■輝きが増した黄金世代・原英莉花 国内メジャー2連勝
2020年の国内女子ツアー最終戦、JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップは、黄金世代の一角、21歳の原英莉花が通算10アンダーをマークし、初日から一度も首位を明け渡すことのない完全優勝を果たし、10月の日本女子オープンに続く国内メジャー2連勝、ツアー通算3勝目を果たした。
今大会の原は、結果的に4日間トータルのフェアウェーキープ率は57%(出場37人中21位)と、ショットの精度はいまひとつで、得意のアイアンも本調子ではなかった。それでも、初日の2番で今年最初のイーグルを奪取して波に乗ると、5アンダーで飛び出し単独首位に。2日目も4つスコアを伸ばし、2位に2打差で前半を折り返す。3日目は一つしか伸ばせなかったが、首位に並ばれることなく最終日へ。
10位タイ11人がトップから6打差以内と混戦模様となったが、後続の選手が宮崎CC特有のコーライグリーンに手を焼いてスコアを伸ばせない中、原は平均パット29とグリーン上で強さを発揮。時には2メートル弱のパーパットでも、そんなに強く打たなくても、というような攻めのパットを見せ、スコアメークしていった。13番ではティショットが大きく右の林に逸れ、あわやOBかと思われたが、木に当たってラフに戻ってくる幸運もあり、このホールをバーディーに。そういう勝負運も、この日の原は持ち合わせていたのかもしれない。
国内メジャー4勝の畑岡奈紗や、海外を含むメジャー2勝の渋野日向子ら、98年度生まれの黄金世代の中では後れを取っていた原だが、今年だけで「日本一」と「ツアーチャンピオン」という二つの大きな称号を獲得。今年は国内14試合しか行われておらず、昨年の数字と単純比較はできないが、平均ストロークやパーオン率、フェアウェーキープ率など、ほとんどの項目で昨年の数字を上回っており、着実に強さが増し、前記二人に肩を並べた、といっても過言ではない。
今後は、初の海外メジャー参戦となる、12月10日に開幕する全米女子オープンが控えている。国内メジャー2大会の覇者として、世界最高の舞台でどんな戦いを演じてくれるのか、大いに注目したい。
■群雄割拠の国内女子ゴルフ ニューヒロインの座は誰が射止めるか
さて、コロナ禍に見舞われた2020年の国内女子ツアー。当初は37試合が予定されていたが、最終的には半数以下の14試合の開催にとどまり、賞金ランキングは2021年シーズンと統合され、2年間にわたる争いに変更された。
そんな中、昨年は全英女子オープンを制した渋野が「スマイルシンデレラ」として一躍脚光を浴びたが、今年も20歳前後の若いニューヒロインが誕生し、国内女子ツアーを賑わせた。
まずは現在賞金ランキング1位に立ち、新世紀世代とも言われる、19歳の笹生優花。今年、プロ転向後2戦目のNEC軽井沢72ゴルフトーナメントで初優勝を果たすと、続くニトリレディスゴルフトーナメントで2戦連続優勝と、華々しいデビューを飾った。
“女タイガーウッズ”と称される笹生の武器はドライバーショット。ヘッドスピードは46.5m/s、ボール初速は66m/sを超え、男子プロ並みの数字を記録するほど。そのセンセーショナルな活躍から、どこまで勝ち星を量産するのか、と期待されたが、その後は予選落ちも2回経験するなど、ポカも目立つことに。不得手なコースへの対応や集中力の持続など、粗削りな点が今後の課題となるだろう。
次に注目を集めたのが、2000年度生まれでミレニアム世代の一角となる古江彩佳。昨年、アマチュアで富士通レディースを制してプロ転向を果たすと、今年のデサントレディース東海クラシックでプロ初優勝。さらに伊藤園レディスゴルフトーナメント、大王製紙エリエールレディスオープンで2週連続優勝を果たし、年間3勝は今年最多。一躍ツアーを引っ張る存在にまで成長した。

古江彩佳は11月22日の王子製紙エリエールレディスオープンで2週連続Vを果たした (C)Getty Images
古江の武器は正確無比なゴルフ。今年の平均ストロークは70.11で1位、パーセーブ率の91.60%は断トツで、とにかくボギーを打たないゴルフがスコアメークに繋がっている。今大会でも4イーグルをマークし、1大会の記録としてはツアー最多タイで、日本人選手としては初の快挙。また、2位になったことで、生涯獲得賞金が1億円を突破(1億1123万2992円)し、20歳186日での1億円達成は、宮里藍、横峯さくらに次ぐ史上3位の年少記録となった。
2021年のシーズンは、黄金世代やミレニアム世代、そして新世紀世代の中から、また新たなニューヒロインが誕生するかもしれない、群雄割拠の国内女子ゴルフ。来年はどこまで試合が開催されるか、現時点では何とも言えないが、心を揺さぶられるような、ワクワクする戦いを期待したいところだ。
文・SPREAD編集部