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山下美夢有の2季連続年間女王戴冠で幕を閉じたJLPGAツアー2023シーズン。今回から2回にわたって23シーズンを振り返る。1回目は「スタッツ編」。年間女王・山下が数多くの部門でトップの成績を収める一方、各部門の上位者を見ると、22シーズンから様変わりしているケースも多々あり、新しい潮流が感じられる一年となった。
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■桑木志帆、来季初優勝の可能性大
最初に、メルセデス・ランキングのトップ10から見ていこう。
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メルセデス・ランキングトップ10
終わってみれば、山下が申ジエ(韓国)に327.13pt差をつけて、2季連続で年間女王の座に就いた。トップ10の顔触れを見て、特筆すべきことがある。それは23、22両シーズンともトップ10入りしている選手が、山下・小祝さくら・吉田優利の3人しかいないことだ。有力選手が次々と米ツアー参戦に踏み切った影響もあるが、大きな変化といえる。
入れ替わった7人は明愛・千怜の岩井ツインズを筆頭に若手が多いものの、ベテラン・中堅も割って入っており、実力が拮抗し、ツアー全体がレベルアップしていることを感じさせる。中でも目に付くのは、2年目の櫻井心那と3年目の桑木志帆だ。櫻井は山下に次ぐ優勝回数2位(4回)でトップ5入り、桑木は優勝回数0でトップ10入りを果たした。
ちなみに、優勝回数0でトップ10入りした選手として、22シーズンの菅沼菜々(8位)、20-21シーズンの高橋彩華(8位)がいる。両選手とも翌シーズンに初優勝しており、桑木にとっては心強いデータだ。要は、優勝する実力がなければトップ10入りは難しいということなのだろう。
■山下、主要スタッツ9冠を達成
次に、山下の偉業について触れておきたい。主要なものに限っても、山下が1位を記録したスタッツはこれだけある。メルセデス・ランキング、年間獲得賞金、平均ストローク、年間トップ10回数、平均パット数(パーオンホール)、パーセーブ率、平均バーディ数、フェアウェイキープ率、パーブレーク率。これを主要スタッツ9冠と呼びたい。
細かいものまで加えると、なんと18冠になる。あえて気になる点を挙げるとすれば、昨季1位だったパーオン率が5位に後退したことくらい。とにかく非の打ちどころがない。
この中で最も強調すべきは、「69.4322」で歴代最少平均ストロークを更新、かつ2季連続で60台をマークした点である。最少平均ストロークのベスト5を以下に掲げてみた。
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最小平均ストロークベスト5
これまで平均ストローク60台を達成したのは、山下と申のみ。2季連続は山下しかいない。
もう一点、賞金総額が上がっているとはいえ、2季連続での獲得賞金2億円超えも見事だ。シーズン獲得賞金のベスト5は下図のようになっている。
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シーズン獲得賞金額ベスト5
1位と2位は20-21統合シーズンのもので、トータルで52試合あったことを踏まえると、38試合のシーズン2季連続で2億円の大台突破は快挙といっていい。
■パーオン率の女王、最有力は明愛
最後に、上位選手の順位変動や入れ替わりが大きかった2つの重要スタッツについて見ていく。パーオン率とドライビングディスタンスだ。両スタッツのトップ3をまとめてみた。
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パーオン率・ドライビングディスタンスTOP3
まずはパーオン率から。歴代最高パーオン率「78.2079%」(19シーズン)を誇る稲見萌寧の名がトップ3にない。今シーズン前半の不調が影響したものだが、それでも夏以降じりじりと追い上げ、9位まで持ってきたのはさすがである。
その稲見も来季からは米ツアーに参戦。稲見に代わってパーオン率の女王になるのは誰か。最有力候補は、岩井ツインズの姉・明愛だろう。今季1位、22シーズン3位で、ただ一人2季連続でトップ3入りを果たした。今季の目標に「パーオン率1位」を掲げた福田真末が2位。22シーズン8位の原英莉花が3位。来季どうなるか注目のスタッツである。
そして、トップ3をルーキーと2年目の選手が独占したのがドライビングディスタンスだ。ルーキーの神谷そらが1位。2年目の竹田麗央、櫻井がそれぞれ2位、3位となった。
道具の進化があるとはいえ、神谷がはじき出した「260.82ヤード」は、記録が残っている17シーズン以降で最長のもので、とんでもない新人が登場しない限り、今後もこの3人が飛ばし屋の称号を争っていくことになるのではないか。
このほか、平均パット数(1ラウンド当たり)は3季連続で青木瀬令奈が1位。リカバリー率は2季連続で吉田が1位。パーオン率に加え、バーディ数と60台のラウンド数(山下と同数)は明愛が1位の成績を残した。
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文●河野道久