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1月8日、2日前に降った雪がまだ残るなか、メットライフドームでは『PERSOL THE LAST GAME 2021』(主催:スカパー!)が行われた。この日の主役は2020年、2021年をもってプロ野球を去ることとなった選手17名だ。
プロ野球においては毎年約100名の選手が現役を引退する。昨年の松坂大輔(元埼玉西武ライオンズ)のように、華々しい引退セレモニーという形で送り出される選手はごく僅か。多くの選手は別れの場もなくこの世界を去る。
所属チームでは引退セレモニーを行うことがなかった選手、この試合はそうした彼らが最後の勇姿を見せるために用意された引退試合だ。今回が初めての開催となる。
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■スタメンに内竜也などが名を連ねる
南要輔(元・東北楽天ゴールデンイーグルス)はこう言った。「自分が覚えている中で、初めて両親に野球を観に来てくれと誘った」。
野球人として野球で区切りをつけることができるということ、その重みは文字だけの戦力外通告とは全く異なる。そしてそれは選手本人だけでなく、これまで支えてきた家族やファンにとっても意味を持つ。
プレーを通じて、最後に選手、家族、ファンが互いに感謝を伝え合う、これまでになかった舞台が実現した。
試合は引退選手17名に、助っ人を加えて行われた。
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PERSOL THE LAST GAME 2021に挑む選手たち(C)市川嵩典
日本プロ野球OB会の協力もあり、定詰雅彦氏(元千葉ロッテ・マリーンズなど)も参加。引退選手は17名中投手が10名という構成であったが、スタメンでは内竜也(元千葉ロッテ)が捕手として出場するなど、17人全員がポジション関係なく、9イニングの試合にほぼフル出場を果たした。8-8というスコアで終わった3時間弱の試合では、各選手は皆、晴れやかな表情でプレーを続けた。
「プロ野球で、今日が一番楽しくやれた一日だった。こうした舞台を用意してくださった方々に感謝したい」と元阪神タイガースの鈴木翔太。
「嬉しかった。家族に最後投げている姿を見せることのない選手も多い中でこういう場を作っていただいて、本当によかった」と内。
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代表で挨拶をする元ヤクルト上田剛史(C)市川嵩典
元・東京ヤクルト・スワローズの上田剛史は「企画してくれた方々に感謝したい。こういう場があると、なかなかファンに挨拶できない選手もたくさんいるので、ありがたいし、こういう場を続けて欲しい」と感謝を表現すると、元同僚の山中浩史も「心の底から野球を楽しめた」と言葉を添えた。
■数多くの選手から「楽しかった」と感謝の気持ちが伝えられる
試合後の選手からは、まず第一声から感謝、楽しかった、と充実した表情が見てとれた。ファンにとっては気になる今後の進路だが、既に次の道へ歩み出している者もいる。
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ファンからのメッセージも(C)市川嵩典
「人生はこの先長いので、自分自身挑戦していきたい。チャレンジしていくことが大事なので、野球くらい打ち込めることを見つけられたら」と元・巨人の加藤壮太は、ジャイアンツアカデミーのコーチに就任し、その実感を口にした。
母校・関西高校のコーチに就任した上田も「今までの経験を1から10まで伝えたい。非常にやりがいを感じている」と意気込みを語った。
内は昨年「株式会社V-slider」を立ち上げ、千葉県でアカデミーを開設。「千葉出身のスポーツ選手が出るよう、アドバイスをしていきたい」とし、それぞれのコメントからは、今後の決意の強さを伺うことができた。
ヤクルト本社で営業職についた山中は「日々毎日が勉強」と奮闘中。上司には同じく元ヤクルトの青柳進氏が部長ということで「ご指導いただいています」と語る姿はすっかりビジネスマンだ。
現在は九州で工場勤務を続ける田原誠次(元・巨人)は「娘が、BTSが好きで。せっかくだから今しかできないしやっておこう」とクリスマス前に髪を青く染めてこの試合に臨んだ。巨人では絶対に見ることのできなかった姿での登場だったが、次は紫色を混ぜたいとのことで、こちらは娘思いのパパとして人生を歩んでいる。
野球に限らず、次の道に進むには自身の気持ちに整理をつけ、区切りをつけることが重要である。引退試合でプロ野球人生を締めくくることができた経験は、これからの人生に向けて少しでも前に進む原動力となるはずだ。
奇しくもこの日の午前中からは、メットライフドーム隣のCAR3219フィールドにて埼玉西武ライオンズの新人合同自主トレが始まった。プロ野球界の門を叩く選手、そして去る選手。これからのプロ野球との関わり方は正反対かもしれないが、野球を愛し、夢と希望を持って新たな人生へのスタートを切るという点では、どちらも同じベクトルにあるのではないだろうか。
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著者プロフィール
市川嵩典●フリーライターサッカーチームなどでのフロントスタッフを経て、現在は野球・サッカーを中心に様々なスポーツ中継・取材に携わる。年間約250試合の現地取材経験をもとに、競技・カテゴリーを問わず活動中。プライベートでも約30チームのファンクラブに入会、効率の良い優待利用を研究するのが日課。