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ジャパンラグビートップリーグのヤマハ発動機ジュビロは23日、静岡県庁で記者会見を行い、来年度から始まる新リーグ参入に向けてチーム運営会社を設立すると発表。新チームの名称は「静岡ブルーレヴズ」となる。
■静岡県全域からのサポートが必須
2003年にスタートした「ジャパンラグビートップリーグ」は2021年シーズン終了とともに幕を下ろし、2022年からは新リーグがスタートする。新リーグ構想の中核は、各チームがしっかりと事業機能を持つこと。これまで大企業の一事業部として運営されていたチームが、それぞれ独立した会社として採算を取ることになる。分かりやすくいえば、社会人サッカーがJリーグに移行した状況とも似ている。
新リーグ1部は12チームで構成されることが決まっているが、先陣を切ってヤマハ発動機ジュビロが新リーグに臨む体制を発表した。新しいチームの名称は「静岡ブルーレヴズ」。運営する新会社はヤマハ発動機の子会社で「静岡ブルーレヴズ株式会社」となった。
新リーグに参加する条件として、チーム名に地域名を入れるという一項がある。これはプロ野球やJリーグの成功例から、ホームエリアとの密接な関係が欠かせないという判断からだ。「磐田」ではなく「静岡」となったのは、静岡県全域からのサポートを受けたいという気持ちの表れだろう。ロゴマークには富士山と草薙剣が取り入れられている。会見には静岡県の大石スポーツ政策課課長が登壇し、県内の小中学校でラグビーを普及させたい、と抱負を語った。
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新チームのロゴ(C)静岡ブルーレヴズ
ただ、ファンのなかには「磐田」や「ジュビロ」という名称に愛着を抱いている人も多いはず。今後いかにホームエリアと“密着”できるかが鍵となるだろう。なお、「ブルー」はヤマハのイメージカラー、「レヴズ」は同じく親会社のブランドスローガン「Revs your Heart」から取られている。
■茨城ロボッツを再建した山谷拓志氏が社長就任
7月1日付で新社長に就くのは、株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメント(バスケットボール男子Bリーグ「茨城ロボッツ」の運営会社)代表取締役社長の山谷拓志氏。茨城ロボッツの再建など、これまでの実績を買われての招聘となった。
山谷社長は新チームの「ミッション」に「革新と情熱で、心躍る最高の感動をつくりだす」を掲げ、ワクワク感と期待を届けるチームを作ることを約束した。また、「ビジョン」は「静岡から世界を魅了する、日本一のプロフェッショナルラグビークラブをつくる」とし、「富士山のある県のチームが日本一にふさわしい」と意気込みを語った。静岡県がラグビー王国となるか、その手腕に期待がかかる。
■五郎丸歩氏もフロント入り
新会社には課題もある。これまでは日本ラグビー協会が試合の興行を行っていたが、これからは各クラブが試合を主催する。ファンがスタジアムに集まらなければ、事業の先行きは不透明となる。具体的にはファンクラブ、スクールアカデミーなどの活動も通じた固定客の獲得が必須だ。
そこで注目されるのが、五郎丸歩氏だ。五郎丸氏は現役引退後、経営者を目指して新会社に入ることをすでに表明していたが、この日の会見でもまずはフロントスタッフとして現場に立ち、新チームのPR活動などに従事すると発表された。山谷社長も「将来は社長になるような力をつけて欲しい」と大きな期待を寄せている。
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著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。