なでしこGK・山下杏也加が考えるサッカーの面白さと、女子サッカー界の今後 「まずは自分たちがお手本を」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

なでしこGK・山下杏也加が考えるサッカーの面白さと、女子サッカー界の今後 「まずは自分たちがお手本を」

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なでしこGK・山下杏也加が考えるサッカーの面白さと、女子サッカー界の今後 「まずは自分たちがお手本を」
  • なでしこGK・山下杏也加が考えるサッカーの面白さと、女子サッカー界の今後 「まずは自分たちがお手本を」

2018年ロシアW杯から1年。2019年6月7日より、「FIFA 女子ワールドカップ フランス」が開催している。


なでしこジャパンがW杯優勝という快挙を達成したのは、2大会前となるドイツ大会。日テレ・ベレーザに所属し、日本代表としても名を連ねる山下杏也加選手は当時まだ15歳だった。


あれから8年が経ったいま、5月10日に行われたフランスW杯メンバー発表でも23名のリストに名前を連ね、山下選手はGK(ゴールキーパー)として国を背負う。


高校1年生のときにFW(フォワード)からGKに転向後、わずか1年半で世代別代表に選出され、同年、日テレ・ベレーザの特別指定選手に登録されるという異例の経歴を持つ山下選手。


この度、編集部はそんな山下選手に独占インタビューを行った。前編となる今回は、山下選手が抱くサッカーへの思いや、山下選手が考える女子サッカーの今後について掘り下げていく。
※取材日は2019年4月下旬


いま感じるサッカーの“面白さ”



―:山下選手の考えるサッカーの面白さはどういったところでしょうか?


山下杏也加選手(以下、敬称略):ゴールを決めるのもそうなんですけど、GKとしては相手のボールが来る前の駆け引きや、いかに失点の確率を下げられるかが面白さだと思います。ボールが取れる範囲にポジションを修正したり、どうディフェンスを動かすかっていう……。改めて言葉にしようとすると、難しいですね。


―:子供の頃に感じていた楽しさと今とで違いはありますか?


山下:小さい頃は、誰かとボールを触るだけで楽しかったです。今は、”成長を自分で実感できるところ”ですかね。先の先までプレーの予測をしてそれが予想通りになったときや、前は届かなかったボールに手が届いたとき、難しいシュートをどうしたら止められるか考えているときが楽しいですね。


―:FWからGKに転向するときはどのような心境だったのでしょうか?


山下:実は長距離も短距離も走ること自体が苦手たったので……。GKってあまり走らなくても良いじゃないですか、そこはプラスだなと思いました(笑)(転向することを告げられたのが)フィールドプレイヤーのユニフォームを一式揃えた後だったので「まじか……」ってなりましたけど(笑)


冒頭でも少し触れたが、山下選手はサッカーを始めた小学校2年生から高校1年生まではFWとしてプレー。高校1年生の秋にGKへと転向した。


点を取るFWから、点を取られないようにするGKへ。ポジションが真逆になることについては、「多いみたいです。海堀さんもFWからGKになった人」と元なでしこジャパンGKの海堀あゆみさんのことを挙げた。


まずは自分たちがお手本を



―:山下選手が考える、男子サッカーと女子サッカーの違いはどんなものですか?


山下:見ている側としては、身体能力と体格、キック力とか。女子にはできないけど、男子にできるプレーは多いと思います。あと、環境にも違いはありますね。シーズンオフに旅行でオーストラリアに行ったとき、現地でプレーしている友達に会いました。日本と違った環境でプレーしている人と会うことで、そこでまた違った考え方も生まれました。


―:それはどういった考え方でしょうか?


山下:日本とオーストラリアで環境も違うし、オーストラリアでは、代表選手ではなくても、現在の日本の代表選手と同じレベルの収入があったり、世界では女子サッカーの捉え方が違うなと思いました。国内でやり続けるつもりでいたんですけど、海外にも挑戦してみたいという考えも生まれました。あと、日本での女子サッカーの知名度はまだ低いので、「自分が現役の時に出来ることは何か」を考えたりしました。


―:具体的に、女子サッカー界が今後こうなっていってほしい、という思いはありますか?


山下:最近、ヨーロッパの女子サッカーの試合でスタジアムに6万人が集まったんです。日本も集客の部分で何かしていったほうがいいのかなと思います。他の国がやっている良いことをもっと真似して、もっとチャレンジしていくことが大切だと感じました。そうしたら、日本の女子サッカーももっと変わってくると思っています。まずは自分たちがお手本を見せなくては、女子サッカーの人口も増えないと思います。


―:女性アスリートには「競技と結婚」について悩まれている方も多いと聞きます。山下選手はどのように捉えていますか?


山下:男子選手と違って、現役としてプレーしながら子供を授かるというのは現状では難しいので、うまくはいかない面が多いのかなと思います。サッカーをしている分、プレーに集中しなくてはならない面もありますし、その他に、人間関係や食事、仕事などに時間を割かないといけない中で、なかなか結婚や恋愛に行きつかないかなと。


―:そんな女性アスリートが活躍するために様々なハードルがある中で、NIKEは多くの女性アスリートを応援していますが、山下選手自身NIKEからサポートを受けてどのように感じられていますか?


山下:男性アスリートだけでなく、女性アスリートにも注目をしてサポートをして頂いているので、選手としては非常にありがたいなと感じています。また、自分自身が活躍をして注目をされて恩返しをしたいという思いもあります。


下の世代から追い上げられることは“楽しみ”



―:山下選手が考える自身の強みと、今後磨いていきたいスキルは?


山下:自分の強みは身体能力です。(なでしこジャパンの)池田咲紀子選手はビルドアップ、平尾知佳選手は思い切りの良さですね。相手から嫌がられるGKになるために、今のうちにビルドアップや守備範囲を広げて、20代後半になったときに武器となる”技術”を磨いていきたいです。


―:山下選手らの活躍を見て、下の世代もどんどん成長してくると思います。下の世代から突き上げられることにはある種”怖さ”のようなものもあるのかと思いますが、山下選手はどのように向き合っていますか?


山下:私は下の世代から突き上げてくる選手に焦りという感情はないです。逆に、その選手とプレーしてみたいと思います。下の世代が追い上げてくるときに、自分もプラスで何かを得なければ簡単に追い抜かれてしまうし、焦りがある人もいると思うんですけど、それは同時に”楽しみ”でもあるかなと思います。


いまある自分の武器を磨きつつ、新たなスキルの習得も考え、成長を目指している山下選手。ここまでのインタビュー前編では「サッカー」という競技についての向き合い方を中心にお届けしたが、後編では山下選手のピッチ外での「素顔」に迫っていく。


インタビュー後編はこちら

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