吉田安里沙がアイスクロスで挑む“世界” 競技に魅せられ歩んできた道とこれから | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

吉田安里沙がアイスクロスで挑む“世界” 競技に魅せられ歩んできた道とこれから

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吉田安里沙がアイスクロスで挑む“世界” 競技に魅せられ歩んできた道とこれから
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クレイジーでワイルドな氷上レースに魅了された高校生アスリート、吉田安里沙(ありさ)選手が2月15日に横浜市の臨港パーク特設会場で開催されるレッドブル・アイスクロスで世界に挑む。


アイスホッケー、ダウンヒルスキー、スキークロスやスノーボードクロスの要素を取り入れた過激なアイスバトル。吉田選手の競技歴は1年4ヵ月だが、この斬新な競技においてはそれなりの経験値がある。


ゴールするまでなにが起こるかわからないハラハラ感がアイスクロスの魅力。その瞬間を選手と観客のみなさんが共有できるのもとても魅力的な点だと思います」と吉田選手は語る。


インラインスケートのスター、安床兄弟の誘いでアイスクロスに参入


吉田選手は小学3年生からインラインスケートを始めた。この世界のスーパースターである安床ブラザーズ(兄・エイト選手、弟・武士選手)に師事し、あっという間にインラインスケート界の実力者になった。現在は高校生でありながらインラインスケートのインストラクターもしているほどだ。


そんな吉田選手がアイスクロスに参入したきっかけも、師匠である安床ブラザーズからの誘いだった。


「誘われた当時は面白そうだな、くらいの軽い気持ちでしたが、インラインスケートと似ている部分も多く、自分が持っているスキルを発揮することができる最大のチャンスを逃すわけにはいかないと思いました」



2020シーズンに挑む吉田安里沙選手 撮影=山口和幸



18年は初出場でファイナル進出


2018年12月にアジアでアイスクロス初開催となる横浜大会が実現し、それに合わせて参入を目指す選手らがトレーニングを積み重ねた。吉田選手は持ち前のチャレンジ精神を発揮し、日本代表選考でアイスホッケーの佐藤つば冴選手に次ぐ女子2位で初出場を決めた


そして横浜に詰めかけた大観衆が見守る本大会では、この競技の第一人者である山本純子選手とともに予選を突破。ファイナル1回戦で敗退したものの、高い順応性を見せつけた。



第一人者の山本純子選手(左)と吉田安里沙選手 撮影=山口和幸



しかしそれからが正念場だった。引き続き海外大会にチャレンジしたが、百戦錬磨の海外選手にたたきのめされた。遠征で参戦した3つの大会すべてで予選落ち。


「これが今の自分の実力なんだなってのがすごく分かりました」


海外大会の1つ、米国ボストンでは、「1年後は受験生。できるだけ早く進学を決めて、日本で開催される次の大会にはしっかりと準備をして臨みたいです」と語っていた。



2019年2月のボストン大会では予選タイムで本戦に出場できず茫然自失 撮影=山口和幸



前回大会よりも「実力は確実にアップ」


そのボストンからちょうど1年後、再び出現した横浜のアイストラックには、実力を飛躍的にアップさせた吉田選手の姿があった。


一般的には受験シーズンまっただ中だが、AO入試で京都産業大への合格を決めたという。横浜大会に挑む準備期間を作るための作戦でもある。


「初出場の前回横浜大会では、夢心地のような状態で決勝進出を決めてしまいました。あのときよりも実力は確実にアップしています


だからこの横浜大会では頑張りたい。この競技の魅力にハマってしまった女性アスリートが世界の頂点に向けて、本気で進み始めた。



2020シーズンに挑む吉田安里沙選手 撮影=山口和幸



26年の冬季五輪で新規種目としての採用を目指す


近年の五輪ではアクション系のスポーツが新規採用となって話題だが、将来の冬季五輪ではこのアイスクロスが最も有力であるとされている。


そのため前シーズンまでは「クラッシュドアイス」という名称を使っていたが、一般的に想像しやすく、多くの人にイメージしてもらえる「アイスクロス」と名前を変えた


オリンピックに関わる関係者の印象も悪くはない。今後は世界の各地域でこのスポーツが行われることが新規採用に向けた条件の1つとなる。そういった意味でも、アジア圏では日本の持つ存在感が重要となってくるはずだ。


「冬季五輪の新規種目に採用されるには25カ国のサポートが求められ、それには相当の政治的なパワーが必要。現在アイスクロスに参加している選手の国籍はまだそれに達していない」



レッドブル・アイスクロス横浜大会 ©Mihai Stetcu/Red Bull Content Pool



元選手で、現在はアイスクロスのコースディレクター、TVコメンテーターとして横浜大会に帯同するリード・ホワイティングさんがこう証言している。


2026年の冬季五輪はイタリアのミラノとコルティナダンペッツォで開催されることが決まっている。開催地は新規競技として1つを指定する権利を有しているが、ホワイティングさんはその部分にも望みをかける。


開催地権限の新規1種目ではアイスクロスを選びたい」と推すイタリア関係者が少なからずいるという。「まだウワサの段階だが……」ともつけ加えたが、今後は国際団体とも協力してその実現に向けて活動していきたいという。


横浜大会には世界の強豪が集う



レッドブル・アイスクロス横浜大会 ©Mihai Stetcu/Red Bull Content Pool



レッドブル・アイスクロス横浜大会。シリーズ戦の中ではロシアで開催される大会とともに最高カテゴリーで行われる。当然出場選手は強豪が勢ぞろいした。


アイスホッケーやモトクロスのプロテクターを付けた恐れ知らずの選手たちが、コース途中に設置されたヘアピンカーブやバンクコーナー、連続バンプや段差などの障害物をかわしながら高低差のある氷の特設コースを滑り降りる。横浜大会の全長は350m。


コースは自然の地形やスキー場に設営されることもあるが、最高カテゴリーの大会は街中に特設会場を設置して、多くの観衆がアクセスしやすいようにしている。横浜大会が開催される臨港パークはみなとみらい駅からすぐ、JR桜木町駅からも歩いて行ける。


カテゴリーは男子、女子、ジュニアの3つ。レースは1ヒート4選手で行い、各ヒートの上位2選手が次のレースに勝ち進む。つまり準々決勝は4ヒートの合計16選手、準決勝は2ヒートの合計8選手。決勝レースはそれまで2着以内で勝ち上がった4選手で競われる。


≪山口和幸≫


《SPREAD》
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