【カタールW杯】日本、韓国、豪州がベスト16進出 欧州に次ぐアジア勢大躍進の背景 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【カタールW杯】日本、韓国、豪州がベスト16進出 欧州に次ぐアジア勢大躍進の背景

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【カタールW杯】日本、韓国、豪州がベスト16進出 欧州に次ぐアジア勢大躍進の背景
  • 【カタールW杯】日本、韓国、豪州がベスト16進出 欧州に次ぐアジア勢大躍進の背景

11月20日に開幕したFIFAワールドカップカタール2022はグループステージ(GS)が終了。今大会は欧州サッカーのシーズン中に開催される異例の大会であり、波乱の連続となった。番狂わせが起きない日の方が珍しく、特にアジア勢の躍進が際立っている。

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■史上最多3カ国が16強進出、第2勢力のアジア

第1節からFIFAランク51位のサウジアラビア代表が優勝2回のアルゼンチン代表(3位)を破り、「メッシ、最後のW杯」で沸く南米の強豪から大金星を挙げたのが始まりだった。

翌日には日本代表(24位)が優勝4度の大国ドイツ(11位)に劇的な逆転勝利を挙げた。日本は第3節でも2010年の南アフリカ大会覇者のスペイン代表(7位)に逆転勝利。2つの優勝経験国を破った日本はグループEを首位通過。アジア勢唯一の2大会連続決勝トーナメント進出となり、今大会のダークホースとして世界中から注目を集めている。

オーストラリア代表(38位)も第2節でチュニジア代表(30位)、第3節でデンマーク代表(10位)を相手に連勝。D組を2位通過した。韓国代表(28位)も初戦で優勝2度の強豪ウルグアイ代表(14位)と引き分け、第3節では初優勝を狙う2016年の欧州王者ポルトガル代表(9位)を破ってH組2位でGS突破を決めた。日本時間4日に行われたアルゼンチンとの決勝トーナメント1回戦では奮闘したものの、惜しくも1-2で敗れた。

決勝トーナメントにアジア枠から3カ国が進出したのは史上初。今大会に限れば8カ国がベスト16へと進出した欧州勢に続き、アジア勢は第2勢力になっている。一方で開催国のカタール代表(50位)が3戦全敗に終わり、中東勢も全てGS敗退。地理的にも日本や韓国、豪州にホームアドバンテージがあったとは思えない。

開幕1週間前まで欧州各国リーグが行われ、負傷者が多かったのは事実だが、それが番狂わせが多発した直接の原因でもないだろう。日本の本大会メンバー26選手中の19選手が欧州クラブに所属しているように、今や多くの選手が欧州でプレーしているからだ。

■明らかに縮まった大陸間の実力差

そこで、GSの成績を大陸別にまとめ、1試合の「平均勝点」を算出した。過去2大会と比較して明確なのは、欧州と南米が落とした勝点をアジアが拾っている格好だ。

意外なのは最も平均勝点が多かったのが南米だったこと。これまで16強に4カ国を送って来た南米勢から、今大会でGSを突破できたのはFIFAランク1位のブラジル代表とアルゼンチンの2強のみと、半減している。

「FIFA W杯 直近3大会の大陸別グループステージ成績」

ロシア大会ではアフリカ、ブラジル大会ではアジアからのGS突破国が出なかったが、今大会は全大陸から16強進出国が誕生している。平均勝点でみても、ブラジル大会で最高値だった南米の「2.27」から最低のアジアの「0.25」を引くと「2」以上もの大差が離れていたが、今大会最高の南米「1.67」から最低の北中米の「1.00」を引いても僅か「0.67」。大陸間の差が縮まっているのが大きな特徴として見てとれる。

特にアジア勢は2014年のブラジル大会で出場4カ国が全て未勝利に終わりながら、2018年には4勝を挙げ、今大会では7勝と右肩上がりに戦績を上げて来ている。

■「欧州囲い込み」戦略に対する日本サッカー協会の努力

しかし、ブラジル大会で未勝利に終わった頃のアジア勢には、その結果以上に険しい未来が見えていたはずだ。近年のサッカー界は代表チームよりもクラブ優先の構図が著しい。大きなお金が動く一大ビジネスだからだ。代表戦の魅力そのものが失われることはないだろうが、そのあり方に関しては変化が求められている。

UEFA(欧州サッカー連盟)が2016年大会から欧州選手権『EURO』の出場を従来の16から24へと拡大し、2018年から代表戦の新たなコンペティション『UEFAネーションズリーグ』をスタートさせたのは、その一環だ。これまで親善試合に過ぎなかった代表戦が全て公式戦となったことで、試合の価値が上がり、新たなスポンサー獲得とチケット収益増も見込めたからだ。これで欧州各国の代表戦ウィークはW杯予選とEURO予選、ネーションズリーグで完全に埋まってしまった。この「欧州囲い込み」戦略で割を食ったのは、欧州の強豪国と強化試合を組みたいアジア勢だった。

また、FIFAのルールとして、現在の代表戦は各国リーグがない週末を挟んだ木曜日か金曜日に1試合、火曜日か水曜日にもう1試合の合計2試合を「国際Aマッチウィーク」として戦うスケジュールとなっている。その中で「長期移動による負担をかけないため、その2試合は同じ大陸で行わなければならない」のも大きなハードルとなった。

それでも日本サッカー協会(JFA)は考えた。韓国やイランの協会と協力して強豪2カ国をアジアに招き、2試合を交互に戦うマッチメイクも実行した。現在は欧州でプレーする選手が多いため、欧州でブラジルら南米の強豪国と対戦する強化試合も行った。これにはJFAの拠点が欧州にも新設されたことで、欧州の地で代表戦を戦うこともスムーズになった背景もある。

こうしたアジアの強豪国同士の協力があってこそ、W杯本大会の決勝トーナメントへ史上最多3カ国が進出する流れができたのだ。ピッチ外でも欧州勢との対戦を続けて来たアジア勢のさらなる躍進を期待したい。

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文●新垣博之(しんがき・ひろゆき)

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