【スーパーフォーミュラ】第2戦オーバーテイクシステムが生んだストーリー  山本とアレジの巧みさ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【スーパーフォーミュラ】第2戦オーバーテイクシステムが生んだストーリー  山本とアレジの巧みさ

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【スーパーフォーミュラ】第2戦オーバーテイクシステムが生んだストーリー  山本とアレジの巧みさ
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野尻智紀無限)の開幕2連勝で決着したスーパーフォーミュラ第2戦だが、決して楽勝ではなくチーム、ドライバーの力はやはり拮抗しており、さらに今回はレース距離170kmのスプリントレースということで、オーバーテイクが難しいと言われる鈴鹿を舞台に終始見ごたえのあるバトルが展開された。見どころが多かったひとつの要因と考えられるのが、あるレギュレーションが今季変更になった点。ドライバーのボタン操作により燃料流量が瞬間的に増しパワーアップできる「オーバーテイクシステム」のトータル使用限度が、従来の100秒から200秒に増えた。

◆【順位結果】2021スーパーフォーミュラ第2戦鈴鹿 決勝レース

■オーバーテイクシステムの効果とは……

象徴的なシーンのひとつが20周目、セーフティカー後のリスタートだった。各ギャップが詰まったことでここがチャンスとばかりに、ほぼ全マシンがオーバーテイクシステムをオンにし、順位浮上を試みた。その中でおそらく唯一だったと思うが、システムを使っていなかったのが中団を走っていたディフェンディングチャンピオンの山本尚貴ナカジマ)。

山本は抜きにかかる後方のマシンを巧みに抑えた後、前のマシンがシステムをオフにしたタイミングで自らをオン。一度使った後は100秒間使用できなくなる隙をついて、見事にオーバーテイクを成功させた。山本は今季チームを移籍し、オフから開幕戦を迎えても不振から抜け出せないでいた。開幕戦では決勝で粘り強く6位まで追い上げたものの、予選は屈辱のQ1敗退。第2戦も大きな改善は見られず予選10位とパッとしなかったが、レースでは過去3度タイトルを獲った“巧者”らしさを見せてくれた。

もうひとつがレース終盤、ルーキーイヤーの昨季第6戦で初優勝を飾ってから波に乗る大湯都史樹が、今回スポット参戦したジュリアーノ・アレジトムス)にオーバーテイクされたシーンだ。アレジは、世界耐久選手権WEC)出場のため参戦できなかった中嶋一貴の代役として出走していた。

大湯はこの第2戦も速さを見せ、予選では3番手を獲得。ところがレースでは、スタートでエンジンストールしてしまい一気に14位まで後退。そこから怒涛の挽回を見せるのだが、オーバーテイクシステムはすでに200秒使い切ってしまっていた。レースペースはもちろん大湯の方が上でシステムが残って入れば防ぐことができていたはずが、ここまで温存していたアレジにしてやられた。

そのアレジが第2戦決勝終了のすぐ後に行われた今季の主戦場スーパーフォーミュラ・ライツ第6戦で2位入賞し、その記者会見で興味深いことを話していた。このレースでのアレジの2位は、最後まで後続から攻められ続けながらなんとか死守した2位だった。

「ライツにオーバーテイクシステムがなくて良かった。あったら抜かれていたから。でも、オーバーテイクシステムが使えるレースはとても楽しいよ」。

本来のスピードで負けていても、短時間であれば真っ向勝負を可能にするオーバーテイクシステム。スーパーフォーミュラが独自で採用し、勝負所をよりエキサイティングに演出する画期的なシステムだ。使用できる時間が今季は倍になりスーパーフォーミュラは全戦が170km~195kmのスプリントレースということで、さらに戦略性は高まっている。

ドライバーのヘルメット上部のランプが点滅したらシステムをオンにしたということ。これはオーバーテイクに今から挑むという意思表示ともとれるもので、シールドに隠れ普段は見えないドライバーの内面をも垣間見せてくれる。レース観戦の際はこのランプにぜひ注目してほしい。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。

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