【ツールド東北】「応援が人生の支えに」170キロ完走者の佐藤美枝さん、地元・女川エイドで参加者を激励 「来年こそは走りたい」と意欲 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【ツールド東北】「応援が人生の支えに」170キロ完走者の佐藤美枝さん、地元・女川エイドで参加者を激励 「来年こそは走りたい」と意欲

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【ツールド東北】「応援が人生の支えに」170キロ完走者の佐藤美枝さん、地元・女川エイドで参加者を激励 「来年こそは走りたい」と意欲
  • 【ツールド東北】「応援が人生の支えに」170キロ完走者の佐藤美枝さん、地元・女川エイドで参加者を激励 「来年こそは走りたい」と意欲

あなたにとって『ツール・ド・東北』とは。第10回記念大会の女川エイドで名物「女川汁」を笑顔で振る舞ってくれた佐藤美枝さんは、2013年の第1回大会から7年連続でツール・ド・東北に参加し、16年大会では170キロの南三陸フォンドを完走した実力者だ。

今年は抽選に外れたものの、女川出身者として大会に関わりたいと、熱い気持ちでボランティアに参加した。

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■「涙を流して走った道を、楽しく走りたいと思った」

「私にとってのツール・ド・東北は、『感情が交錯する特別なもの』としか言いようがないです」。

佐藤さんは2009年、50歳のときにクロスバイクを購入。11年の震災発生時には、女川に住む母親の安否を心配して、仙台から石巻まで必死で自転車を走らせた。震災後は仮設集会所で風呂敷活用ボランティアをしていた佐藤さん。2年近く自転車から離れていたものの、13年にツール・ド・東北開催のニュースを聞きつけ「絶対に走りたい!」と気持ちに火がついた。

「母親は無事か…」不安に押しつぶされそうになりながら涙を流して走ったあの道を、津波によって破壊され写真に残すことすらためらわれた女川の町を、楽しい気持ちで走ってみたい。そんな気持ちで臨んだ第1回大会だった。

当時は、全国から人々が訪れるなんて思ってもいなかった。地元の現状を見て、認識してもらえるとしても少しだろうと。しかし、その期待はいい意味で裏切られた。たくさんの人が来てくれて、経済的な収益は発生するだろう……自分も地元のために直接的に関わりたいという気持ちが強くなった。

■朝5時集合、車のライトを照明代わりに準備

初回から7年連続で出走していたものの、全5コースが完全復活した第10回大会には残念ながら、落選した佐藤さん。しかし、何かしらのかたちで関わりを持ちたいと思い、女川エイドを切り盛りする商工婦人部の現部長さんにお手伝いをできないかと申し出た。

女川エイドでは出走する度、美味しい「女川汁」をご馳走になっていた。婦人部の皆さんからもらった「がんばって!」の応援は、アップダウンの激しいコースを走り切る力になった。

朝5時に車のライトを照明代わりに「女川汁」を仕込んだ(撮影:佐藤美枝さん)

初めてライダーを応援する立場で参加した大会当日は、朝5時集合。車のライトを照明代わりに、見たことのない量のネギと豆腐を切りながら、第1回大会からの婦人部の皆さんのご苦労に思いを馳せた。秋刀魚のすり身を丸めながら、「ライダーさんに美味しいと言ってもらいたい」と応援の気持ちも込めた。大会の広報大使を務めるモデルの道端カレンさんも、すり身の入れ込みを手伝ってくれた。気さくに話しかけてくれたことが嬉しかった。

■ツール・ド・東北での「応援」が人生の支えに

リアス式海岸ならではのアップダウンの激しいコースが特徴のツール・ド・東北。厳しいコースだからこそ、走りきったときの達成感は格別だ。

ここからは、佐藤さんの言葉をそのままお借りする。

「大人になってから、あれほどの肉体的な疲労はそうそう無い。骨の髄まで疲れるとはこの事だなと。普段の生活の中でも疲れはもちろんあります。でも自転車の疲れって、なぜに充足感、満足感、喜びが伴うのでしょうか? いつも考えます。

登りきった先で、子どもさんから『がんばれぇ〜』と声かけられたとき、その言葉が身体に染み渡りました。登坂してふらふら状態の私に、待ち構えていたおじいちゃんの一群が『これは拍手だっ』と讃えてくださったことがありました。

これらは、私の支えになっています。自転車だけでなく『応援』のもつパワーは、とてつもなくすごいことを自分にもたらす。という事ですかね……。

現在は走っている時、仕事をしている時、たくさんの奮い立たせてくれた言葉を反芻しながら、次の人生のステップを進みはじめている所です」。 

来年こそは当選しますように!笑顔の佐藤美枝さん

今年も走る気満々で練習に取り組んでいたという佐藤さんは「来年こそは走りたい」と笑顔を輝かせていた。

今年はボランティアとして、参加者を応援してくれた佐藤さん。彼女の笑顔に励まされたライダーは数多くいたはずだ。

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文●工藤愛梨(SPREAD編集部)

《SPREAD》
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