い…といったようなレベル。もちろん一人ひとりにより詳しく具体的なアドバイスを与えていたが、全体に統一して教えていたのは2点。
・動きの少ないものを被写体とする時は、絞りを優先する「Aモード」で撮影。被写体深度を意識して、F値を調整する
・動きが早いものを撮影する時は、シャッタースピードを優先する「Sモード」で撮影。シャッタースピードを高く設定した際は、ISO感度を高めに設定する
この内容を教えた後、山口さんは参加者たちの工夫に期待し、サポート役にまわっていた。
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次は芸者さんのポートレート撮影だ。「光がどちらの方向から来ているか確認しつつ、被写体の人と会話をして親睦を深めましょう!」と山口さん。
参加者は芸者さんに、「いいですね~、綺麗ですよ~」など言葉をかけていた。いかに芸者さんの魅力を言葉で、ポーズで、表情で引き出すか。カメラマンの腕が問われる。
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ポートレートで人物の頭を切るような撮り方は本来ご法度とされる。しかし、山口さんはあえて頭を切って撮影することがあるという。目に意識を集中させるためだ。
撮り手の意図を、どう写真を見る人に伝えるか。写真は奥が深い…。
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続いて桐たんすの製造などを手がける「箱長」で“木目込み”の作業を撮影。箱長で考案され、現在もこの場所のみで行われている技術だという。数十種類の彫刻刀を使い図案を彫り、和紙で裏打ちした正絹の着物地を木目込んで工芸品を作りあげる。
熟練の技が最も投影されるのは、職人の「手」だ。この手をいかにしてカメラに収めるか。参加者たちはさまざまな角度から、設定を変えて無言でシャッターを切り続けた。
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続いてはTAIKO-LABによる和太鼓の演奏を撮影。「3歳~80歳以上まで、老若男女誰でも習える世界最大の和太鼓教室」というのがウリの和太鼓団体だ。太鼓を力強く、かつ凄まじいスピードで撃ち鳴らす演奏者に圧倒されながらも、その場の熱量もカメラに収めるべく連写した。
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ツアーが終わる頃にはすっかり参加者たちは仲良くなっていた。「カメラ」という共通の趣味を持ち、1日その趣味を通してともに活動した仲間だ。仲良くならない方が不思議なのかもしれない。
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山口さんはツアーをこう振り返った。
「写真に熱心な方が多く、私自身も楽しめました。みなさんが撮影した写真を見て、『この人はこう言うことを言いたかったんだな』というのを感じることはとても勉強になりました」