「ノジマTリーグ 2023-2024シーズン」は11日、12日に大和スポーツセンターで木下アビエル神奈川のホーム戦が行われた。この2連戦にシングルスで出場し、躍動したのが平野美宇である。
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■前週の黒星を取り返す2勝
平野は前週の日本ペイントマレッツ戦で、海外遠征からの帰国直後というタイトなスケジュールのなか、横井咲桜の前に今季シングルス6試合目にして初の黒星を喫した。
出澤杏佳を相手にした11日の九州アスティーダ戦では、序盤はリズムを作れずに2ゲームを連取された。「最初なかなかうまくペースがつかめなくて、出澤選手のラバーのやりにくさに苦戦した」と試合後に語った通り、第2ゲームで早くもタイムアウトを取るなど、流れをつかめずにいた。
それでも、「このままやっても負けると思ったので、後悔しないことだけを考えた」という平野は、第3ゲーム以降は徐々に自分のペースを取り戻す。自分の思い通りのプレーができる際は「雑念がない」と語ったように後半はチャンスと見るやリスクを冒して前に出る平野らしいプレーが顔を覗かせ、その後の逆転劇につなげた。
平野は好調さを維持したまま翌日のトップおとめピンポンズ名古屋戦に挑み、小塩悠菜相手には第1ゲーム目からエンジン全開。中澤鋭監督も「順調すぎる感じ。あまり波がなく平常心でプレーする感じだった」と語ったように、ピンチらしいピンチを与えずにチーム唯一の白星を挙げた。
■「コンディションは普通」
Tリーグで連勝を飾った平野だが、この2試合で多く聞かれたのが“気持ち”という言葉。「コンディション的には普通くらい」と現在の状態について明かした平野は、「調子がよくても悪くても気持ちで変わる」とこれまでの経験で培ったメンタル面の重要性について語る。
また、良い時のプレーの特徴として、逆転勝利を収めた出澤相手の第5ゲーム目を例に挙げながら、「7－6のチャンスがあった時に回り込んでストレートで打つとか、10－11で負けているときにハーフロングにクロスでしっかり打つといったことは気持ちがなければできない」と言及した。
中澤監督も平野のメンタル面のマネジメントに一役買っており、苦戦を強いられた11日の出澤戦を受けて、「技術力はすごいものを持っているなかで、普通にやればなんとかなる」と声をかけた。指揮官は、「（平野は）タイトルをたくさん持っているから卓球人生が終わっても残念なことはない。これからは得しかないので平常心でプレーすればという話をする」と平野が築いてきた功績を認めつつ、気持ちの整理に取り組んでいると述べている。
■五輪選考ポイントも加算
KA神奈川は開幕10戦を終えた段階で8勝2敗の勝ち点28で首位。平野も7勝1敗でシングルスの勝率「.875」はリーグトップと連覇を狙うチームをけん引している。
今季からは引退した石川佳純に代わり主将も務める平野は、「石川さんについていく側だったので、いきなり大丈夫かなというのはあるんですが、みんな一人ひとりしっかりしている」と周りへの信頼を口にする。それでも、試合前にはチームメイトの中国人選手たちに積極的に声をかけるなど、キャリアを重ね、若手選手も増えてきたなか主将としての責任感を垣間見せた。
平野はTリーグで連勝を飾り、早田ひな（700.5点）に次いで2位につける五輪選考ポイントでも3位の伊藤美誠（411.5点）に24.5ポイント差をつけて436点まで伸ばした。来年のパリ行きをかけたシングルス争いは熾烈なものであるのは変わらないが、「（選考レースを）考えてしまうと苦しいのは4年前で分かっている」としつつ、「ポイントのことは考えずに試合がしたい」と意識せずに挑むことで結果に結び付けたいと心境を明かす。
Tリーグではチームの連覇に向けてけん引し、パリ五輪選考争いでも自身初のシングルス出場権をかけた真っ只中にいる。「どうして勝てたのか、負けたのかが前より分かったうえで勝ったり負けたりできている」と語った平野は、キャリアを重ねたなかで、精神的な成熟度も高めてきた。23歳を迎えた“ハリケーン”が見せる新たな姿とさらなる飛躍には期待が集まる。
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取材・文●井本佳孝（SPREAD編集部）
