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シアトル・マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクターのイチローが27日(日本時間28日)、球団殿堂入りのセレモニーに出席、16分半に渡るスピーチを「What’s up, Seattle?(シアトル、元気か)」という元気な一声からスタートさせ、大歓声を浴びた。
イチローのスピーチに先立ち、マリナーズのみならずメジャーのレジェンドからもメッセージが寄せられた。
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■「初めて会った時からイチローが好きだった」とケングリ
この日、スタジアムでの式典に列席したケン・グリフィーJr.はスクリーン映し出されたビデオ・メッセージで「95年に初めて会った時からイチローが好きだったよ」とコメント。まだメジャー挑戦前のイチローと日本食レストラン「ベニハナ」を訪れた際の映像も紹介された。「2人ともベストプレーヤーになるという目標があった」と当時を回想した。
イチロー入団当時のルー・ピネラ監督も登場。「彼が偉大な選手になると確信していたよ。稀代のヒッティング・マシンだ」と賛辞を送った。よもやまさか、この後、イチローのスピーチの中で2001年初勝利の際に彼に送ったキスをいじられるとは思ってもみなかったろう。
元同僚でもあり、通算本塁打700本を目前に今季限りでの引退を表明しているセントルイス・カージナルスのアルバート・プホルスも映し出され「マイ・ブラザー、“dulce de leche”、殿堂入りおめでとう」と極めて親しげに祝辞を述べた。
“dulce de leche”(ドゥルセ・デ・レチェ)は、牛乳に加糖してまぜるラテンアメリカ伝統的な甘い菓子。固体もしくは液体で提供される、キャラメルのようなもの。スペイン語圏では、極めて親しい人への呼びかけとしても使用される。
マリナーズ史上初のノーヒット・ノーランを達成、イチローの前に「51」を背負っていたことでも知られ、サイヤング賞5度、通算303勝のランディ・ジョンソンも祝辞とともに「次の殿堂入りも間違いないだろう」と3年後のMLB殿堂入りについても確信していると締めくくった。なお、ジョンソンは野茂英雄がメジャーデビューを飾った1995年、オールスターの先発同士で投げあったことでもオールドファンには知られる。
この後、イチローは「22年前、シアトル・マリナーズに加わり、人生が変わった」と語り始め、長年にわたってチームのオーナーを務めた故・山内溥元任天堂社長に対し「日本人野手として初めてメジャーでプレーする機会を与えて頂き、永遠に感謝する」と真摯に感謝の意を表した。
こうした熱意のこもった言葉を送り出す一方、同僚だった同席する左腕ジェイミー・モイヤーに対し「本当におしゃべりだった」と揶揄。「入団直後、ジェイミーが英語で30分間まくしたてるんですが、何を言っているかさっぱりわからなかった」と笑いを誘い、さらに「今では自分の英語もずいぶんと上達しましたが、それでもジェイミーが何を言ってるかわかりません」と爆笑を誘った。しかし最後には「49歳まで投げ続けた彼を本当に尊敬する」と謝辞でまとめた。
グリフィーJr.については「ジョージと呼びたい」と紹介。「彼はアメリカに来る前からボクのアイドルでした。彼が2009年にマリナーズに戻り、チームメートとなりました。彼はジョークの人だったが、同時に本当のプロで、どれだけ助けてくれたか、とても表現できません。彼のチームメートでいられたのは、ボクのキャリアのハイライトのひとつです」と冒頭のビデオ・メッセージへの答辞であるかように、MLBのレジェンドを讃えた。
イチローは、マリナーズのメンバーに向け、「やせ細った小さな日本人でもこうしてここに立つことができる。自分で自分に勝手な限界を設けなければ無限の可能性がある。ボクもここアメリカで19年も現役生活を送ることができるなんて思いもしなかった」と現役選手にエールを送り、最後にスタジアムに詰めかけたファンに向け「21年前から声援を送り続けてくれ、そしてそれを止めなかったみなさんに感謝します」とすると、ここでイチロー・コールが巻き起こった。
イチローはその声援に応えるように何度も頷き、さらに「2018年にチームに戻って来た際も、何もなかったかのように応援してくれました。このも最高の思い出のひとつとして決して忘れません」とスピーチを締めくくり、喝采を浴びた。
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文●SPREAD編集部