五輪史上最も多くの金メダルを獲得したマイケル・フェルプスさんは、新型コロナウイルスにより史上初のオリンピック延期が決まったことで、選手たちのメンタルヘルスが心配だとコメントした。
米国NBCスポーツのインタビューに答えたフェルプスさんは、この急な変化に選手が適応するためのカウンセリングを、米国オリンピック委員会や水泳連盟が用意するべきだと語った。
東京五輪延期は妥当でも選手のショックは大きい
「うまくいく方法が見つからなかった。北京の大気汚染、リオのジカウイルスなど過去にも問題を抱えていたことはあったが、今回はずっと大変な問題に見えた。管理や制御が可能なようには見えなかった」
東京五輪延期は「前例がない未知の領域」としたフェルプスさん。決断自体は正しいものとしながらも胸が張り裂けるようだと悩む。
「もし私の身に起こっていたら不安で倒れていただろう。言葉もない。これは悪夢か?」
現役中は“水の怪物”と呼ばれ競泳界に一時代を築き、五輪で通算23個の金メダルを獲得したフェルプスさん。
五輪を目指す選手の頭には4年間、常に開催日やレース日程があり人生をかけて準備してくると話す。
鬱病でどん底を経験したフェルプスからのアドバイス
フェルプスさんは輝かしい競技歴の一方、現役中から深刻なメンタルの問題に悩まされてきた。酷いときはベッドから起き上がるのも億劫なほど気分が落ちこんだ。特に人生の4年間を費やして準備する五輪後には、反動で大きく気分が落ちこんだという。
引退を宣言したロンドン五輪後には「もう水泳はしたくなかった。ただ死にたかった」と思い悩むほど苦しんだ。
それでもセラピーを通して自分と向き合い現役復帰。引退レースとなったリオ五輪でも5つの金メダルを獲得した。
現在も気分の落ちこみに悩まされる日はあるが、それでも「大丈夫じゃなくても大丈夫だ」と以前よりしなやかに受け止められている。
「これは消えるものではありません。だけど、この憂鬱と不安は私を束縛するものではなく、私を作っているものなんです」
治療を通してコミュニケーションの大切さを知ったフェルプスさんは、東京五輪延期でショックを受けている選手にも他の人とコミュニケーションを取るよう勧める。
「酷い鬱病を経験し、いまでもそれに対処している者として、私は選手ひとり一人がこの状況でメンタルヘルスのサポートを得られることを望む。いまは外出もままならないが、もしあなたがアスリートならオンラインでも、電話でも、誰か話し相手を見つけてください」