ボクシング・岡澤セオン、“高校生師匠”との出会いから台頭 東京五輪代表へ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

ボクシング・岡澤セオン、“高校生師匠”との出会いから台頭 東京五輪代表へ

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ボクシング・岡澤セオン、“高校生師匠”との出会いから台頭 東京五輪代表へ
  • ボクシング・岡澤セオン、“高校生師匠”との出会いから台頭 東京五輪代表へ

東京五輪のボクシング開催は、紆余曲折の末に漕ぎ着けた感がある。


世界のアマチュアボクシングを統括してきたAIBA(国際ボクシング協会)のずさんな財政管理やジャッジの不正が問題となり、一時は五輪正式種目から除外される可能性があった。


結局、なんとか開催が決定したのは、昨年の6月。このため、チケット販売も遅れ、各国の代表選手選考もようやく本格的になってきたところだ。選手が出そろうのは、大会1カ月前の6月になるという。


そんななか、トップで日本代表に内定したのが、岡澤セオン。メダル獲得に燃える、異色のボクサーの素顔に迫る。


《文:牧野森太郎●フリーライター》




活躍するアフリカ系アスリート


八村塁松島幸太朗大坂なおみサニブラウン・ハキームケンブリッジ飛鳥オコエ瑠偉


いずれも、今をときめく現役アスリートだが、さて、全員に共通することがある。それは?


小欄を愛読するスポーツファンには、問題が簡単過ぎただろう。答えは、アフリカ系と日本人のハーフ。それも、アフリカ系の父親日本人の母親を持つところまで共通している。今回の主役、岡澤セオン選手もこの系譜に入る一人だ。


興味深いのは父親の国籍。順に整理してみると、八村(ベナン)、松島(ジンバブエ)、大坂(アメリカ)、サニブラウン(ガーナ)、ケンブリッジ(ジャマイカ)、オコエ(ナイジェリア)と、さまざま。岡澤選手の父親はガーナ出身で、サニブラウン選手の父親と同郷だ。


アフリカ系と日本人のミックスが特別な遺伝子を生む? と期待したくなるが、考えてみれば、アメリカはもちろん、ヨーロッパでもアフリカ系の選手は多い


単に、日本社会のグローバル化が進んだことの現れだろう。今後もどんどん増えていくと思われる。


異色の経歴を持つ男


岡澤選手は鹿児島県体育協会に所属する24歳。高校生までは、母親の故郷である山形県で過ごした。


ボクシングを始めたのは、日本大学山形高校1年生のとき。学ラン、金時計、ネックレスを身につけた怖い先輩に「ボクシング部に入れ」と凄まれて断れなかった、とインタビューに答えている。そんな風体の学生がボクシング部にいることも驚きだ。


中央大学4年生で、国体のライトウエルター級準優勝を果たすが、特別な注目を集めることはなかった。


卒業後は都内の会社に就職することが決まっていたが、ボクシングに未練があると、鹿児島に飛んだ。


それにしても、なぜ、鹿児島?


「鹿児島出身の後輩から、県体育協会が2020年の国体開催に向けて指導員を募集していると聞いて、親にも話さず内定も蹴って、カバンひとつで来ました」というのが真相らしい。


ボクシングの師匠は高校生?


岡澤選手のボクシングを変えたのは、入門した鹿児島県鹿屋市のボクシングジム「Wild.b sports」での出会いだった。


というと、老獪なトレーナーの登場を想像するかもしれないが、まったく違う。その相手とは高校生の荒竹一真選手。1年生で無敗のまま高校3冠、現5冠を達成した「九州の怪物」だ。


荒竹選手のストイックな練習を見てショックを受けた岡澤選手は、練習の質と量をグレードアップ、みるみる成長した。


そして、2019年のアジア選手権で、日本人として36年ぶりとなるウエルター級銀メダルを獲得し、一躍、五輪候補に名乗りをあげたのだった。


それにしても、(当然だが)童顔のピン級(軽量級)荒竹選手と岡澤選手が並ぶと、どちらが“師匠”か分からない面白い構図となる。

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