【アジアクロスカントリーラリー】新生チーム三菱ラリーアートの挑戦とその展望 「WRC並みハイスピードの戦いか」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【アジアクロスカントリーラリー】新生チーム三菱ラリーアートの挑戦とその展望 「WRC並みハイスピードの戦いか」

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【アジアクロスカントリーラリー】新生チーム三菱ラリーアートの挑戦とその展望 「WRC並みハイスピードの戦いか」
  • 【アジアクロスカントリーラリー】新生チーム三菱ラリーアートの挑戦とその展望 「WRC並みハイスピードの戦いか」

間もなくアジア・クロスカントリー・ラリーAXCR)2022のエントリーリストが発表となる。

注目の的は、待望の実戦復帰を迎える新生チーム三菱ラリーアートだろう。三菱自動車としては7年ぶり、今回は多くのファンが望んできた「ラリーアート」の名を冠してであるからなおのことだ。その前に立ちはだかるライバルたちの陣容の全ては明らかではないが、独自に参戦表明をするチームも見られるようになってきた。

AXCRは昨年、一昨年とコロナ禍で開催が中止されている。そこで、より具体的なラリーの展望をそれまでトップチームとして活躍したTEAM JAOS(群馬県)に伺った。オフロード4WD車のパーツ開発と販売を行う株式会社ジャオスを母体とするチームはAXCRではトヨタハイラックスで継続参戦し、2019年にはクラス優勝を遂げている。チームとして新たなチャレンジを控える中、貴重な時間をさいてくれた赤星大二郎監督に感謝申し上げたい。

◆【アジアクロスカントリーラリー】新生チーム三菱ラリーアート、トライトンとともについに始動…

■2022年のコースから想定されるラリーの展開

TEAM JAOSのLX600 提供:JAOS

「タイを含む東南アジア地域は日本のようなハッキリとした四季はなく、3月~5月の暑季、6月~10月の雨季、そして11月~2月の乾季の三季となり、従来雨季の8月に開催されていたときはマッディーな路面コンディションでクロスカントリーラリーらしいスタックなどをどう攻略するかで勝敗が分かれる場面もありましたが、11月はドライ路面が予想され、また従来6日間(約2,000km)前後で開催されていたものが5日間(約1,700km)と短縮されたことで、WRCとは行かないまでもハイスピードの戦いになることが予想されます」

9月に開催された現地クロスカントリーラリーの様子  ソムバットウォン選手のSNSより

■エントリー発表前の注目マシンは……

「エントリーリストが発表になっていないので推測になりますが、AXCRの常勝チームであるTHE LAND TRANSPORT ASSOCIATION OF THAILAND ISUZUのマシン(いすゞD-MAX)と2016年から本格参戦を続けているTOYOTA CROSS COUNTRY TEAM THAILANDのマシン(トヨタHILUX REVO)が近年のAXCRの最有力車種であることは間違いありません。この2車種に加えフォードのハイパフォーマンス・ピックアップモデルのRANGER RAPTOR等も参戦すると聞いておりますし、日本から継続参戦している車いすドライバーの青木拓磨選手がドライブするトヨタFORTUNERも注目車種と言えるでしょう。初の実戦ということで未知数ですが、三菱トライトン増岡浩総監督のもとキッチリ仕上げてくるのではないでしょうか」

■チーム三菱ラリーアートの戦力をどう見る……

「チーム体制を拝見すると過去に現地ラリーアートに所縁あるメンバーと、これまでAXCRで実績のあるメンバーで混成チームを作られた印象です。私自身も2004年・2005年・2006年そして2015年・2016年のAXCRでコ・ドライバーを務めており、AXCRではドライバーの技量はもちろんですがミスコースをいかに回避できるかが勝敗を大きく分けるラリーと言われ、コ・ドライバーも重要なポジションです。今回チーム三菱ラリーアートに集められたコ・ドライバーの3名は、みな過去に一緒に戦ったことのある経験豊富なメンバーですが、特にピーラポン・ソムバットウォンは過去最も優勝経験があるいすゞチームのコ・ドライバーですので、移籍にはある意味一番驚きました」

「我々TEAM JAOSは同じ11月に開催されるバハ1000へ挑戦することになり、チーム三菱ラリーアートの現地メンバーや増岡総監督、日本人エンジニアの方々へエールを送ることしかできませんが、私自身そしてTEAM JAOSの礎を築いたAXCRを引き続き注視したいと思います」

◆【実際の映像】新生チーム三菱ラリーアート、増岡浩総監督からのメッセージ

TEAM JAOSは本年AXCRではなくメキシコで開催される不眠不休のデザートレース、バハ1000を新たなチャレンジのステージとしてレクサスLX600で出場する。

ちなみにバハ・シリーズは、三菱がパジェロでパリダカへの初挑戦を決定した1982年にオフロード競技車両の調査のために視察を行ったタフなイベントだ。また三菱自体も2000年の同大会(ミレニアム記念で「バハ2000」として開催)にはモンテロスポーツ(日本名・チャレンジャー)で出場し、増岡総監督がドライバーとしてクラス優勝を飾っている。

2000年バハ出場のチャレンジャー ラリーアートジャーナル2001 Vol.93

バハ1000でのTEAM JAOSの戦果については、改めて報告の機会を探りたい。そして、チャレンジャーと言えば…。

■新たな日本人チャレンジャー現る

公式エントリーリストの発表が待たれる中、新たな日本人チャレンジャーの情報をここで公開する。

パジェロスポーツ出場車両  提供:杉本達也

かつて三菱自動車のディーラーメカニックとして海外ラリーへの派遣、自らもランサー・エボリューション(グループN)でWRCにも参戦した杉本達也がAXCR2022に出場する。マシンは三菱自動車がタイで生産するパジェロスポーツ(2014年型)だ。

TT Motorsportでリフレッシュ作業中のパジェロスポーツ 提供:杉本達也

最新とは言えないマシンでの出場は一見小さなニュースではあるが、事実上ワークスチームの三菱ラリーアートと同じ国際ラリーを日本人プライベーターが三菱車で走ることは三菱だけでなく、クロスカントリーラリーの国内開催も増えつつある日本のモータースポーツにとっても大きな価値のある出場となるはずだ。

トライトン・ラリーカー 提供:三菱自動車

三菱ラリーアートは順調にテストを重ねてきただろう。「順調に」とは、パフォーマンスの確認だけでなく、実戦までにトラブルを出し尽くすことも含んでいる。そのプロセスも踏んだはずだ。

雨季をはずした未知の環境下で初開催となるAXCR2022のスタートは11月21日。注目である。

◆三菱ラリーアート、再参戦へのシナリオ 前編 新規定は前プロト同様に有利か…

◆【三菱ラリーアート正史】第1回 ブランドの復活宣言から、その黎明期を振り返る

著者プロフィール

中田由彦●広告プランナー、コピーライター

1963年茨城県生まれ。1986年三菱自動車に入社。2003年輸入車業界に転じ、それぞれで得たセールスプロモーションの知見を活かし広告・SPプランナー、CM(映像・音声メディア)ディレクター、コピーライターとして現在に至る。

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