
今週は国内唯一の直線重賞、サマースプリントシリーズ第3戦、第25回アイビスサマーダッシュ(GIII、芝1000m)が新潟競馬場で行われる。
今年は、昨年の当レース覇者モズメイメイ、2着ウイングレイテスト、3着テイエムスパーダと上位3頭が揃い踏み。加えてピューロマジックやコラソンビートといった重賞ウイナーや、安達太良Sを制したカルロヴェローチェ、格上挑戦カフジテトラゴンなどスピード自慢が集結。激しい外ラチ沿いの争いにも注目だ。
そんな中、重賞2勝の実績馬ピューロマジックが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。
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■新潟直千は人馬ともに経験値がモノをいう一戦
デビュー3戦目から芝の短距離に矛先を変え、徹底先行で結果を残してきたピューロマジック。昨年は3歳限定の葵Sで重賞初制覇を果たすと、続く北九州記念では古馬を撃破。その後は結果を残せていないが、前走はドバイ遠征を敢行し、アルクオーツスプリントに挑戦。直線芝1200mで逃げることはできなかったが、後方から追い込んで不利もある中5着に食い込み、逃げ一辺倒だけではない競馬も見せることができた。そして今回、国内で初参戦となる新潟の直千競馬。果たしてどのような戦法で臨むのだろうか。
過去10年のアイビスSDでは、やはり逃げ先行型が好結果を残している。特にハナを奪った場合は【2.6.0.8】と、半数が連対を果たしており、スタートからのスピード力は大いに武器となる。しかし、ハナを奪えるかどうかは枠順にも左右される。過去10年で逃げた16頭中11頭が10番から外の枠。さらに連対した8頭中7頭は8番から外の枠で、ある程度外めの枠からの発走じゃないと、ハナを奪うことは難しく好走も容易ではない。
加えて、逃げて好走した8頭中7頭は直線競馬を経験済み。この特殊なコースを経験していることは大きなアドバンテージとなる。ピューロマジックは前走海外で直線芝1200mを走っているが、新潟直千はまた別物。スピード力の違いでハナを奪うのか、枠順によっては控えるのか……ゲートが開くまでは分からないが、仮に逃げの手を打つのであれば昨秋からのセントウルS、スプリンターズS、シルクロードSと逃げて失速というレース内容が不満であり、好感は持てない。逆に脚質転換で、後方から進めることを選択したとしても、差し追込タイプの好走率は下がるので積極的には狙いにくい。何とも取捨の難しい馬である。
血統面では、アジアエクスプレス産駒の新潟直千競馬での成績は【5.0.0.16】。勝つか負けるか、かなり極端な傾向にある。その中で、オープン特別以上では【1.0.0.5】馬券内率16%の成績で、そのほとんどがピューロマジックの全兄メディーヴァルの成績。同馬は2023年の韋駄天Sを制し、アイビスSDは23、24年と2回出走しているが、8着、5着に敗れている。兄と比べて妹はすでに重賞2勝を果たしている実力馬ではあるが、全く同じ血を持つ者として、大いに期待できるかというと疑問符は残る。
最後に、今回鞍上を務めるC.ルメールが新潟直千に騎乗することはかなりレアケースであり、これまでの成績は【1.0.0.2】で、最後の騎乗は22年8月まで遡る。世界を股にかける名手だけに問題ないと考えなくもないが、新潟直千は当地が得意な馬・騎手が幅を利かせる一戦。経験値の浅さは決してプラス材料ではないだろう。最終的には枠順が大きく左右する一戦だけに、現時点では取捨の難しいところではあるが、人気を集めるほど信頼度は高くないと考えるピューロマジックについては少なくとも「頭」勝負は避けたい。
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◆著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。