【MLB】アーロン・ジャッジはニューヨーク・ヤンキース第16代キャプテン足りえるのか ワールドシリーズ制覇の行方とともに考える | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【MLB】アーロン・ジャッジはニューヨーク・ヤンキース第16代キャプテン足りえるのか ワールドシリーズ制覇の行方とともに考える

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【MLB】アーロン・ジャッジはニューヨーク・ヤンキース第16代キャプテン足りえるのか ワールドシリーズ制覇の行方とともに考える
  • 【MLB】アーロン・ジャッジはニューヨーク・ヤンキース第16代キャプテン足りえるのか ワールドシリーズ制覇の行方とともに考える

2022年シーズン、アメリカン・リーグ記録となる62本塁打を放ちMVPに輝いたニューヨー・ヤンキースアーロン・ジャッジは9年3億6000万ドル(約478億円)という超大型契約でチームに残留。翌22日にハル・スタインブレナー・オーナーから第16代となるキャプテンに任命された。この記者会見には、第12代キャプテンのウィリー・ランドルフに第15代のデレク・ジーターも出席。ヤンキースの主将ともなれば、それだけ品格さえ問われる重責となる。

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■ヤンキース歴代キャプテン

ジャッジ自身も「信じられないほどの名誉」とコメントしているが、果たして本当に「第16代キャプテン」足りえるのだろうか。

以下、『ベースボール・アルマニャック』に記載される歴代のキャプテン。数字は就任時期。☆がアメリカン・リーグ王者獲得、★はワールドシリーズ制覇を意味する。

1.クラーク・グリフィス(投手)1903-052.キッド・エルバーフィールド (遊撃手)1906-083.ウイリー・キーラー(右翼手)19094.ハル・チェース(一塁手)1910、115.フランク・チャンス(一塁手)19136.ローリー・ゼイダー(内野手)19137.ロジャー・ペッキンポー(遊撃手)1914-21☆8.ベーブ・ルース(外野手)1922 ☆9.ルー・ゲーリック(一塁手)1935-39★★★★10.サーマン・マンソン(捕手)1976-79☆★★11.グレイグ・ネトルズ(三塁手)1982-8412.ウイリー・ランドルフ(二塁手)1986-8813.ロン・ギドリー(投手)1986-8914.ドン・マッティングリー(一塁手)1991-9515.デレク・ジーター(遊撃手)2003-14 ☆★16.アーロン・ジャッジ(右翼手)2023-

■ヤンキースはニューヨークになかった

チームの歴史を振り返ると1901年の創設時の名称は「ボルチモア・オリオールズ」(現・オリオールズとは無関係)。ニューヨークに移転したのは1903年、この時のチーム名は「ニューヨーク・アイランダーズ」。つまりヤンキースではなかった。「初代」キャプテンは1913年のフランク・チャンス。シーズン前半はチャンスが請け負い、後半をローリー・ゼイダーが分担した。つまり厳密に言えば、最初の4代は「アイランダーズ」のキャプテンということになる。つまりヤンキースとして換算するのであれば、ジャッジは16代ではなく第12代キャプテンとすべきではなかろうか。

MLB史を振り返ると1920年あたりまで監督と主将の役割は曖昧であり、主将が選手交代を告げるなどの権限を与えられていた。この時代を境にプレーをしない指揮官である監督と、プレーヤーとしてのキャプテンの分業がなされたとされている。

ただし当時からキャプテンが重責だった点は、ベーブ・ルースが単年しか務めていない事実にも見てとれる。ルースのキャプテンは実は「5日天下」。22年5月20日に任命されたが、25日の試合で激昂し退場を命じられ、キャプテンシーなしとの理由で剥奪されている。この事件のためか、「ヤンキース」が誕生してから9年連続で存在したキャプテンは、35年のルー・ゲーリックまで13年間不在となった。

このキャプテン不在期間、ヤンキースは1923年に初めてワールドシリーズを制覇すると4度の優勝を勝ち取り、名門への基礎を築く。またゲーリック主将時代には4連覇を果たし、それを確固たるものにした。

■1980年代、2010年代の暗黒期

「ザ・キャプテン」デレク・ジーター(右)と松井秀喜 (C) Getty Images

ゲーリック以降35年間はキャプテン不在ながらチームは12度の世界一に輝く。だが、逆に11代から14代のマッティングリーまではヤンキース暗黒時代、1980年代はア・リーグ優勝一度の他ほぼ無冠となる。

マッティングリーは95年に引退。キャプテン不在となると翌年、チームは18年ぶりにワールシリーズ制覇。98年からは3連覇を果たし、久々の黄金期を迎えた。だがまたもジーターが2003年にキャプテン就任すると以降、松井秀喜が大暴れしMVPに輝いた2009年の世界一が一度きり。さらに以降13年に渡ってMLBの頂点に立っていない。

ヤンキースが1923年に初めて世界一となって以来、ワールドシリーズ制覇を果たせなかったのは1980年代と2010年代のみ。ご存知の通りMLB最多となる27度の世界一を記録している名門ながら、キャプテン在任中の制覇は7度のみ。ゲーリック時代を除くと、たった3度しかMLBの頂点に立っていないのだ。不思議なことにジョー・ディマジオ、ロジャー・マリス、ミッキー・マントル、ヨギ・ベラ、ビリー・マーティンなど殿堂入りスーパースターたちは一度もキャプテンを務めたことがない。

ヤンキースは二度目の無冠、暗黒期を経て、果たして黄金期を演出するのか、名門復活は新キャプテン・ジャッジの双肩にかかっている。

ヤンキースは2009年、MVPの松井と再契約せず放出した。ボストン・レッドソックスはベーブ・ルース放出以降、86年間ワールドシリーズから見放され、ルースの愛称から「バンビーノの呪い」とされた。ヤンキースにとって「秀喜の呪い」となり、世界一から遠ざかり続けるような球史に残らぬことを願いたい。

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著者プロフィール

たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー

『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨーク大学などで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。

MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。

推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。

リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。

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