歓迎すべき進化か、悲しい万能化か vol.2 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

歓迎すべき進化か、悲しい万能化か vol.2

オピニオン インプレ

歓迎すべき進化か、悲しい万能化か vol.2
  • 歓迎すべき進化か、悲しい万能化か vol.2
ジキルとハイド、どちらも完璧に演じきる
失ったものを補って余りあるほどの長所を得た
このニューモデルは低速からさらに乗りやすくなっている。スイスイと走り出し、高速域まで悠々と吹け上がり、ハイスピードの維持も比較的容易だ。低トルクのヒルクライムにも対応しており、登坂性はどんな速度域においてもアップしていると感じる。全力で踏まなければその真価を引き出せなかったところがプリンス・カーボンの個性だったが、ドグマ2ではそれほどまでの強烈な個性が感じられない。キャッチコピーの “横剛性14%アップ” とは全くリンクしない走行感だが、メーカーがモデルチェンジ時に出してくるデータとはおしなべてそんなものである。
これはフレーム各所のリブが低く丸くなっていることと無関係ではないだろう。ある国内メーカーのファクトリーチームに所属していたプロ選手は、フレーム開発途上のテストライド経験を元に 「フレームのチューブにリブを入れると硬く感じるようになるんですよ。踏んだときの剛性感にエッジが立って、かかりがよくなったように感じる。あくまでも感覚的にですが」 と言っていたが、ドグマ60.1→ドグマ2の変化はその発言をそのまま (逆方向に) 証明するかのようである。
では、角が取れてしまったドグマ2は、ピナレロの暴力的な剛性感の虜になっていた生粋のピナレロ乗り達を満足させられるのだろうか?小さいフレームサイズに関して言えば、答えはイエスだ。これほどまでの速さと乗りやすさとの両立を達成した代償として、瞬時にパワーピークに達するような先代ドグマの鋭さは薄れているかもしれない、と感じられることはある (だから先ドグマのオーナーは落ち込む必要なし)。しかし不思議なことにこのドグマ2に対しては、 「個性が薄れているではないか!」 と糾弾する気にも、「ピナレロイズムはどこへ…」 と落胆する気にもならない。激しさや過激さという失われた個性より、完成度向上の方が圧倒的に大きい。失ったものを覆い隠して余りあるほどの長所を得ているのである。無駄な筋肉を削ぎ落として乗りやすくなっているのに、動力性能が全く落ちていないのだ。
イージーだが平凡なフレームにあらず
想定しているライダーのレベルの幅が広がったため融通性が増しており、さらに、それが動力性能を維持したまま行われている。コルナゴも695もインペックもターマックSL4もドグマ60.1以前のピナレロも、ライダーにある程度走らせ方を強要してくるような独特のクセを持っているが、ドグマ2は (それなりの脚力を有するライダーであれば) どんなライディングスタイルでもフレームの実力を引き出せるような仕立てになっている。
快適性も、レース機材として見れば決して悪くない。さすがにドグマK (旧コブ) ほどは振動を喰ってはくれないが、衝撃が入った瞬間にバシッと減衰し全く響かず尾を引かない。高級素材を使った高剛性フレームならではの振動処理のやり方だ。これは、フレーム全体でボヨンボヨンと振動をいなす自称コンフォートバイクよりよっぽど快適で、快感も大きい。
インプレ記事において 「乗りやすい」 とは 「つまらない」 を意味することが多いものだが、ドグマ2は扱いやすいのに平凡では決してない。ペダリングフィールは薄っぺらでも軽々しくもなく、たっぷりとした粘り気のあるトルク感に溢れており、クランクシャフトをグイと捩れば鳥肌が立つほどの運動性能を体感できる。走りやすく速いバイクは各社から続々と登場しているが、扱いやすさと爆発的に湧き上がるトルク感をここまで上手く融合させているフレームは稀である (両者はなかなか両立しない)。
快適性と運動性を両立させるために右往左往しているライバル達を、目にも鮮やかなダッシュで置き去りにできる。これこそがドグマ2のキモである。ジキルとハイド、どちらも完璧に演じきるこの高性能ロードフレームは、価格以外には欠点が見つからない。実際に筆者は、次のレース用フレームをどれにするか迷っている後輩に相談を受けたとき、ドグマ2を強く推薦した。
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超高性能と門戸の広さ、その背反こそ魅力
完全無欠か?欠点はないのか?
レーシングバイクとしてほぼ完璧な仕上がりを見せる、文句なしのスーパー高性能車。平たく言ってしまえば “無敵” なドグマ2。では、完全無欠なのか。欠点はないのか。重箱の隅を突けばもちろん出てくる。
例えば、サイズによってはフォークのフィンとダウンチューブとの繋がりがやや不自然な印象を与えること。これは、フレームサイズによってヘッドチューブとダウンチューブの角度や取り付け位置が変わるのに、フォークの造形 (金型) が全フレームサイズで共有されているためだろう (フォークオフセットも全サイズ共通)。ただ、走りには (いい意味で) 一切影響のない箇所だし、この走りを体験してしまった後では些細なことにすぎない。むしろ、あまりに走りがいいのでこんな飾り (フィン) はいらないとさえ思ったほどだ。
個人的には、専用ピラーの形状も好みではない。試乗した個体はピラーとシートチューブとのクリアランスが大きく、通常の真円ピラーより大きなトルクで締め付けないと固定できなかった。それに、この専用ピラーは十分なセットバック量が確保されておらず、シート角の立った小さいフレームだとサドル後退量が取れない可能性がある。個人的にはプリンス・カーボンのような真円ピラーにしてくれた方がよっぽどありがたい。
また、乗りやすくなったとはいえ、あるレベル以上のスキルと脚力を有するライダー向けのフレームであることに変わりない、ということは強調しておかなければならない。これはどんな素人でも簡単に運転できるような子猫では決してない。暴れ馬ぶりはドグマ2にもしっかりと残されているため、ビギナーにお勧めできるフレームではない。自転車乗りとしての在り方を高めようと努力しない人にも向いていない。向上心が欠けたままの稚拙な扱いでこれほどまでの超高性能車をただ腐らせておくのは、作り上げた人々に対して失礼である。
他媒体の企画で乗ったサイズ50のドグマ2と、今回のサイズ48 (これが筆者にはベストサイズ) とでは、乗り味が僅かに異なることも気になる。ドグマKの試乗でも感じたことだが、小さいサイズの方がより硬く、従来の 「ピナレロハイエンド」 のイメージを色濃く残していると感じた。ピナレロのカーボンフレームはサイズ間の差が大きく出るタイプなのかもしれない。さらに細かいことまで言えば、大きく湾曲したチェーンステーにチェーンが当たりやすいことが癇に障る人もいるだろう。
現時点でのピナレロ進化論のゴール
というように所々に小さなネガはあるものの、50万円オーバーのフレームでなければ持ちえない性能をしっかりと盛り込むことに成功している。ドグマ2の走りには、この高価格を有無を言わさず納得させてしまうパワーがある。
最初は、ノリまくっているピナレロだから 「左右非対称」 に加えて 「空力」 まで欲しくなったのか?と穿った見方をしてしまったが、決して口先だけのブランドではない。エントリー~ミドルグレードを充実させ、上位モデルのイメージを上手く使って 「数を売るブランド」 になっているのは事実だし (90年代後半~2000年代前半のような少数精鋭感は確かになくなってしまった)、それを嫌がってミーハー扱いする人もいるだろうが、ドグマ2には乗ればそんなことは綺麗さっぱり吹き飛んでしまう。
ピナレロは、パリ~初代プリンス (アルミカーボンバック) ~ドグマFPX (マグネシウムカーボンバック) まではしなやか路線で他ブランドとは一線を画し、プリンスカーボン~ドグマ60.1では高剛性と高トラクション性で他を圧倒、そしてドグマ2とドグマKの新世代ラインナップでは、プリンス・カーボン世代の圧倒的な動力性能はそのままにオールラウンドに仕上げてきた。この動きはまるでピナレロ旗艦モデルのあるべき姿を探っているような変化だが、だとすればこのドグマ2、その探求の旅の一つのゴールだと言えるのではないか。
今回は期待以上だった。ピナレロは間違いなく真のレーシングフレームメーカーだ。これはピナレロハイエンドの一つのゴールであると同時に、21世紀ロードバイクの一つの理想形である。
晩夏の二週間をフルに使ってドグマ2を走らせるうち分かってきたことは、今回のモデルチェンジのメインとされている空力性能アップや左右バランスの向上は、カタログの誌面 (と雑誌の誌面) を飾る脇役に過ぎない、ということだった。ドグマ2の真価は、トータルの運動性能を徹底的に磨き上げた結果、「走る・曲がる・止まる」 という基本性能を最高レベルで達成しながら、その門戸をより多くのライダーに向けて開け放ったことにある。この背反こそがドグマ2最大の魅力なのである。
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