ウェブの世界では読者データの分析はもはや当たり前。「どの検索サービスから来たのか」「どのページを見てブラウザを閉じたのか」「サイト滞在時間はどれくらいか」「クリック率の高い広告クリエイティブはどれか」などなど、たちどころに一目瞭然な形で表示できる。A/Bテストを活用したランディングページ最適化や、そしてDSP(Demand Side Platform)に代表されるリターゲティング広告も高度化が著しい。
「リアルの世界でのデータ活用はそううまくはいかない」というのがいままでだった。通信をどうするか、データ処理のためのシステムをどう整備するかなど、莫大な投資が必要だったからだ。しかし今は違う。もはや製造業を含むあらゆる業種の企業が、全てのモノがネットワーク化されたInternet of Things(IoT)の時代を見据えたビジネスの構築を迫られている。もしコンビニで売られる雑誌に通信チップが載ったら…、歯にセンサーと通信機が埋め込まれたら…そう想像するだけでもビジネスの種は無限に生まれてくる。データと縁遠いと思われていた業種こそ、大きな可能性を秘めている。
このような思いに至ったのは、「Internet of Thingsによる新ビジネスの可能性」と題する講演を聴いたからだ。本稿では、5月27日に東京国際フォーラムでおこなわれた「ITロードマップセミナー SPRING 2014」のトリとして登場したNRI基盤ソリューション企画部 主任研究員の武居輝好氏によるこのプレゼンテーションを要約してお届けしよう。
◆M2MとIoTの違いは“人が介在するか否か”
武居氏は昨今話題になっているInternet of Things(IoT)と混同して使われがちな「Machine to Machine(M2M)」との違いについて、次のように説明する。「ネットワークに接続することで価値あるサービスが生み出されるモノ(Things)であれば、どんな形態でもIoTと呼べる。M2Mは、モノとモノとのあいだに人が介在しないケースに限定されているが、IoTは端末から収集したデータを人が活用する場合や人がネットワークに接続されたものをコントロールするケースも含んでいる」と説明し、IoTがより広義な用語であると位置づける。
こうしたIoTビジネスの拡大に伴い、標準化にむけた活動も活発化しつつある。IETE(The Institution of Electronics and Telecommunication Engineers)や3GPP(Third Generation Partnership Project)、ITU(International Telecommunication Union)といった標準化団体のみならず、民間企業がIoTビジネスに向けたアライアンス締結やコンソーシアム設立に動いている。
その一例としては、デバイス間P2P通信をベースとしたフレームワーク策定を目的として設立された「ALL SEEN ALLIANCE」(クアルコム/LG/シャープ/シスコなど)や、機器間での互換性を持たせるための共通アーキテクチャを策定する「Industrial Internet Consortium」(AT&T/シスコ/GE/IBM/インテルなど)が挙げられる。