【ボクシング】中谷潤人が圧巻米デビュー、尾川堅一も念願の世界王座…各階級日本人選手の現在地 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【ボクシング】中谷潤人が圧巻米デビュー、尾川堅一も念願の世界王座…各階級日本人選手の現在地

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【ボクシング】中谷潤人が圧巻米デビュー、尾川堅一も念願の世界王座…各階級日本人選手の現在地
  • 【ボクシング】中谷潤人が圧巻米デビュー、尾川堅一も念願の世界王座…各階級日本人選手の現在地

2020年に続き、今年もボクシング界はコロナ禍に悩まされた。試合の延期、カードの変更が数多く発生する異常な状況だったが、そのなかでも日本人選手の印象に残る活躍があった。今年行われた世界タイトル戦を中心に、軽量級から階級ごとに熱戦をまとめてみた。現在、日本人チャンピオンが何人いるかも確認していきたい。

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■谷口、京口の同門親友チャンピオンコンビが誕生

WBOミニマム級1位のサウスポー、谷口将隆は、12月14日、井上尚弥のアンダーカードに登場し同級王者のウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)を11ラウンドTKOで下して王座についた。谷口にとっては、2年前にビック・サルダール(フィリピン)に敗れて以来の2度目の挑戦。ついに念願が叶った。

谷口は、WBAライトフライ級王者・京口紘人と同じワタナベジム所属。ふたりは大学時代からのライバルで、かつ親友。今回のベルト奪取には、同門王者である京口のアドバイスが大きかったようだ。ふたりのチャンプを抱えた渡辺会長は、「関西でダブル防衛戦をやりたい」と計画を語っている。

その京口は、3月13日に米テキサス州ダラスのアメリカン・エアラインズ・センターでアクセル・アラルゴン・ベガ(メキシコ)と対戦した。小柄なベガが接近戦を仕掛けると、京口もそれに応戦。力を込めたフック、アッパーの打ち合いになった。試合は5回、ベガが京口の頭を打った際に右拳を負傷、試合続行不能となり、チャンピオンのTKO防衛となった。

■新スター候補、中谷潤人がアリゾナで快勝

京口と同じライトフライ級のWBC無敗王者、寺地拳四朗は9月22日に京都市体育館で矢吹正道の挑戦を受けた。この試合はチャンピオンのコロナ感染により当初のスケジュールより12日間延期されて開催。9回目の連続防衛に挑む寺地のコンディションが懸念された。

試合は序盤、互角の展開だったが、チャンピオンが出血して流れが挑戦者ペースに。そして、10ラウンド2分59秒、矢吹がラッシュしたところでレフリーがTKO勝ちを宣告した。アップセットを起こした矢吹は、17歳で長女、その後長男を授かった苦労人。両拳で4人家族を養ってきた。試合後、矢吹のバッティングが問題になり、初防衛戦は寺地とのリターンマッチになる予定だ。

今年、最も印象に残る試合をしたのは、WBOフライ級王者・中谷潤人だろう。9月に米アリゾナ州ツーソンの野外リングで行われた初防衛戦の相手は、プエルトリコの倒し屋、アンヘル・アコスタ。中谷は身長171センチ、リーチ170センチ、サウスポーという体格を生かして、アウトボクシングをすると思われたが、初回から強い左ストレートを打ち込んで圧倒。挑戦者が鼻を折って流血状態になると、レフリーがたまらず4回に試合をストップした。アメリカで強烈に強さをアピールした中谷はまだ23歳。井上尚弥に次ぐスター候補に名乗りを上げた。

■ライバル同士の井岡と田中は苦戦

WBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔は9月1日にフランシスコ・ロドリゲス・ジュニア(メキシコ)の挑戦を3-0の判定で退けて、3度目の防衛に成功。しかし、内容は決して褒められたものではなかった。格下挑戦者のパンチを不用意にもらい、劣勢に立つ場面すらあった。

しかも、ようやく決まったジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との統一戦が政府のコロナ水際対策のため延期となってしまった。12月31日には、代役の福永亮次とタイトルマッチを行うが、今回もチャンピオンの精神状態が心配だ。逆に福永にとっては、降って湧いたようなチャンス。高いモチベーションで挑むだろう。

その井岡に昨年の大晦日に敗れた元3階級王者・田中恒成は、12月11日に名古屋国際会議場で再起戦のリングに上がった。対戦相手はIBFスーパーフライ級5位の石田匠。田中がスピード、パンチ力で上回ると予想したが、石田もシャープな左右ストレートをヒットさせ、世界ランカー同士の好試合となった。

最終10ラウンド終了後の判定は、2-1で際どく田中が勝利。審判の一人は第7ラウンドに10-10をつけて1ポイント差で田中を支持していた。2022年は、田中の4階級制覇とともに、石田の戴冠にも期待したい。

■尾川はニューヨークで4年越しの戴冠

日本の“総大将”井上尚弥は、WBAスーパー、IBF世界バンタム級のベルトをかけて、2度の防衛戦を闘った。6月19日のマイケル・ダスマリナス(フィリピン)、12月14日のアラン・ディパエン(タイ)ともに、モンスターにとっては易しい相手。挑戦者の我慢強さに手を焼くシーンこそあったが、いずれも楽勝の内容だった。来年こそは、2年越しの目標である4団体統一を達成してほしい。

スーパーフェザー級の尾川堅一は、11月27日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで大仕事をした。IBF王座決定戦に出場し、アジンガ・フレジ(南アフリカ)から3度のノックダウンを奪って3-0の判定勝ちを収めたのだ。

尾川には4年前、テビン・ファーマー(アメリカ)を破って勝ち名乗りを受けながら、その後、ドーピング陽性で王座が幻になった悔しい経験がある。今回の決定戦も、相手や開催地が二転三転した末にようやく行われた試合だった。得意の右ストレートに磨きをかけて、苦労して手に入れたタイトルを守ってほしい。

6月には中谷正義が聖地ラスベガスで、元3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコとのライト級12回戦に臨んだ。ノンタイトル戦でありながら、異例の注目度となったこの試合、中谷は持ち前のタフネスを発揮するが、精密機械の異名を持つロマチェンコの前に9ラウンド1分48秒でTKO負け。試合直後には井上尚弥も自身のTwitterに「(ロマチェンコの)世界最高峰のテクニックは凄い…」と驚嘆のコメントを残した。

WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太は熱望していたゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との王座統一戦が目前で消滅。これで2年以上、リングから遠ざかることになる。本人の言葉どおり「試練のとき」だろう。早い時期の対戦実現をともに待ちたい。

今年は海外のリングで躍動する日本人選手が目立った。2022年は、8人の世界チャンピオンはもちろん、新たに王座獲得を目指すボクサーたちの胸のすくような活躍を期待したい。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

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