【テニス】“小さな巨人”シュワルツマンが全米OPで躍動 身長差33cmの相手を撃破できたワケ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【テニス】“小さな巨人”シュワルツマンが全米OPで躍動 身長差33cmの相手を撃破できたワケ

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【テニス】“小さな巨人”シュワルツマンが全米OPで躍動 身長差33cmの相手を撃破できたワケ
  • 【テニス】“小さな巨人”シュワルツマンが全米OPで躍動 身長差33cmの相手を撃破できたワケ

テニスの全米オープンは2日、男子シングルス2回戦が行われ、元世界ランキング8位で第11シードのディエゴ・シュワルツマンアルゼンチン)が、ビッグサーブが持ち味のケビン・アンダーソン南アフリカ)を7-6(4)、6-3、6-4で撃破。シュワルツマンは悪天候による複数回の試合中断を乗り越え、3回戦進出を果たした。

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■大型選手との体格差を巧みなプレーでカバー

シュワルツマンのテニスが、何故ここまで筆者を興奮させるのか……。ただ、彼のプレーを見ているとワクワクするのだ。その理由は、大型選手との体格やパワーの差を、巧みなプレーで見事にクリアしてくれるからかもしれない。

筆者の現役時代には、高身長の相手による角度のついた高速サーブに苦しんだり、スピンボールを駆使しても相手にとってはちょうどパワーヒットしやすい腰の高さになってしまったりと、ある種の“壁”のようなものを感じていた。シュワルツマンは身長170センチ、体重64キロと小柄な体格で、男子の中では最小クラスだ。しかし、彼は大型選手たちの中で埋もれることなく勝利を手中に収めている。

元世界ランキング5位の実力者で身長203センチのアンダーソンとの一戦でも、鍛えられたフィジカルを武器に強烈なショットを連発していた。体をフルに使ったストロークでボールに十分な回転量と重さを与え、アンダーソンを前後左右に振り回しバランスを崩すことに成功。果敢に勝負をかけ、相手を圧倒した。そして相手の攻撃に対しても、とにかく走りまくり、パワー負けしないコートカバーリングから鮮やかなパッシングショットを決めるのが彼の魅力の一つ。自信と闘志がみなぎる気迫ある声のせいか、170センチのシュワルツマンは不思議とコートの中で大きく見える。

■数字で見るアンダーソン撃破の要因

アンダーソンの最大の武器である時速200キロを超えるサーブに対しても、リターンのポジションを上手く変え、試合中盤からは見事にアジャストし流れを引き寄せた。アンダーソンは1回戦のイジー・ベセリー(チェコ)戦で49本のエースを決めていたが、今回のシュワルツマン戦では24本と半減。これもシュワルツマンのリターン返球率の高さと、セカンドサーブでの攻撃でプレッシャーを与えたことが影響している。

アンダーソンの24本のサービスエースに対して、シュワルツマンのエースは1本。ファーストサーブの平均速度も約30キロ差と、エース数とスピードは圧倒的に劣った。それでも、ファーストサーブの確率はアンダーソンより3%高い71%をマークし、ファーストサービスからのポイント取得率も76%と、ストローク戦での組み立てで優位に立ったことが数字からも見て取れる。シュワルツマンはセカンドサーブからのポイント取得も28本中17本(61%)と、相手の猛プッシュを耐え抜き、サービスゲームの安定感からチャンスをモノにした。

本人も試合後「最後の2セットでは最高のテニスができたので、とても満足している。チャンスをものにできたし、セカンドサーブも持ちこたえることができた」と語っている。

■次戦は170センチ同士の対決に

シュワルツマンと同セクションに入っていた第19シードのジョン・イスナー(アメリカ)が1回戦で敗れたこともあり、3回戦では今年のベオグラード・オープンのファイナリストであるアレックス・モルカンスロバキア)と対戦予定。「モルカンが良いテニスをしているのは知っているよ。僕とほぼ同じサイズだから良い試合になるだろうね」と3回戦への意気込みを見せている。

3回戦を突破すると、第8シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)が2回戦で姿を消していることから、ノーシードのボティク・ファン・デ・ザンスフルプオランダ)とファクンド・バグニスアルゼンチン)戦の勝者と4回戦で顔を合わすことになり、全米オープン自己ベストの成績を残すチャンスも巡ってくる。

シュワルツマンの運動量に対して、対戦相手がどのように対策し攻撃的なテニスを展開するのか。今後も見どころ満載の戦いが続きそうだ。

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◆【著者プロフィール】久見香奈恵 記事一覧

著者プロフィール

久見香奈恵●元プロ・テニス・プレーヤー、日本テニス協会 広報委員1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動をはじめ後世への強化指導合宿で活躍中。国内でのプロツアーの大会運営にも力を注ぐ。

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