【THE SPIKE】秋山翔吾、謙虚に刀を研ぎ澄まし「世界一の切込み隊長」へ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE SPIKE】秋山翔吾、謙虚に刀を研ぎ澄まし「世界一の切込み隊長」へ

オピニオン コラム

秋山翔吾 参考画像(c)Getty Images
  • 秋山翔吾 参考画像(c)Getty Images
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2015年、シーズン最多安打のプロ野球記録を更新した埼玉西武ライオンズの秋山翔吾外野手。新時代の安打製造機の称号を手にした今、最も注目されている打者の一人と言っても過言ではないだろう。2016年はどのような進化を見せてくれるのか、非常に楽しみである。

■打撃フォーム改造で123本から216本へ

秋山が2014年に放ったヒットは123本(打率.259)。2015年は216本(打率.359)へ激増した。プロ入り4年間で1度も3割をマークしていなかった男が、昨年突如として大ブレイクを果たした。秋山は、それまでバットを真っ直ぐに立てて振り下ろすような打撃フォームだったが、2014年の不振にあえいでいる期間に打撃フォームを改造。バットを寝かせて水平に運ぶスタイルへモデルチェンジした。

これが功を奏したのか、2015年はシーズン序盤から驚異的なペースでヒットを量産。63試合の時点で100安打に到達するとともに、イチロー以来、プロ野球史上2人目となる2ヶ月連続の月間40安打も達成した。また、歴代3位となる31試合連続安打(左打者としては歴代1位)も記録するなど、秋山のバットには連日のように注目が集まった。この秋山の打撃の開花について、元祖・安打製造機の張本勲氏は、「選手それぞれに合った打撃フォームというものがある。秋山は5年目でそれを見つけたということ。大したもの」と称賛していた。

■三塁打は12球団一

秋山は2015年、12球団を通じて最も多くの三塁打(10本)を放った。50m5秒9、一塁到達3.88秒の俊足を生かし、ダイヤモンドを駆け抜けた。例えば、イチローが当時史上初の200本安打を放った年の記録を見ると、三塁打は5本であり秋山の半分である。ちなみに、イチローは内野安打が33本と圧倒的に多い(秋山の内野安打は18本)。三塁打が多い理由として、秋山の打球の速さが挙げられる。球足の速い打球が外野の間を深く抜けていくことも多く、必然的に三塁打のチャンスが多くなる。その点では、イチローとは違った意味で見応えのある打者だと言える。



(c)Getty images


■周囲から称賛される謙虚さ

シーズン最多安打という派手な記録を打ち立てた一方で、人間・秋山は非常に謙虚さが際立つ。例えば、昨秋に行われた「世界野球WBSCプレミア12」では、全試合でトップバッターという大役を務めた。3位決定戦となったメキシコ戦では、コールド勝ちを決めるサヨナラ2点本塁打を右翼席に運ぶなど、侍ジャパンの切込み隊長として、まずまずの働きを見せた。

それにも関わらず、「自分は侍ジャパンの常連ではない。また呼ばれるように頑張りたい」と謙虚に語る。また、シーズンで好結果を出せた理由に、同僚であり後輩である森友哉捕手の名を挙げる。「彼は凄い。バットを思いきり振れるし、結果を出せたことは彼の打撃を参考にしたおかげ」と話す。歴史に残る大記録を達成した選手が、公共の面前で後輩のすごさを素直に認めることは、なかなかできることではないだろう。また、シーズン最多安打を達成以降、イチローとよく比較されるという。それでも、「何年も結果を残している選手ではないので…」「今年ダメなら、やっぱりダメなのかってことになるし、そういう意味では今年が大事」と語り、決して浮ついた様子は見られない。



(c)Getty images



オフには、自身が在籍した地元・横須賀の少年野球チーム・湘南武山フェニックスの練習に必ず顔を出すという。同チームの監督は秋山について、「毎年顔を出してくれる。彼は本当に謙虚な人間」と評しているという。


■ひとり親の子供たちのために、ヒットを量産


秋山は2015年から西武プリンスドームへの招待など、ひとり親家庭への支援活動を始めた。小学6年生の時に父親をがんのために亡くしており、母親が女手一つで3人の子供を育てた。そんな母親の懸命な姿が胸の奥に焼き付いているのだろう。

ひとり親家庭の子供たちとそうでない子供たちとの間には、大きな経済格差が生まれていて、ひとり親家庭の子供たちは、それだけハンディを背負っている。それを痛いほど理解している秋山は、球場に招待した子供たちに丁寧に声をかけ、子供たちに夢を与えるためにヒットを量産している。

■目指すは「世界一の切込み隊長」

プレミア12では、トップバッターとして全試合に先発出場を果たした秋山。大会の通算打率は.257。その実力を考えれば、ファンも秋山本人も、もっとやれたはず…という思いはあったはず。国際大会ではシーズンと違い、相対するのは初対戦の投手がほとんどを占める。「初めて対戦する投手に対して、対応力が足りなかった」と、大会後に悔しさをもらしていた。

己に新たなる課題を突き付け、打撃の真髄をさらに追求していく今シーズン。来年3月には、第4回ワールド・ベースボール・クラシックが控えている。世界一奪還に向けて、侍ジャパンの「切込み隊長」にかかる期待ははかり知れない。決戦の時を見据え、謙虚な安打製造機は着々と刀を研ぎ澄ましていく。
《浜田哲男》

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