日本科学未来館で開催されたデジタルコンテンツEXPO 2015で10月23日、研究者や起業家たちによる「スポーツを変えるコンテンツ技術の可能性」をテーマにしたシンポジウムが実施された。評論家で「PLANETS」編集長の宇野常寛氏によるプレゼンを紹介する。
スポーツは「嫌い」と一刀両断する宇野氏。独特の話しぶりとユーモアによって会場の温度を上昇させた。
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・まず「近代スポーツ」の(人間観)の「狭さ」を認めよう
・その上で「もっと多様な人間が乗っかれるスポーツ」を再発明する(近代スポーツは別に"あって"いい)
「ロサンゼルスオリンピック以降、グローバルコンテンツとして発展したオリンピック。僕、聖書などを除いたら人類のグローバルコンテンツはふたつしかないと思っていて、それはワールドカップやオリンピックのような国際的なスポーツゲームとハリウッド映画です」
「特にスポーツは3次元、リアルのものなので、人間観の狭さは致命的なものとなってしまいます。ですから、多様な人間観を擁するスポーツを再発明すべきだと思うんです。いろいろな身体をもった人間が共感できるスポーツが必要ということです」
・近代スポーツは「ひとつの理想の身体にいかに近いか」を競うゲーム(例外あり)
→エンタメは「多様性」が武器
「アメリカンフットボールなどさまざまな肉体、長所をもった人間が集まらないと逆に勝てないようなゲーム、アメフト的な例外はすごく大事だと思います。そういった多様性を特色とするエンタメの要素を取り込んでいくことが欠かせない」
・もうお客さんは見ているだけじゃ満足しない(スポーツ選手がスターになる=「映像の20世紀」の現象)
「そもそもスポーツ選手がグローバルなスターになっていったのは、映像、はっきりいってテレビがあったからです。実はスポーツがもっている感動は、映像が王様であった20世紀の映像文化に規定されている、ということに我々はもう少し敏感であるべきではないのかな、と思います」
「3次元が、2次元に近づくほど許容できる体は多様になっていきます。近代スポーツは、ボードゲームやトランプなどの2次元のゲームをいかに3次元で行うか。そういったものですが、ここからは逆にスポーツの2次元化が求められてくると思うんです。3次元が力を持ちすぎているので、それを少し戻していこうという感覚です。スゴいやつが一方的に活躍するのではなく、『みんながどう参加する』という点をテクノロジーの力でサポートすることが求められるのです」
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「エンタメのロジックで近代スポーツをアップデートすることのできる社会的要請と技術的背景がそろい始めている」。その現代で生まれていくのが、超人スポーツ協会らが先導してスポーツを『再発明』していく超人スポーツだと示唆する宇野氏。
2020年までに東京オリンピックと同時開催でテクノスポーツオリンピックを開催していく気概の同協会の今後が期待される。
スポーツとは何か。身近すぎて定義することを忘れていた存在だったのかもしれない。今後、さらにテクノロジー、文化が融合しスポーツそのものが再定義されていく中で、我々がとらえるスポーツの概念は少しずつ拡張していくだろう。
●PLANETS編集長が語る
その1 スポーツは、苦手・ウザい・興味ない…どう解決する?
その2 自分がハマれるものと、スポーツの違いを考えてみる
その3 お客さんは見ているだけじゃ満足しない
《編集部》
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