【小さな山旅】沼ノ平にて「宇宙」を見る…福島県・安達太良山(2) | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【小さな山旅】沼ノ平にて「宇宙」を見る…福島県・安達太良山(2)

オピニオン コラム
沼ノ平。絶景の一言。
  • 沼ノ平。絶景の一言。
  • 薬師岳を過ぎたあたりで、ロープウェー組と合流。
  • しばらく歩くと、展望が開ける。
  • 安達太良山頂が見えてくる。
  • 山頂付近から見た和尚山。
  • 山頂は混雑気味。
  • 山頂から真下を見下ろす。
  • 山頂にて。写真左側には磐梯山の姿も。
以前、仕事で福島県に滞在したことがある。
その際に、地元の方に安達太良山はどこかと訪ねた。

「ほら、あの山だよ。ぽちっとした突起があるだろ? あれが安達太良山」

そう言って地元の方が指さした方向には、一塊の山々があった。その塊の一つに、確かに突起がある山が見える。仕事など放り投げて、今すぐにでも登りに行きたくなったが、さすがにそれはいい歳をした大人がやることではないと思い、我慢をした。

それからというものの、仕事で福島県に来て安達太良山を眺める度に、いつかこの山を登ろうと思うようになる。そうして、数ヶ月後、ついにその機会がやってきた。

◆行列登山

薬師岳から「ほんとの空」を眺めた後、安達太良山頂に向けて歩を進める。途中、ロープウェーに乗ってきた人々と合流し、行列登山が始まった。メジャーな山を歩いた経験が少ないので、他人のペースに合わせて歩くことに疲れを感じる。

だが、平坦な道から傾斜のきつい登りとなると、ひとりふたりと脱落者が続出し、形成されていた行列は次第にまばらになっていった。
登山者の数が少なくなり、これは歩きやすくなったと思うどころか、筆者もまんまと脱落者の仲間入りをすることになる。

「山頂はまだかまだか」と駄々をこねながら登っているうちに、周囲の木々が低くなっていることに気づく。視界は広がり、安達太良山の頂きが間近に見えてきた。

◆圧巻の風景

「うおっ」と思わず立ち止まる。

遠くから見た安達太良山の突起は、それこそ小さなぽっちであったが、近くで見るとかなりの迫力があった。突起は大きな岩の集合体で、その上に立つと磐梯山やら他の福島県の山々が見渡せた。

遠く街のあたりをじっくりと眺める。恐らく、仕事をしていた場所はあの辺かなと思うと、感動もひとしおである。いや、感動したのは山頂だけにあらず。山頂から鉄山に続く稜線からの景色は、恐怖心すら抱くほどの眺めである。

特に、牛の背から見る沼ノ平と呼ばれる火口は圧巻であった。火口付近は雪のように白く染まり、そこだけポッカリと湖でもあるかのように平らになっている。その周囲を茶色の勇ましい山々が囲み、囲いの先に流れる一筋の水の流れ(硫黄川だ)。

この光景を初めて見て、「きれいだね」などという平坦な感動を示す言葉は出ないだろう。恐らく、多くの人が言葉を失うに違いない。かくいう筆者も、「うわぁ」という感嘆詞が口から出たが最後、見事に言葉を失って、ただ黙ってその景色を眺めていた。

「宇宙だね」
一緒に安達太良山を登った友人がぽつりと言葉をこぼした。宇宙か、その通りだ。沼ノ平には、宇宙が広がっているのだ。
《久米成佳》

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