【Bリーグ】悲願の制覇を胸に誓う川崎ブレイブサンダース、新シーズンも4強時代が続くか | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【Bリーグ】悲願の制覇を胸に誓う川崎ブレイブサンダース、新シーズンも4強時代が続くか

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【Bリーグ】悲願の制覇を胸に誓う川崎ブレイブサンダース、新シーズンも4強時代が続くか
  • 【Bリーグ】悲願の制覇を胸に誓う川崎ブレイブサンダース、新シーズンも4強時代が続くか

今年3月、川崎ブレイブサンダースは第96回 天皇杯全日本バスケットボール選手権大会を制し、Bリーグ発足後初となるタイトルを獲得した。毎年優勝候補に名を挙げられながら、なかなか達成できなかった強豪チームには昨シーズン、Bリーグとの2冠達成にも期待がかかっていた。

しかし残念ながら結果はチャンピオンシップに進出するもクォーターファイナルで敗退。Bリーグ初年度、当時の栃木ブレックス(現・宇都宮ブレックス)にファイナルで破れ準優勝した後は毎年クォーターファイナルで涙を飲む結果が続いている。

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■川崎キャプテン篠山竜青の無念

篠山竜青は日本大学卒業後、2011年から前身・東芝ブレイブサンダースに加入、長く川崎のキャプテンとしてもチームをけん引してきた。日本代表としても日本のバスケットボールのレベルアップや五輪出場を目指し活躍を続けてきた選手だ。

しかし、45年ぶりの本大会の出場、さらには地元開催の東京五輪が目前に迫った6月20日から東北で行われた第5次強化合宿に篠山の姿がなかった。この合宿が最終選考の舞台だった。その直前フィリピンで開催されていたアジアカップ予選の最終戦で、プレー面だけでなくコート内外問わず誰よりも喜び讃え鼓舞し続けてきたキャプテン篠山の東京五輪への挑戦は終わりを告げた。

2021年9月12日に行われた川崎対横浜戦でのファジーカス選手©KAWASAKI BRAVE THUNDERS

篠山だけではない。チームメートであり2018年4月に日本国籍を取得し代表でプレーをして来たニック・ファジーカスも共に、東京五輪出場や日本バスケットボールの底上げに大きく貢献したが、メンバーから外れた。

篠山、ファジーカスともに、その悔しさ、無念は計り知れない。だが、その思いをぶつけ少しでも悔しさを晴らすためには、Bリーグ初制覇を成し遂げるしかないだろう。

■世界トップレベルと日本の差

9月12日に行われたプレシーズンマッチ、横浜ビーコルセアーズ戦では控えとして出場した篠山は、昨シーズンに比べると少し線が細くなった印象を受けた。隔離期間も長かったため、じっくりトレーニングができなかったことも影響しているだろう。プレータイムも長くはなかった。これからコンディションをさらに上げ開幕へと調整していくことだろう。

篠山は身長178センチ。フリオ・ラマス日本代表ヘッドコーチは篠山落選の理由にこの身長を挙げていた。180センチ以下の選手をポイントガードに2人メンバー入りさせることを渋ったのだ。結果的に、192センチの田中大貴アルバルク東京)が即席ポイントガードとしてスタメン起用された。

しかし、ポイントガードとしての経験の無いまま結果を出すことは容易ではない。日本代表は世界と戦えるレベルにはなったものの世界のトップレベルの国との差は明確だった。

■五輪から得たものとは……

川崎を率いるのは就任3シーズン目となる佐藤賢次ヘッドコーチだ。北卓也ゼネラルマネージャーがヘッドコーチ時代だった8シーズン、アシスタントコーチとして選手の育成にも丁寧に取り組んできた。

アシスタントコーチ時代から「サイズで不利でも世界で通用する選手を育てたい」と言い続けている。今回、横浜戦後の会見でも「Bリーグ優勝以外にも、選手を育てて日本のバスケットボールを強くしていかなければならない。決意を持って取り組む」と熱く語っていた。

日本代表として川崎の選手が五輪の舞台に立つことはなかったが、サポートコーチ兼通訳として勝久ジェフリーアシスタントコーチが帯同していた。「世界の強豪国との差はシュートを決め切る力」など、勝久アシスタントコーチの経験は五輪後チームに多くのものをもたらせているという。

今シーズンのチームコンセプトには、佐藤ヘッドコーチも五輪を見ていて最も感じたという「目の前の一瞬の隙を世界は見逃さない。一人一人が絶対逃さず周りも連動する」ことを取り入れた。

■チームへのカンフル剤となる移籍

篠山は33歳、ファジーカスは36歳。年齢的に考えても現メンバーで優勝を果たせる機会はもう限られている。「B.LEAGUE AWARD SHOW 2019−20」そして「B.LEAGUE AWARD SHOW 20−21」ともに個人賞三冠を達成(19−20シーズンは「ベスト5」「ベスト6thマン賞」「ベストディフェンダー賞」、20−21シーズンは「ベスト5」「ベストディフェンダー賞」「ベストタフショット賞」をそれぞれ受賞)、Bリーグファンを驚かせた藤井祐眞も29歳になり、すっかりリーグを代表するベテラン選手の一人に成長を遂げた。

今オフ、篠山らと共に日本代表として活躍したシューターの辻直人広島ドラゴンフライズへ移籍しBリーグファンを驚かせた。そして同じくシューターの大塚裕土も今シーズンからB3リーグへ参入するアルティーリ千葉へと移籍した。

代わって、欧州リーグなどで活躍してきたマット・ジャニングや、富山グラウジーズから24歳の前田悟などを獲得した。前田は19−20シーズンに新人賞に輝いている。前田の3ポイントシュートの成功数と成功率を見てみるとBリーグでは2シーズン連続でトップ10に入っている。まさに日本バスケットボールのこれからを担うべき一人と言える。

リーグ屈指のシューターが移籍でチームを離れていったこと、勢いのある若手の加入は川崎にとって良いカンフル剤となりそうだ。昨シーズンまで「隣に辻や大塚がいると思わずパスをしてしまうシーンがあった。あなた達も打てる、できるでしょうと思っていた」と佐藤ヘッドコーチは振り返る。

しかし、今その頼るべきシューターはいない。各選手が責任感を持ちシュートを打ち抜いていく姿勢や意識は横浜戦でも垣間見ることができた。

さらに前田の加入がチーム内競争を刺激する。試合後の会見でも「コーチに求められることをするのがプロ」としながらもスタメンへのこだわりを覗かせていた。昨シーズン在籍していた富山はチャンピオンシップに進出しクォーターファイナルで琉球ゴールデンキングスと対戦した。残念ながらセミファイナル進出を果たせなかった。その際に「ルーズボールや球際の強さ、さらにディフェンスの強度など」に差を感じたと語る。

その悔しさから「もうワンランク、ツーランク上を目指したい」と、かねてから憧れていた川崎への移籍を決断した。前田は「最大の武器はスリーポイントシュート。川崎ではボールハンドラーにも挑戦したい、プレーの幅を広げたい」と力を込めた。そこにはチャンピオンシップでの経験だけでなく、五輪を見ながら世界の舞台で戦う選手には「スリーポイントシュートともう一つの何か」武器があると感じたことも影響している。

Bリーグ制覇だけでなく世界で戦う選手を育て、日本のバスケットボールをさらに強くしていくと強い決意を持ったコーチ陣の下、前田がどう成長していくのかも楽しみにしたい。

■今シーズンも4強時代が続くのか……

アルバルク東京はどこよりも昨シーズン新型コロナウィルス感染症に悩まされた。外国籍選手の合流遅れや、選手の相次ぐ感染。その経験から、昨シーズン覇者千葉ジェッツからセバスチャン・サイズ、準優勝の宇都宮ブレックスからは帰化選手であるライアン・ロシターを獲得するなど驚きの補強を行った。

さらに昨シーズンのファイナル進出チームの千葉ジェッツと宇都宮ブレックス、そして天皇杯優勝の川崎ブレイブサンダース、今シーズンもBリーグは4強時代が続くのか。

これまで、Bリーグは東高西低であった。しかし今シーズン、島根スサノオマジックは昨シーズンMVPの日本代表金丸晃輔を獲得。川崎から辻直人が移籍した広島など本格的な補強を行った注目のチームが豊富だ。チャンピオンシップ常連の琉球ゴールデンキングスとともに西地区を盛り上げる。

チャンピオンシップ進出チームには東地区の強豪がズラリと並んできたが、今シーズンは果たしてどうなるのか。戦力や経験を見れば、引き続き4強の構図ではあるが明らかにその差は縮まりつつあり、どのチームも油断はできない。

コロナ禍で難しい戦いは今シーズンも変わらないが、最後に笑うのはどのチームなのか。日本のバスケットボールが世界との差を縮めていくためにも、日々にリーグでの戦いが非常に大切になる。

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■著者プロフィール

木村英里(きむら・えり)●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。

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