以降、2015年9月に行われたアンセルモ・モレノ戦まで9回の防衛に成功する。左腕から繰り出すパンチは"神の左"と呼ばれている。
山中選手にボクシングを始めたきっかけ、トレーニング、競技の魅力、3月4日に行われる10回目の防衛戦などについて話を聞いた。
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第29代WBC世界バンタム級チャンピオン 山中慎介選手
---:山中選手は中学生までは野球をやっていて、高校生からボクシングを始めました。きっかけはなんですか?
山中慎介選手(以下、敬称略):中学2年くらいからボクシングに興味があって。色々なことが重なっていたのですけど、一番の影響はテレビで観たボクシング。あの強さ、カッコ良さ。あと世界チャンピオンのベルトに憧れて、ですね。
---:当時、憧れていた選手はいますか?
山中:その頃(世界チャンピオンの)ベルトを着けていたのは辰吉(丈一郎)さん。ほかに畑山(隆則)さんにも憧れていましたし、海外の世界チャンピオンの選手たちもWOWOWなどで観ていました。
---:高校生になったら即決でボクシング部だったのですか?
山中:そうですね。中学の時も興味はあったのですが、田舎でボクシングをできる環境が近くになかった。どうしても高校からスタートを切る形になりました。
ボクシング雑誌を見ていたら、京都の高校(南京都高校)が団体で日本一と書いてあった。その高校に行けるか先生に聞いて、見学に行かせてもらって、それでそこに決めました。
---:ボクシングを始めて、最初は右利きだったそうですね。
山中:野球が右投げ右打ちだったので、肩にはまあまあ自信があった。ボクシングも最初右でやっていたんですけど、当時のボクシング部の監督さん(故・武元前川氏)に左利きに変えられました。
(入部して間もなく)バランスの良さもあったと思うんですけど、急に変えられた。でも自分は野球をやってたし、右の方が自信があったので、また変えられた次の日に、翌日にまた右に戻して練習してたりして。
(監督から)「なんで右やねん?」みたいな話になって(笑)。色々やりとりがあったんですけど、結局何回か練習を重ねて、自分が折れた形で左に変えたんですけど、もともと左も良かった。鉛筆も左ですし、左利きなんですよ、もともと。
おハシも左だったんですけど小さい頃に(右利きに)変えられて。おハシは直ったんですけど、ヒジは直らなかったらしくて左になったんです。
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---:字を書くのは今も左ですか?
山中:そうです。サッカーとかやる時も左ですし。なので、左に変えられた瞬間から左ストレートはスムーズに打てました。
---:どれくらいで左で打つことに慣れましたか?先ほど翌日は右に戻っていたと話していましたが。
山中:すぐですよ。もともと左の要素がありましたし。中学時代はもちろんボクシングをやってないんですけど、自分でボクシング雑誌の裏のページでサンドバッグとか販売されているじゃないですか。
それを自宅に買って倉庫に吊るして我流で、友だち呼んで遊びながらやっていたんですよね。そんな時も左で打てましたし、そういった影響で(高校に)入学してからもすぐに問題なく、違和感なく左を打ち込めるようにはなっていましたね。
---:ボクシングの試合は年に2、3回。トレーニングが中心の生活になりますが、トレーニングでこころがけていることはありますか?
山中:全体のバランスというのは常に意識してます。バランスがよくなければパンチは打てないし、そういったところは世界チャンピオンになってから防衛を重ねてさらに意識するようになりました。あと左ストレートを中心に、ワンツー主体のストレートは必ず練習するようにしています。錆びないように。
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