【カタールW杯】強国ドイツに挑む森保ジャパン、勝機は「ビルドアップ」 ボランチ鎌田大地の可能性は… | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【カタールW杯】強国ドイツに挑む森保ジャパン、勝機は「ビルドアップ」 ボランチ鎌田大地の可能性は…

スポーツ 短信
【カタールW杯】強国ドイツに挑む森保ジャパン、勝機は「ビルドアップ」 ボランチ鎌田大地の可能性は…
  • 【カタールW杯】強国ドイツに挑む森保ジャパン、勝機は「ビルドアップ」 ボランチ鎌田大地の可能性は…

FIFAワールドカップカタール2022が20日に開幕した。

白熱した熱戦が続く中、日本代表(FIFAランク24位)は23日、W杯4度の優勝を誇るドイツ(11位)と対戦する。日本は17日にカナダ(41位)と本大会前最後の強化試合を戦い、1-2と逆転負け。これまで出場機会の少なかった選手や負傷からの復帰組が起用されたが、収穫はあったのか。

また、7大会連続出場となる日本は、過去6大会中、初戦で勝点(勝ち or 引き分け)を得た場合は3度とも決勝トーナメント進出に成功しており、逆に敗れた場合は全てグループステージ敗退に終わっている。最重要とされる対ドイツ初戦で勝敗の鍵となるのは…

◆識者が日本代表ドイツ戦を展望 カギ握る“バイエルンブロック”と19歳新星ムシアラ

■ドイツが恐れる「最強コンビ」

主力が温存されたカナダ戦は結果を気にする必要はない。心配なのは欠場した遠藤航(シュツットガルト)と守田英正(スポルティングCP)の状態だ。特に左ふくらはぎの違和感が続く守田は、ドイツ戦2日前でも別メニュー調整が続いている。

遠藤は強行出場も可能な模様だが、守田のドイツ戦出場は厳しそうだ。代役のMF田中碧(デュッセルドルフ)も負傷明け。カナダ戦を見る限り、ドイツ相手に攻守の要を任せられるレベルではない。

ただ、カナダ戦では大きな収穫があった。後半途中から本来トップ下のMF鎌田大地を1列下げたボランチで起用し、目途が立った。鎌田は今季フランクフルトの公式戦18試合に先発出場しているが、その内訳は、「ボランチ10、左サイド5、シャドー3」と、ボランチ起用が最も多い。懸念された守備面でもボール奪取やタックルの数でチームトップを記録する試合も出て来ている。

今季の鎌田はポジションを下げながらも、ブンデスリーガではすでにキャリアハイのリーグ7ゴール(全公式戦で12ゴール)を挙げるなど大活躍。ドイツ大手紙『キッカー』による第15節終了現在の平均パフォーマンス採点で、ブンデスリーガ全選手中のトップにも立っている。ドイツ戦は普段から対峙しているブンデスリーガに所属する選手たちが相手となる。鎌田のボランチ起用はベストな選択ではないか。

そんな鎌田の相棒となるのが、そのブンデスリーガで1対1による競り合い「デュエル」の勝利数が2年連続でトップとなった遠藤だ。「デュエル王」と「ブンデス最高評価選手」で組むダブルボランチは、ドイツの司令塔ジョシュア・キミッヒと重量級ボランチのレオン・ゴレツカによるバイエルンユニットも恐れる「最強コンビ」となりえる。

■日本がドイツを上回る意外なデータ

ドイツはボールを奪われてから5秒以内に奪い返す「ゲーゲン・プレス」と呼ばれる現代サッカーの戦術トレンドを産み出した国だ。現在もその最先端の戦術を採用し、発展させている。

そのプレスの強度を測る指数として『PPDA』なるスタッツが存在する。「Pass Allowed Per Defensive Actions」の略だが、具体的には「ボールを奪うまでに、相手に何本のパスを許したか」を示すための数値だ。つまり、この数値が低ければ低いほど、そのチームがかけるプレスの強度が高く、ボールを奪われてからも素早く奪い返せていることを裏付ける。

W杯に出場するレベルのチームのPPDAは「平均13前後」となる中、ドイツは「10.07」と大幅に世界基準を上回る。しかし、そのドイツを上回る「9.20」を記録する超ハイレベルなプレッシング大国が存在する。それが日本だ。データにはアメリカに史上ワーストとなる前半だけで54回のボールロストを記録させた9月の試合や、6月のブラジル戦も含まれている(米メディア『ESPN』より) 。

プレスの強度を上げるためには、攻撃時にショートパスを繋いで密集を作りながら前進し、ボールを奪われた瞬間にその密集のままプレスを仕掛けることが有効だ。日本人選手はその資質が高い。ブンデスリーガのクラブが多くの日本人選手を獲得するのは、ゲーゲンプレスに必要な資質を持つ選手が多いからだ。

■勝敗の鍵は、「ボールを奪った直後のパス精度」

ドイツ戦で勝敗の鍵を握るのは、「ボールを奪った直後のパス精度」だ。プレッシング合戦になった中でも、ボールを奪った直後の1本目、2本目のパスの精度が高ければ、おそらく3本目でビッグチャンスを生むパスが通る。ボールを奪いに前にプレスすれば、背後が空くためだ。

そのためにも自陣でパスをつなぐ「ビルドアップ」を優先する人選が必要だ。まず、マークが厳しいトップ下よりも、ボランチの位置で数多くボールを捌く鎌田だろう。彼が下がった位置にいれば、レンジの広いパスによる大きな展開からのカウンターが可能だ。

GKにもドイツの激しいプレスにさらされるDF・MF陣から積極的にバックパスを受けられる選手が必要だ。連動したプレスをかけて来ても、浮き球で交わすようなパスが通せるのは、シュミット・ダニエル(シント・トロイデン)だろう。カナダ戦でセットプレーを含めたハイボール処理に何度もミスを重ねた権田修一(清水エスパルス)よりも、身長で10cm上回り、9月のエクアドル戦ではPKストップも記録したシュミット起用のメリットは大きい。

■ドイツを叩くには今大会か

近年のドイツは日本同様、1トップに入る選手を固定できず、得点力不足に陥っている。『キッカー』と並ぶ大手紙『ビルト』紙では「W杯で誰を1トップに起用すべきか」とアンケートがとられ、全体約36%の票を集めたユスファ・ムココがトップで、2位には同30%のニクラス・フュルクルク、代表歴のない2人のFWに過半数を大きく上回る票が集まった。

おそらく日本と同じく[4-2-3-1]のシステムを採用するドイツの最前線には、本職トップ下のカイ・ハフェルツが入るだろう。ハフェルツは190cmの長身ながら技術に優れ、閃きやアイデアに溢れるが、さほどFWとしての怖さはない。

そこで本大会を前にドイツ代表のハンジ・フリック監督は、18歳になったばかりのムココと、今季リーグ14試合10ゴールと絶好調の長身FWフュルクルクを初招集。直近のオマーン戦でもなかなか得点を挙げられなかったドイツだが、途中出場のフュルクルクが決勝点を決めた。彼のパワーやムココのスピードが日本にとっては脅威に感じる。

ただし、日本は受けにまわるよりも、守備でも積極的に前に出た方が良さそうだ。あるいは、いったん引き込みながらもカウンターの準備をしておくことで、ビッグチャンスが生まれる可能性が高い。ドイツは攻撃時にボールを保持しながら左サイドバックのダビド・ラウムを高い位置に上げて戦う。ラウムは昨季DFながらリーグ5位の11アシストを記録したクロスマシーン。対面する日本の右サイドは低い位置での守備対応が求められるが、一転してボールを奪えばラウムの裏には伊東純也(スタッド・ランス)の大好物である広大なスペースが拡がっている、ここが日本の突破口となるだろう。

プレッシング戦術を筆頭に日本とドイツの戦い方は似ている。そして、日本が小気味良いパスサッカーを模倣しようとしているメキシコ、日本の永遠のライバルである韓国も同タイプとなる。

ドイツは前回のロシア大会で、そのメキシコと韓国に敗れ、まさかのグループステージ敗退を喫した。似たようなスタイルで長くプレーしているのはドイツではなく、メキシコであり、韓国だからだ。日本もそれに続く可能性がある。過渡期にある現在のドイツを倒し、日本がW杯史上初の優勝経験国からの金星を挙げるには、絶好のチャンスだろう。

◆識者が日本代表GSを展望 決勝T進出へ求められる森保監督の“大胆采配”と絶対的司令塔

◆【カタールW杯】日本代表、いよいよ明日対ドイツ初戦 0-2で敗戦が一番人気 WINNER予想

◆【カタールW杯】特集:日本代表の命運はいかに 対戦カード・日程・放送予定・結果一覧

文●新垣博之(しんがき・ひろゆき)

《SPREAD》
page top