「ダイヤのA」the LIVE 、高校球児たちの熱い群像劇に感涙 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

「ダイヤのA」the LIVE 、高校球児たちの熱い群像劇に感涙

エンタメ 出版・映像
(C)寺嶋裕二・講談社/「ダイヤの A」The LIVE 製作委員会
  • (C)寺嶋裕二・講談社/「ダイヤの A」The LIVE 製作委員会
  • (C)寺島裕二/講談社
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高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 第134回
[取材・構成: 高浩美]

■「役者、音楽、照明、映像・・・関わる全てのセクション各々の最大限の努力で演劇ならでは表現、ライヴ感を作り上げたい」(下浦貴敬)

大人気野球マンガ『ダイヤのA』が初の舞台化となる。野球マンガの舞台化は遡ること、1969年、実はあの『巨人の星』が舞台化されている。それから、野球マンガは全く舞台化されていなかったのである。そして21世紀に入り、この『ダイヤのA』が舞台化、実に46年ぶりとなる。
今回描かれるストーリーは単行本では5巻までとなる。今回の舞台化にあたってプロデューサーの下浦貴敬は「正直、『巨人の星』はお伺いするまで知らなかったんですが、漫画、アニメ原作の舞台化作品がこれだけ多発している中、この作品をプロデュースするにあたり、原作を読み、アニメを見て、『ダイヤのA』の何がこれだけの人々の心を惹き付けるのか。自分なりに考えて、思ったのがファンタジーの世界観の中にある、登場人物のリアルな感情。そして、これは舞台化するにあたってもひとつの柱として演出の浅沼さんとも相談してきました。浅沼さんは顔合わせで”本物であること。”を追求して作品を作り上げていきたいとおっしゃってくれました。それはキャスト、スタッフに対してのひとつの大きな矢印を示してくれたんだと思います。もちろん、野球の試合を舞台でそのまま行なうことはできないし、やらないのですが、役者、音楽、照明、映像・・・関わる全てのセクション各々の最大限の努力で演劇ならでは表現、ライヴ感を作り上げたいと思っています。そのライブ感こそが今回の『ダイヤのA』The LIVE の魅力としてなっていければと思っています」とコメントを寄せてくれた。

『ダイヤのA』の魅力はなんといっても登場するキャラクター達。優等生はいない。皆、欠点だらけである。個性も生い立ちもばらばらな少年たちが1つの目標に向かって進んでいく。
感情豊かで単純で素直な主人公・沢村栄純。野球が大好きな気持ちは人一倍だ。クールに無愛想に見えるが内にマグマのような闘志を燃やす降谷暁やアグレッシヴで頼りになる御幸一也等、チームメイトも個性的だ。そんな彼らが紡ぎだす物語に心動かされるのである。

■ 登場人物の関係性、内面をきっちりと描いており、大事なことに気づかされる

舞台上は何もないに等しい。幕開きは野球の試合開始の、あのサイレンの音だ。青道のメンバーが登場し、”俺たち、青道!”と連呼、それからオープニング、主題歌にのってアニメさながらにタイトルロールやキャラクターが映し出される。ここで早くもテンションがアップ、沢村が青道に入部する下りから始まる。さっそくの遅刻、原作通りに物語は流れていく。
タメ口な上に、かなりのビッグマウスな沢村、先輩たちからは”なんだ、あいつ~”的な目で見られるも一向に気にしない。原作・アニメから抜け出たような沢村を小澤廉が元気よく演じる。ガハハ笑いは、もう沢村そのものだ。

物語は沢村が青道の野球部に入り、練習試合を経て一軍入りするところまでだ。全体から見ると、ほんの出だしの部分だけである。だからこそ、登場人物の関係性、内面をきっちりと描ける。エピソードはほとんどはしょられていない。些細なエピソード、プリンを食べてしまった下りまで描かれているので、ここはファン的には嬉しいポイントであろう。
原作同様に沢村中心に進行するが、サブキャラもしっかりと描いているので群像劇の要素もある。皆、それぞれの想いがある。その心のひだまでに入り込む演出、とりわけ、滝川・クリス・優のエピソードは泣かせる。将来を嘱望されながら、故障のために本来の力を発揮出来なかったもどかしさを内に秘め、沢村をサポートする。そんな想いに気づく沢村は滝川の期待に応えようと奮闘する。滝川もまた、沢村の一途な姿勢に触発される。その関係や姿勢は清々しく、ふと忘れかけていた大事なものに気づかされる。滝川の心の機微を汐崎アイルが好演する。そして一軍入りのメンバーの発表、”選ばれた者は選ばれなかった者の分まで戦う”、それは現実でも同じことだ。

ビジュアル的には”野球をどうやって表現するのか”に関心が集中するが、ここは1つのパターンのみでの表現ではない。映像・効果音を駆使したり、あるいはピッチャーを舞台上部にすえ、その下にキャッチャー、バッター、審判を配する等、シーン毎に変えていたのは秀逸だ。
また野球ならではのプレー、塁に出る、走る、スチールする、キャッチャーがランナーを刺す、といった場面は映像・効果音を使い、舞台の上下部分を有効に使い臨場感を出していた。ひとつの表現に固執せず、シーン毎に表現を変え、メリハリをつける。また、野球はチームプレイ。ピッチャーの動き、バッターの仕草、キャッチャーの構え等のそれぞれのコンビネーションも上手くハマり、観客は『ダイヤのA』の世界に没入出来る。クリエイター、キャスト、スタッフのチームワークの良さも感じる。
舞台版の主題歌『Grateful Story』が作品世界を盛り上げる。上演時期もちょうど甲子園シーズンと重なり、リアルでも高校球児たちが白球を追う。この続きも夏に上演して欲しい。上演時間は休憩も含めて約2時間半程。長さを感じさせない力作だ。

なお、ゲネプロ前に囲み会見があった。登壇したのは小澤廉(沢村栄純役)、廣瀬智紀(降谷暁役)、和田琢磨(御幸一也役)。
小澤は「この暑い夏、高校球児が甲子園に向けてがんばってきた中、僕らも稽古をがんばってきました。その成果を初日、そして千秋楽まですべてを出しきれるように頑張りたい」と語る。また和田は「野球を舞台でどうやるの?という声は散々いただいてましたが、野球を知っている方はもちろん、知らない方も『ダイヤのA』に興味を持ってもらいたい」とコメントした。
キャラクターについて、小澤は「栄純は素直で単純な奴。今、栄純が何を思っているんだろうっていうのを、わかりやすく演技していこうと思います」と言えば、原作ファンの廣瀬は「降谷くんは、ギャップですかね」と。「野球のことになったらすごく人が変わる。野球の鬼になれるのでそういうところを切り替えて演じられたら」とコメント。そして和田は、「御幸一也は、嫌われ者とか一匹狼とか言われます。が、一番念頭においているのはチームのためという、ザ・男前なキャラクター」と分析。「本当の気持ちとセリフとのギャップをうまく出せるように演じていきたい」とコメント。

そして、それぞれお互いへのメッセージを交換。和田は「廣瀬くんと一緒にさせてもらうのは2本目なんですけど、プライベートでも一緒にカレーを食べに行ったりして一気に距離を縮められたので、唯一無二の存在になっていけたらと思います。小澤廉君は、まだ舞台経験が少なく2本目なのに主役、まだまだ伸びるところがいっぱいあると、ちょっと上からになってしまいますが、初日から千秋楽にかけても成長するんじゃないかなと思います」と期待を寄せた。そのコメントに思わず小澤は泣く仕草をし「泣くなよ、お前!」と和田が小澤の肩を叩くシーンも(ウケ狙い?)。

廣瀬は「廉ちゃん、あえて言うね」と前置きし、「主役の座は渡しますけど、エースの座は譲りません!」と宣戦布告だ。小澤から和田へは「琢磨君はいい兄貴」と言う。「1回セリフを軽く言ってしまったことがあったんです。そのとき琢磨君に『そんなんやめちまえ!』って言われて、すんごい落ち込んじゃって」と稽古中のエピソードを打ち明けた。
「琢磨君がコンビニでアイスとかジュースとかおごってくれた」とちょっとウルッ的な話だったのに、廣瀬が「アメとムチってこと?」とツッコんできた。和田は「一番高いアイス買ってやりましたよ!」と自慢げ、報道陣から笑いが起こった。

それから廣瀬に対して小澤は「天然なところもある降谷とそっくりなんですよ、笑わせてくれる智紀くんが大好きです!」と言ったら「エース譲ってくれる?」と返す廣瀬。小澤は「ダメです!」と即答するが「いいじゃん、好きなんでしょ?」と廣瀬。さらに小澤については「どんどん磨き上げていく姿を見ていて、だんだん負けたくないという気持ちも出てきて、そういうライバル心も劇場でお客さんに伝えられたらなと思います」と語った。
終始、仲の良さを見せてくれた3人、和やかに会見は終了した。

脚本・演出はアニメ『ダイヤのA』で倉持洋一を演じた浅沼晋太郎。ロビーには原作者が舞台のために描き下ろした色紙も展示される予定だ。

『ダイヤのA 』the LIVE
2015 年 8 月 1 日~9 日
Zeppブルーシアター六本木

『ダイヤのA 』the LIVE
(C)寺嶋裕二・講談社/「ダイヤの A」The LIVE 製作委員会

「ダイヤのA」the LIVE 、野球シーンは秀逸、高校球児たちの熱い群像劇で感涙

《高浩美@アニメ!アニメ!》

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