ボランティアの走行管理ライダーとして、僕はツール・ド・東北の100kmコースをスタートした。しばらく隊列の後ろについて走っていると、霧が晴れて青空が見えるようになってきた。
沿道では地元の人たちが、手を振って応援してくれている。中には仮設住宅から出てきて手を振っている人たちもいて、ありがたい気持ちになる。
町中を出て田園風景の中に入ると、橋のたもとで止まっている夫婦らしき2人を発見。立ち止まっている人を見かけたら、声をかけるのが僕ら走行管理ライダーのルールだ。
初めてその役目を果たすべく声をかけると、緩んだシートポストを締め直しているだけだった。「きれいな景色なのに、みんな写真も撮らないでどんどん行ってもったいないね」と、その男性。確かにスタートしたばかりだからなのか、まだみんな元気いっぱいに走っている。
もう少し進むと、ちょっと長めの上り坂に差しかかった。頂上まで来ると「下でパンクしている人がいるよ」との声。数10m戻ると、道のわきの小さな空き地に3、4人が自転車を止めていた。
最初に声をかけた男性は、チェーンがスプロケットのロー側に落ちてしまうとのこと。簡単に調整方法を教えたら、いつの間にか再スタートしていた。
その奥にいた若い男性はパンクで、タイヤに大きな傷がついている。これはチューブだけじゃなくタイヤも交換しなければならないので、大会本部のサポートスタッフに連絡を取ることに。
朝もらったマニュアルに目を通すと、参加者から直接大会本部に電話するようにとのことなので、電話をかけてもらう。途中で僕も電話を代わって、居場所を伝える。サイコンの距離表示と携帯のGPSを確認して、約10km地点の射撃場のそばだとわかった。15分ぐらいで、サポートスタッフが来るとのことだ。
電話を切り、作業しやすいようにタイヤとチューブをホイールから外しておき、さて出発しようと思ったところ、もうひとり男性が座り込んでいるのに気づいた。
その男性はどうやら隊列が急に止まったときに立ちゴケして、脚をガードレールか何かにぶつけたらしい。ビンディングが外れなくなって、ペダルにシューズがぶらさがっていたので、僕が自分の足をシューズに突っ込んでなんとか外した。
ケガの状態を聞くと「ちょっと打っただけで、少し休めば大丈夫」とのことだったので「何かあったら、またスタッフに声をかけてください」と言い残した。
その間に大会メカニックがパンクした男性のところに到着し、タイヤ交換の作業も始まった。ちなみに僕らが持っているチューブもそうだが、大会スタッフから交換パーツを提供された場合、ゴール後にその代金を支払うことになっている。チューブは800円、タイヤは4100円だったそうだ。
そうこうしているうちに、後からスタートした60kmの先頭グループも僕たちを追い越し始めている。
気温も上がって、いろいろ作業をしていたら暑くなってきたので、ウィンドブレーカーをリュックにしまい再スタートする。いきなりのトラブルだったけど、さっそくお役に立てたのはちょっといい気分だった。
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