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2021年のペナントレースはコロナ禍での実施となり、観客動員数や報道陣などの制限、外国人選手の入国制限など様々な影響があったが、優勝や順位争いに直結したのが「延長戦なし、9回打ち切り」の“特別ルール”だった。
その影響は、引き分けの数を見れば一目瞭然だ。コロナ前、延長12回まで行われた2019年の両リーグの引き分け数が22試合だったのに対して、今季は102試合と激増。チーム別に見ると、ソフトバンクが最多の引き分け「21」で、最少の阪神でも引き分け「10」。セ・パ12球団すべてが2ケタ引き分けに達している。
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■マイナスゲーム差の“珍事”も
この特別ルールはチーム順位に関わり、割を食う結果となったと言えるのが、前述した最少引き分け数の阪神だ。阪神は今季、12球団最多となるシーズン77勝を記録しながら、リーグ2位に終わった。これは今季のレギュラーシーズンの順位が勝ち数でなく、勝率によって決まることになっていたためで、73勝でも18試合の引き分けで勝率計算の“分母”を小さくしていたヤクルトにリーグ優勝をさらわれたかたちとなった。
具体的に計算すると、阪神が77勝/133(143試合-引き分け数10)=勝率.579だったのに対して、ヤクルトは73勝/125(143試合-引き分け数18)=勝率.584となったわけだ。今季は引き分け数の多さからシーズン途中には、貯金の多いチームの勝率が少ないチームの勝率を下回ることがあり、マイナスゲーム差(マイナス0.5ゲーム差で首位など)という珍事もしばしばあった。
■特別ルールならではの「Xゲーム」
また、この引き分けの多さは個人成績にも影響している。今季は9回で試合が打ち切られるため、従来なら基本はリードした場面の最後のイニングにしか登板しないクローザーが、ホームゲームで同点の9回に登板するケースが多くなった。
セ・リーグの新人王に輝いた広島・栗林良吏は、開幕からストッパーとして起用され、53試合に登板して失点したのはわずか4試合だったが、セーブ数は37でリーグ2位。開幕から22試合連続無失点を記録して連続無失点試合数の新人記録を更新し、史上2位タイの20試合連続セーブ(継続中)など数々の記録を樹立し、歴代新人タイとなるセーブ数でルーキーイヤーを終えた栗林だが、通常のシーズンの勝ちゲーム限定の起用法であれば、まだまだ数字を伸ばしていた可能性もある。
クライマックスシリーズでは、ファーストステージでロッテ、ファイナルステージではヤクルトと、ホームチームが同点のまま9回表を終えて裏の攻撃を行わず、試合終了となった。パ・リーグのファイナルステージは、ホームのオリックスが1点ビハインドの9回裏に小田裕也が同点打を放ち、まるでサヨナラ勝ちのようなかたちで日本シリーズ進出を決めた。いわゆるXゲームと言われるこの結末は、今季の特別ルールならではの現象だった。
“引き分け”という概念のないMLBではあり得ない光景が、例年よりもより多く見られ、ペナントレースにも影響を与えた新型コロナウイルス感染症。異例のシーズンとなるのは、今年だけであって欲しいものだ。
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記事提供:ベースボール・タイムズデータ提供:野球DB