【テニス】18歳での引退からカムバック バーティが叶えた夢のウィンブルドン制覇 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【テニス】18歳での引退からカムバック バーティが叶えた夢のウィンブルドン制覇

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【テニス】18歳での引退からカムバック バーティが叶えた夢のウィンブルドン制覇
  • 【テニス】18歳での引退からカムバック バーティが叶えた夢のウィンブルドン制覇

アシュリー・バーティのテニス人生に、またひとつ大きな優勝シャーレが加えられた。彼女が切望してきたヴィーナス・ローズウォーター・ディッシュである。


■怪我を乗り越えウィンブルドン初優勝


この優勝シャーレにキスをするひと月前、彼女は全仏オープンの2回戦を左股関節の怪我により途中棄権した。怪我の全容は明かされないままだったが、「全治2カ月」だったと今大会終了後に告白、「ウィンブルドンでプレーできたことは奇跡だった」と振り返った。体力面での不安材料を抱え「ぶっつけ本番」で臨んだ今大会、しかし見る者に怪我の状態など悟らせないほど完成度の高いテニスを見せた。覚悟を決めていたかのような凛々しい彼女の表情には、そんな理由があったのだろう。


母国オーストラリアの英雄、同じくアボリジニの血をひき、グランドスラム大会7度優勝のイボンヌ・グーラゴングからインスピレーションを得て制作したウェアも、大会前から話題となり、彼女の挑戦を後押し。ひらりと揺れるレースカットの花柄ウェアからは、半世紀前にこの地で初優勝を飾ったグーラゴングの姿が思い起こさせ、オーストラリア国民は現代のスターであるバーティと彼女の姿をだぶらせては、優勝を期待した。


◆【動画/優勝の瞬間】「子供の頃からの夢実現」泣き崩れるバーティと観客の大歓声


■控え目なバーティが口にした“人生最大の目標”


素朴で控え目とも言えるバーティが「テニス人生で最大の目標はウィンブルドンでの優勝」と公言したのは昨夏、オーストラリア公共番組『one plus one』のインタビューでのこと。


バーティのコーチであるクレイグ・タイザー氏は、「ウィンブルドン優勝の目標は彼女の心の中にいつもあったと思う。私がやりたいことはこれだ、と言い切ることはとても大変なことだ。しかし、それを口に出すことは彼女にとって大きな一歩だった」と語っている。


またウィンブルドンを2度制覇したグーラゴングも、バーティが口にした目標にエールを送った。「私も後年になるまで真の目標をあまり話さなかったと思います。自分の中で秘めていたようなものですから。でも言葉にし始めると、いろいろなことが起こりだします。夢は叶う。これは私が彼女に贈る最後のメッセージです」。


■得意のバックハンドで相手選手を翻弄


バーティは彼女のメンターでもあるグーラゴングの栄光を追いかけるように、ウィンブルドンの神聖な芝の上を駆け回った。1回戦から彼女の代名詞であるバックハンドのスライスショットを放ちまくり、対戦したすべての選手を苦しめた。


第8シードのカロリナ・プリスコバとの決勝戦でもこのショットは、その威力を大いに発揮。ハードヒットを持ち味としているプリスコバに対して、バーティは序盤からスピンショットとスライスショットを織り交ぜ、プリスコバにペースを掴ませなかった。プリスコバはバーティのスライスショットを上げることに精いっぱい、ボールをひっぱたくチャンスを得られないことで、フラストレーションが溜まり続けていく。


時間を費やし、低く滑ってくるボールをようやく持ち上げられたかと思うと「待ってました!」と言わんばかりにフォアハンドのエースをお見舞いされる。プリスコバも数少ないチャンスを見つけては強打を仕掛けるが、その攻撃が、まるでなかったかのようにスライスでペースを戻され、バーティの術中にはまっている現実に直面し嫌気がさしたことだろう。


■子どもたちに伝えたい「夢は叶う」


近年、女子テニスにもパワーテニスの波が押し寄せる中、これほど豊富なショットバリエーションをそろえ、戦える選手はバーティ以外にない。こうしたバーティの活躍に惹かれ、スライスショットを武器に戦う選手がもっと生まれてきてほしいもの。


18歳で一度引退、それでもカムバックを成し遂げたテニス人生最大の目標を達成した世界No,1プレーヤーは、ウィンブルドン制覇について涙を浮かべながら、こう語った。


「オーストラリア人はスポーツの分野で豊かな歴史を持っています。そのほんの一部を担うことができるということを、私はいつも夢見ていた。つまり、レガシー(遺産)を作り、女の子や男の子が自分の夢を信じられるような道を作ることです」。


「Dreams do come true:夢は叶う」、そうインスタグラムに書き込んだ彼女の想いは、十分に母国オーストラリアに届いているだろう。


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著者プロフィール


久見香奈恵1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動をはじめ後世への強化指導合宿で活躍中。国内でのプロツアーの大会運営にも力を注ぐ。


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