曲がっても飛ばした方が賞金を稼げるのか 男子の飛距離とFWキープ率上位者を比較 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

曲がっても飛ばした方が賞金を稼げるのか 男子の飛距離とFWキープ率上位者を比較

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曲がっても飛ばした方が賞金を稼げるのか 男子の飛距離とFWキープ率上位者を比較
  • 曲がっても飛ばした方が賞金を稼げるのか 男子の飛距離とFWキープ率上位者を比較

11月30日から12月3日に開催された日本シリーズJTカップをもって、今季の日本男子ツアーの全日程が終了した。

今季は若手の台頭が著しいシーズンとなった。賞金王の中島啓太や、中島と賞金王を争った金谷拓実蟬川泰果はその象徴だ。

そして、その若手のプレーで光るのが飛距離。ドライビングディスタンスのトップ10には中島と蟬川を含めて24歳以下の選手が4人入っている。

◆中島啓太が最優秀選手賞 蟬川泰果、金谷拓実と「NSKで」青木功JGTO会長が命名 男子ゴルフ2023年表彰式

若手の多くは「いずれ米ツアーで」と海外志向が強く、ジュニア期から‟飛距離マスト”としてトレーニングに取り組み、中島や蟬川のように飛距離を武器に攻撃的なゴルフを構築してきている選手が多い。

しかし一方で、金谷のようにティーショットでは飛距離よりも安定してフェアウェイをとらえることを信条とし、ステディなプレースタイルでスコアを作り活躍している選手もいる。

フェアウェイキープ率上位には中堅選手が多く入っているが、ティーショットで飛距離が出る選手と、安定感が高い選手とではどちらが好成績をあげられるのだろうか。

今季のドライビングディスタンス上位者とフェアウェイキープ率上位者の獲得賞金を比較した。

■ドライビングディスタンス上位者とフェアウェイキープ上位者の獲得賞金

ドライビングディスタンス1位は河本力。ルーキーイヤーの昨季も1位で2位に13.02ヤードの差をつけ、今季も2位を9.59ヤード差で圧倒。‟米ツアーでも飛ばし屋の部類に入る”と評されるパワーを見せつけた。

しかし、河本は昨季2勝をあげたが今季は未勝利。昨季の獲得賞金は7,776万6,121円だったが、今季は2,096万475円と大きく下げた。

ドライビングディスタンス4位には、上位常連の幡地隆寛が入った。2019年2位、2020-21年1位、2022年3位、だったことを考えると、昨年までほど飛距離でアドバンテージを得られなくなってきている傾向にある。5位とは0.02ヤード差であることも踏まえるとなおさらだ。

ただ、獲得賞金4,171万9,720円は過去最高。賞金ランキング18位も過去最上位だ。

河本や幡地を含めたドライビングディスタンス上位10名の獲得賞金の平均は、5,848万3,444円。平均値を上げている、6位の蟬川と10位の中島が入らない上位5名の平均は、3,416万6,755円となった。

フェアウェイキープ率1位は、そこが指定席となっている稲森佑貴。今季も圧倒的な精度を誇り2位と10.133%もの差をつけた。昨季の自己記録かつツアー記録の78.660%を更新する79.269%。これで8季連続のフェアウェイキープ率1位となった。

今季は1勝し、獲得賞金が7,284万9,628円。賞金ランキングは8位で2季ぶりに上位10名に入った。

フェアウェイキープ率9位には金谷が入った。ドライビングディスタンスは290.06ヤードで39位。飛距離よりも精度を武器にトータルドライビング1位(9位+39位=48)となり、1億4,116万2,332円を稼いだ。

稲森や金谷を含めたフェアウェイキープ率上位10名の獲得賞金の平均は、3,620万77円。上位5名の平均は、2,710万503円となった。

結果、それぞれの部門の上位10名の比較では、ドライビングディスタンス上位者の方が、フェアウェイキープ率上位者よりも賞金を稼いでいる、ということがわかった。

2023年ドライビングディスタンス上位10名の獲得賞金額

2023年ドライビングディスタンス上位10名の獲得賞金額

2023年FWキープ率上位10名の獲得賞金額

2023年FWキープ率上位10名の獲得賞金額

■パワーゲーム化加速か

飛距離がストロングポイントの選手の活躍だけでなく、米ツアーのSG(ストローク・ゲインド)指標の産みの親であるマーク・ブローディ氏の研究結果などにより、飛距離の重要性が強く説かれるようになってきている。

また、米ツアーに挑戦してきた日本人選手のスタッツを見ても、若手選手が飛距離を獲得してきた理由が分かる。

2013年から17年まで米ツアーを主戦場としていた石川遼。2012年の日本ツアーでのドライビングディスタンス順位は14位だったが、13年の米ツアー同部門順位は62位だった。

2014年から米ツアーを主戦場にしている松山英樹。2013年の日本ツアーでのドライビングディスタンス順位は10位だったが、14年の米ツアー同部門順位は51位だった。

日本で飛ばし屋の部類に入っても米ツアーでは平均よりも少し飛ぶ程度、だったのだ。

その現実を知ったうえで若手はアマチュア時代を過ごした。よって、米ツアー挑戦を志す選手は、「日本ツアーで飛距離がトップレベルの水準に達しなければ到底米ツアーでは戦えない」と、飛距離は絶対条件として掲げてきたと思われる。

今後、若手がフェアウェイキープよりも飛距離を重要視する風潮は強まっていきそうだ。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。

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