ダルビッシュ有はサイ・ヤング賞獲得なるのか | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

ダルビッシュ有はサイ・ヤング賞獲得なるのか

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ダルビッシュ有はサイ・ヤング賞獲得なるのか
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ふだんなら「球春」という言葉が似合う春の真っ只中、プロ野球どころか各種スポーツにおいてシーズン再開のメドが立たない今、MLBもその例に漏れない。


それでも、MLBは今シーズンの「サイ・ヤング賞予想」をリリースするなど前向きで、ぜひこんなメンタリティを見習いたいもの。


日本選手はMLBで通用するのか」、今でこそ愚問になったが、私がニューヨークに移り住んだ1990年代前半、MLBでプレーしていた日本人はただのひとりもいなかった。


1995年、野茂英雄ロサンゼルス・ドジャースからデビュー。新人王シーズン最多奪三振王を獲得すると、日本人投手が続々と誕生。2001年にはイチローが野手として初めてメジャー・デビューを飾ると、その活躍はもはや当たり前となり、引退後の彼は殿堂入りさえ確実視されている。


記録に残る活躍としても、野茂、佐々木主浩イチロー大谷翔平と4人が新人王に輝き、投手として野茂が両リーグで、岩隈久志が2018年にノーヒットノーランを達成すれば、イチローはオールスターのMVPに、上原浩治アメリカン・リーグ優勝決定シリーズMVP松井秀喜ワールドシリーズMVPに輝き、大谷翔平は昨年サイクルヒットも達成……かつてのメジャーファンとしては、まさに夢物語のような活躍が現実のものとなっている。


そんな中、投手にとって最高の栄誉とされるサイ・ヤング賞候補の常連として名が挙がるのがダルビッシュ有だ。現在のところ同賞を獲得した日本人投手はいない。


≪文:たまさぶろ●スポーツ・プロデューサー、エッセイスト、BAR評論家≫


MLBが発表した有力候補 ダルビッシュ有は8位にランク



(c)Getty Images



MLB公式サイトが発表した同有力候補は20人。ダルビッシュは常連として、ベスト8位にランクされた。以下その十傑だ。



  • 1位 ジェイコブ・デグロム(ニューヨーク・メッツ)

  • 2位 ゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)

  • 3位 マックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)

  • 4位 ウォーカー・ビューラー(ロサンゼルス・ドジャース)

  • 5位 チャーリー・モートン(タンパベイ・レイズ)

  • 6位 ジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)

  • 7位 ジャック・フラハティ(セントルイス・カージナルス)

  • 8位 ダルビッシュ有(シカゴ・カブス)

  • 9位 ノア・シンダーガード(ニューヨーク・メッツ)

  • 10位 シェーン・ビーバー(クリーブランド・インディアンス)


ダルビッシュは実際、2013年終了時に同賞の候補として、惜しくも得票2位で、シャーザーにその座を譲った。


これは日本人として「サイ・ヤング賞にもっとも近かった」投手となっており、17年、19年もシーズン前の予想候補として名が挙げられている。


ちなみに野茂と松坂が4位まで残った過去もある。


圧倒的な投球、多くの人を魅了するキャラクター



(c)Getty Images



MLBはダルビッシュが昨季31試合での先発中、終盤の18先発で151三振を奪い、与四球がわずか12だった圧倒的な投球内容に言及。通算1000イニング以上の投手中、歴代2位の奪三振率(29.8%)を誇っていることを評価した。


また、SNSで「フレンドリーな選手」という点も紹介。Twitterなどでファンに対し、細やかなコミュニケーションを実施している点、アメリカでも話題のようだ。


各種スポーツの開催が延期される中、NBAの八村塁とのインスタライブを呼びかけ、視聴者から八村への質問を紹介するなど、現役選手の兄貴分としての顔ものぞかせる。


試合なき現在、アスリートの素顔を伝えるイベントはなかなか興味深く、ダルビッシュも八村もふだんとは異なる無造作なヘアスタイルが、視聴者から注目を浴びた。


このインスタライブはダルビッシュが「オレ、そろそろ子供の面倒もみなあかんし」と終了。こんな彼の飾らない性格が、アメリカの記者をも魅了しているようだ。


記者投票にて決するサイ・ヤング賞においてこうした心証は意外に大きい。2013年4月、9回2死、完全試合を目前で逃したダルビッシュの圧倒的な投球は、今でも記者の口々に登るなど、彼のゲームコントロールが大きく評価されている。


サイ・ヤング賞獲得なるか



(c)Getty Images



気になるのは昨年、31試合で33本のホームランを献上している点。これはナショナル・リーグの投手としては最多被本塁打となり、こうした一発病を克服する必要がある。


また、過去4シーズンで二桁勝利を挙げたのは一回。過去の受賞者を眺めるとシーズン20勝あたりが基準となっている点もあり、効率よく白星を挙げたいところだ。


もちろん、勝ち星だけが同賞の選定理由にはならない。今年も候補の筆頭に挙げられているメッツのデグロムは18年10勝、19年も11勝でありながら、それぞれ防御率1.70255奪三振など、その圧倒的な投球内容が評価され2年連続受賞している。前述のランキング通り、3年連続受賞を期待する声も大きい。


シーズン短縮が必至となった今年は、こうした内容に重点が置かれるに違いない。ダルビッシュももう34歳、そろそろこのあたりで投手としての大殊勲を得て欲しいと願うばかりだ。


開幕が遅れているこんなご時世、こうした過去の実績を眺めつつ、賞レースの予想を立てるのも、野球ファンのひとつの愉しみ方だろう。


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≪著者プロフィール≫


たまさぶろ●スポーツ・プロデューサー、エッセイスト、BAR評論家


週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」をプロデュース。日本で初めて既存メディアとデジタルメディアの融合を成功させる。


MLB日本語公式サイト・プロデューサー、 東京マラソン事務局広報ディレクター、プロ野球公式記録DBプロジェクト・マネジャーなどを歴任。エッセイスト、BAR評論家として著作『My Lost New York~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在(いま)』『麗しきバーテンダーたち』『【東京】ゆとりを愉しむ至福のBAR』などあり。


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